中小企業の採用はなぜこんなに難しい? 採用担当者が知っておくべき現状と対策

「中小企業の採用は本当に難しい…」
採用担当者の皆様は、日々そう感じているのではないでしょうか? 「大手企業に比べて認知度が低い」、「採用手法が多様化する中で何から手を付ければいいか分からない」、「人員が限られており、専任担当者をおいたり採用活動に時間を割くことができない」など、中小企業の採用には多くの課題があります。

本記事では、採用や転職市場の変化や、求職者の傾向などを踏まえ、中小企業の採用が難しい理由を整理した上で、採用を成功させるためのポイントをご紹介します。

中小企業の採用や転職市場の動向

慢性的な人手不足を背景に、中小企業の採用がますます困難になっていることは、採用関係者のみならず人材を必要としている部門に関わる方であれば、常日頃感じていることだと思います。では、実際に採用や転職市場ではどのような変化が起きているのでしょうか。

帝国データバンクでは、2025年2月14日~2月28日からインターネットを使い、全国2万6,815社を対象に「2025年度の雇用動向に関する企業の意識調査」を実施いています。

そのレポートでは、以下のような考察でまとめられています。

  • 2025年2月時点で正社員が不足している企業の割合は、30カ月連続で5割台と高水準で推移している。
  • そうした状況にもかかわらず、本調査では2025年度の正社員・非正社員の採用見込みが低下する結果となった。
  • 特に中小企業においては、深刻な人手不足の状況下で採用意向はあるものの、経営状態が厳しく、賃上げの流れで上昇していく人件費の原資を確保できず採用を控えざるを得ない企業は少なくない。
  • また、採用活動を行ったものの、賃上げができないまたは少額にとどまるため応募がないなど、条件面で大企業など他社に劣るケースも多くみられる。”
引用元:2025年度の雇用動向に関する企業の意識調査
※調査対象:全国2万6,815社、有効回答企業数は1万835社(回答率40.4%)

業種などによる傾向の違いはあると思いますが、総じて人手不足やコスト増といった課題に加え求人倍率も高水準を維持している状況にあり、中小企業に限らず、大手・中堅企業を含めて、採用の課題は年を追うごとに高まっています。採用自体を断念せざるを得ない中小企業も増加傾向にあると言えます。

応募者が企業選びで重視するポイント

一方で、求職者の立場・目線でみた場合、どういった点を重視して企業の選定を行なっているのでしょうか。厚生労働省やリクルート社、商工中金などが公開している代表的な統計情報などから、以下の3点が企業選定時に重要視されるポイントとされると考えられます。

給与水準と待遇の妥当性

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模別の平均賃金(男女計)は以下の通りです。

  • 大企業(従業員1,000人以上):364.5千円
  • 中企業(100~999人):323.1千円
  • 小企業(10~99人):299.3千円
企業規模による賃金格差が明確に表れており、求職者は給与水準を重要視しています。

労働時間と休日数

リクルートが実施した「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査「人手不足・採用編」」によれば、企業と応募者の間で折り合わなかった内容の上位項目は「賃金水準」「休日の日数」「労働時間」などが挙げられています。

待遇面での不一致が、中途採用の成否にも影響しているとされています。

職場の雰囲気や人間関係

商工中金が実施した「中小企業の人材確保に関する調査」では、採用活動において、インターンシップの受け入れや職場見学、HP上での会社紹介・社員紹介を行う等、求職者が働く場所をイメージできるような方法が効果的であると報告されています。

職場の雰囲気や人間関係を伝えることが、応募者の関心を引く要因となっています。

つまり、現在の求職者は、

  • 職場の雰囲気・人間関係
  • 働き方の柔軟性(ワークライフバランス)
  • 給与・待遇の妥当性
  • 企業の安定性・将来性
  • 自己成長・スキルアップの機会
  • 企業の社会的意義・理念への共感
などを総合的に判断しながら、企業を選定していることが伺えます。

中小企業の採用が難しい3つの理由

採用や転職市場動向や求職者の動向が整理できたところで、中小企業が直面している課題はどういった点があるのでしょうか。大きく3つを挙げます。

認知度の低さ

大手企業と比べて知名度が低いため、求職者に認知されにくいのが現状です。「良い人材が欲しいのに、そもそも応募が来ない…」という悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。

採用手法の多様化

従来の求人広告だけでなく、人材紹介、リファラル採用、SNS採用など、採用手法が多様化しています。多くの選択肢がある一方で、「どの手法が自社に最適なのか分からない」という声も聞かれます。

人材獲得競争の激化

有効求人倍率が高止まりしている現在、人材獲得競争は激化しています。特に、中小企業は大企業と比べて待遇面で劣る場合が多く、優秀な人材の獲得が困難になっています。

いずれも一足飛びに解決できる課題ではありませんが、「企業の魅力の可視化(採用ブランディング)」や「柔軟な働き方の導入」、「社員の声の発信」など、ちょっとした工夫次第で、求職者から魅力的な職場としてアピールすることも可能です。

中小企業が採用を成功させるための対策

では、中小企業はどのようにすれば採用を成功させることができるのでしょうか?

自社の魅力を明確にする

給与や福利厚生だけでなく、仕事のやりがい、会社の雰囲気、成長機会など、自社ならではの魅力を洗い出し、積極的にアピールしましょう。

ターゲット層に合わせた採用手法を選ぶ

ターゲット層が利用している求人媒体やSNSを活用するなど、効率的な採用活動を行いましょう。

採用広報を強化する

自社のウェブサイトやSNSで、積極的に情報発信を行い、認知度を高めましょう。社員インタビューや職場紹介動画なども効果的です。

既存社員からの紹介(リファラル採用)を積極的に活用する

既存社員からの紹介は、企業文化にマッチした人材を獲得しやすいというメリットがあります。

採用ツールの導入も検討する

採用管理システム(ATS)などを導入することで、採用業務の効率化を図り、応募者とのコミュニケーションを円滑にしましょう。

大切なことは、求職者が求めている情報の提供や不安を払拭するための取り組みを用意することで、双方の理解も深まり、採用後のミスマッチ防止にも繋がります。

まとめ

中小企業の採用は決して簡単ではありませんが、工夫次第で必ず成功させることができます。自社の魅力を最大限にアピールし、最適な採用手法を選び、積極的に情報発信を行いましょう。

また、企業認知を少しでも高める手段として、SNSやインターネット広告の活用も効果的です。

採用ページをコーポレートサイト内の区画に用意し、求職者が求める情報を一箇所に集約した上で、集客施策としてインターネット広告を活用することで、比較的効率的に対象者をサイトに呼び込むことができます。

対象となる求職者の目に届くよう、様々な施策を試し、最もフィットする方法も見つけるのも、限られた予算や時間を効果的に採用活動に充てるポイントになると思います。

本記事が、中小企業の採用担当者の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。