検索キーワードから紐解く業界分析:歯科クリニック編

検索キーワードから紐解く業界分析シリーズ:歯科クリニック編

検索キーワードから紐解く業界分析シリーズ:歯科クリニック編

デジタルマーケティングにおけるテクノロジーの発展に伴い、サイトやユーザー分析の手法は日進月歩で進化しています。しかしながら、カスタマージャーニーやUI/UXがフォーカスされる一方で、業界や市場全体の動向を追跡するような「マクロ視点」のスキームは取りざたされることが少なくなっているのではないでしょうか。

「木を見て森を見ず」

と言われるような状況に陥らないよう、本シリーズでは様々なデータから「業界」や「市場」といった大枠のトレンドを分析し、戦略に落とし込んでいくための手法を紹介、解説していきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回取り上げるのは歯科クリニックです。

■SimilarWeb(シミラーウェブ)とは
シミラーウェブは、世界中から収集したウェブサイト上での匿名の行動データやパートナー企業からの分析データ、独自のクローラーによって収集した広告データ/Meta情報などと併せて機械学習を介することで、精度の高いウェブのトラフィックデータを提供しています。通常の解析ツールでは取得できない競合サイトのアクセスデータを統計的に分析することができます。

「歯科サービス」業界動向

歯科クリニックといえば消費者にとって一番身近に感じられる医療機関ですが、いったいどのくらいの数の事業者があるのでしょうか。厚生労働省の医療施設調査によると、2020年10月1日時点で、その数はコンビニの店舗数を上回る67,872に上ります。その中で最も大きな割合を占めるのが個人=一般的な開業医で、全体の77%を占めています。また医療法人化している事業者が15,161あります。数字の増減を見ると、開業医は2020年に前年から数を大きく減らし(1030の減少)、医療法人は399増えています。顧客獲得競争が激しい中で、開業医が淘汰され、規模の大きな医療法人が生き残っていくという構図が見えます。

 

2020年

2019年

合計

67,874

68,500

4

4

公的医療機関

262

261

社会保険関係団体

7

7

医療法人

15,161

14,762

個人

52,103

53,133

その他

337

333

※厚生労働省の医療施設調査より。数字は各年10月1日時点の数字

この業界をデジタルの側面から分析してみたいと思います。本題の検索キーワードに入る前に、全体的なトラフィックトレンドを見ておきます。シミラーウェブでは業界カテゴリごとにトラフィックトレンドを見ることのできる、「歯医者と歯科サービス」というカテゴリがあらかじめ用意されています。歯科クリニックのほか、歯科医院検索/予約サービスや歯科関連コンテンツプロバイダー、ソリューションベンダーなど幅広い領域をカバーしていますので、歯科業界全体のデジタルトレンドを知る上では非常に有効です。

下の画面は、「歯医者と歯科サービス」カテゴリの昨対比(2020年8月〜2021年7月 vs 2021年8月〜2022年7月)トラフィックの伸び率、デバイス分布、そしてトラフィックの月別の推移比較を示したものです。 昨年からの成長率は15.29%、月別に見てもすべての月で昨年の訪問数を上回っているので、デジタル上の動きとしては非常に堅調であることがわかります。また デバイス分布からは、この業界のデジタル対応がモバイル端末へと完全にシフトしていることがわかります。

「歯医者と歯科サービス」カテゴリの昨対比

※シミラーウェブ「ウェブ業界分析」 - 「歯医者と歯科サービス」カテゴリの昨対比成長率(2020年8月〜2021年7月 vs 2021年8月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

次にこのカテゴリに登録されている1507サイトのトラフィックの分布状況を見てみます。以下の画面がそれですが、トラフィックが上位の特定サイトに集中しておらず、サイトのトラフィック規模が小さい多数のサイトで構成されていることがわかります。

その中で最も多くのトラフィックを獲得しているのは、消費者向けの予約・検索・口コミサイトで、2位以下のトラフィックを3倍以上引き離しています。また5位には、複数の歯科クリニックを擁するグループ企業のサイトがランクインしています。

カテゴリに登録されている1507サイトのトラフィックの分布状況「歯医者と歯科サービス」カテゴリの市場分布※シミラーウェブ「ウェブ業界分析」 - 「歯医者と歯科サービス」カテゴリの市場分布(2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

 

「歯科クリニック」業界の動向

業界全体の動向

歯科クリニックの業界動向を詳しく見るために、「歯医者と歯科サービス」カテゴリの中から上位にランキングされる歯科クリニックの上位60サイトをピックアップして、カスタムカテゴリを作成し、その動向を見てみます。

下の画面が、過去3年間のカスタムカテゴリ全体のトラフィック推移を示したものです。全体的なトレンドとしては、上のセクションで紹介した「歯医者と歯科サービス」業界よりもトラフィックの伸び率は高く(昨対比で40%)、特に2019年から2021年にかけての伸びが顕著です。7月単月の合計セッション数で見ても、902,203(2019年)⇒1.771M(2020年)⇒4.548M(2021年)⇒4.684M(2022年)と推移し、2021年は前年度の2.5倍と急拡大しています

主要歯科クリニック50サイトのカスタムカテゴリのトラフィック推移 ※シミラーウェブ「業界のトレンド」 - 主要歯科クリニック50サイトのカスタムカテゴリのトラフィック推移(2019年7月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

このカスタムカテゴリーにおける、上位ウェブサイトとデバイス分布は以下の通りです。まずトラフィックでは、湘南美容クリニックの歯科/矯正歯科グループサイトsbc-dental.com)が他を大きく引き離してトップを走り、日本を含めて世界10カ国で歯科医療を展開する徳真会グループtokushinkai.or.jp)と東京都江戸川区のふかさわ歯科クリニック篠崎2525.biz)がそれを追う形になっています。上位2つが大きな医療グループであるのに対して、ふかさわ歯科クリニック篠崎は地域に密着したクリニックですが、この3年で爆発的にトラフィックを増やしていますランキングの4番目は、やはり複数の歯科クリニックを展開するYou矯正歯科グループbubunkyousei.com)、そして5番目は吹田市のまつもと歯科matsumoto.or.jp)という結果です。

主要リフォーム事業者28サイトのカスタムカテゴリの上位ウェブサイトとデバイス分布(2019年7月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)

※シミラーウェブ「業界のトレンド」 - 主要リフォーム事業者28サイトのカスタムカテゴリの上位ウェブサイトとデバイス分布(2019年7月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

各歯科クリニックのトラフィックトレンド

3年間で業界全体のトラフィックは非常に大きく伸びていること、また大きな医療グループだけでなく、地域に密着した歯科クリニックにもトラフィック拡大の可能性があることがわかりましたが、もう少し事業者ごとの動向を深堀りしてみましょう。そこで直近の2022年7月時点でのトップ20サイトの各サイトの過去3年間(7月単月)の訪問数と昨対同月比をまとめました。カスタムカテゴリのトラフィックと比較しながら、特徴的なポイントを見ていきます。

3年間安定して高いトラフィックを獲得しているのが湘南美容クリニックの歯科/矯正歯科グループサイト(sbc-dental.com)です。2020年は4割ほどのマイナス成長でしたが、その後大きくトラフィックを回復しています。美容クリニックとしての知名度が高く、グループサイトからの流入が一定程度あることも大きなトラフィックの要因と考えられます。

成長率という点では、過去3年間カスタムカテゴリの成長率を上回ったのが、ふかさわ歯科クリニック篠崎(2525.biz)と大垣市の歯医者「カルナデンタルクリニック」(carna-dc.com)の2サイトです。前者はこの3年間で5,000以下から308,477まで拡大、またカルナデンタルも5000以下から129,296に訪問数を増やしています。

そのほか特筆すべき点としては、上位20サイトのうち10サイトは、2019年の時点ではトラフィックがない(サイトが存在しない)もしくは5000以下のトラフィックしかないことです。新規参入の10サイトが3年後の2022年のトラフィックランキングで20位に入ってきているということは、この業界が非常に競争的な環境にあることを示しています。そういう環境ですから、昨対同月比でドラスティック(半分以下)にトラフィックを落とすサイトも当然あります

 

2019年7月

2020年7月

2021年7月

2022年7月

訪問数

訪問数

昨対比

訪問数

昨対比

訪問数

昨対比

カスタムカテゴリ全体

902,203

1.771M

190%

4.548M

257%

4.684M

103%

sbc-dental.com

170,848

103,959

61%

341,820

329%

457,636

134%

tokushinkai.or.jp

70,470

80,296

114%

221,650

276%

394,804

178%

2525.biz

< 5,000

61,184

1224%

154,832

252%

308,477

199%

bubunkyousei.com

< 5,000

33,737

674%

30,135

89%

217,066

720%

matsumoto.or.jp

29,435

28,953

98%

368,992

1274%

189,042

51%

biyou-dental.com

121,649

128,331

105%

288,861

225%

184,140

64%

apple-dental.jp

14,090

24,167

172%

102,391

424%

152,159

149%

honda-naika.net

-

< 5,000

-

514,821

103%

149,141

29%

carna-dc.com

< 5,000

12,504

250%

98,720

790%

129,296

131%

ginza-somfs.com

10,747

8,458

79%

113,775

1345%

109,389

96%

period.tokyo

17,442

177,815

1019%

227,569

128%

108,981

48%

happiness-sika-clinic.com

-

-

-

-

-

103,778

-

shibuya-shinbi.jp

< 5,000

59,101

1182%

138,046

234%

102,263

74%

mukae-dc.jp

< 5,000

52,851

1057%

94,979

180%

82,306

87%

noble-dent.jp

< 5,000

94,727

1894%

45,260

48%

81,248

180%

dental-hirai.jp

< 5,000

32,890

658%

64,132

195%

80,484

125%

admd.jp

-

-

-

< 5,000

-

71,478

1430%

luxia-ginza.com

40,866

130,473

319%

92,109

71%

70,273

76%

sakoda-dc.com

9,976

55,616

557%

75,481

136%

69,861

92%

musee-white.com

102,406

79,082

77%

194,014

245%

68,875

36%

マーケティングチャネルの動向

業界全体のマーケティングチャネル別トラフィックシェア

業界についての理解を深めるために、マーケティングチャネル別のトラフィックから、この業界における集客構造を見ておきましょう。下のチャートがカスタムカテゴリの直近1年間(2021年8月-2022年7月)のチャネル別トラフィックシェアです。対象デバイスはデスクトップのみとなります。

最もトラフィックシェアが大きいチャネルはオーガニック検索の72.93%で、検索エンジンからの流入依存度がきわめて高いのが特徴です。それに次ぐのがダイレクト(ブックマークやURL直接入力など)ですが、その依存度は20.84%と大きく下がります。ダイレクトトラフィックは実際のサービス利用やサービスに関心の高いリピート訪問者からのアクセスですが、歯科クリニックの場合、会員制で頻繁なリピート訪問が発生するビジネスとは異なりますから、20%という数字は標準的な数値といっていいと思います。

3番目のトラフィックシェアとなったのがリファラルですが、そのシェアはわずか5.2%です。この5%には同じグループ企業からの流入も含まれることから、リファラルパートナーからの集客への実際の依存度はもっと低いと考えられます。この業界では、集客施策としてのリファラル活用はほとんどなされていないというのが実態のようです。また有料広告への投資も非常にわずかです。

カスタムカテゴリのマーケティングチャネル別トラフィックシェア※シミラーウェブ「業界のマーケティングチャネル」 - カスタムカテゴリのマーケティングチャネル別トラフィックシェア(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

トラフィック上位サイトのチャネル別トラフィック

次に、トラフィック上位5サイトのマーケティングチャネルを比較してみましょう。期間は1年間(2021年8月〜2022年7月)、デスクトップとモバイルトラフィックの合算です。 業界平均からだけでは見えてこない、上位各社の集客戦略に違いはあるのでしょうか。

最初のチャートはチャネル別の総訪問数です。トラフィックシェア上位3チャネル(ダイレクト、リファラル、検索)の中でも最大のトラフィックチャネルである検索に関しては、湘南美容の歯科/矯正歯科グループサイト(sbc-dental.com)が断トツで多くのトラフィックを獲得しています。また同サイトはリファラルについても他サイトと比較して多くのトラフィックを獲得していますが、これは湘南美容クリニックのグループサイトからの流入が大きく貢献しているものと思われます。

ダイレクトでは徳真会グループ(tokushinkai.or.jp)と湘南美容クリニックの歯科/矯正歯科グループサイト(sbc-dental.com)が、比較的多くのトラフィックを獲得しています。この2つの事業者は複数のクリニックを展開しているため患者のリピート訪問もそれに比例して増えるでしょうし、会社としての規模が大きいことから就職希望者や事業に関わるステークホルダーからのアクセスも多いと思われます。他の3サイトとのダイレクトトラフィックのサイズの差は、そう考えるのが自然です

トラフィック上位5サイトのマーケティングチャネル別総訪問数
※シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - トラフィック上位5サイトのマーケティングチャネル別総訪問数(2021年8月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル) データソース

次にチャネル別のトラフィックシェアのチャートです。これを見ると各サイトの特性がより鮮明にわかります。徳真会グループ(tokushinkai.or.jp)は、ダイレクトトラフィックが47%と突出して多い点が、他の4サイトと大きく異なります。これはすでに述べた通り、企業グループとしての規模感を反映したものです。同グループの検索依存度は、それを下回る44%となっており、5社の中では最も特徴的なマーケティングチャネルの構造を示しています。

その他の4サイトは、検索のトラフィックシェアが67〜79%ときわめて高く、検索からの新規コンタクト獲得に最適化された構造となっています。徳真会グループの視点で見ると、同グループはSEOを強化することで、新規顧客からのトラフィックを拡大させられる余地が十分にあるということになります

トラフィック上位5サイトのマーケティングチャネル別トラフィックシェア シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - トラフィック上位5サイトのマーケティングチャネル別トラフィックシェア(2021年8月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

検索キーワードの動向

ここからは最も重要な新規顧客との接点であるオーガニック検索に焦点を当て、歯科クリニックサイトがどのようなキーワードからトラフィックを獲得しているのか、その特徴を明らかにします。対象となるデータは、直近1年(2021年8 月〜2022年7月)のカスタムカテゴリ全体の検索キーワードで、対象デバイスはデスクトップです

ブランドキーワードからのトラフィック

まず、オーガニック検索トラフィックの中でブランドキーワードがどの程度含まれているのか見ておきます。歯科クリニックの場合は、湘南美容クリニックのように知名度のある事業者は少ないため、ブランド指名の検索キーワードはきわめて少ないのが実態です。

歯科クリニック名を含む検索キーワードをピックアップしたのが、以下の画像です。「きぬた歯科」が最も多くのブランド指名トラフィックを獲得しています。同クリニックは看板広告が有名で、テレビなどでも度々取り上げられていることもあり、特に首都圏では高い知名度があります。湘南美容歯科も3位にランクインしています。しかし、全体としては非常にトラフィックは少なく、全体で数%程度のトラフィックシェアにとどまります。

この業界では、検索トラフィックの90%以上が非ブランドキーワードから発生しており、いかに消費者の検索ニーズにマッチしたコンテンツを提供できるかが集客力を左右します。繰り返しになりますが、どの事業者にも、SEO施策によってオーガニック検索からのトラフィックを拡大させる機会が存在するということです。

カスタムカテゴリの検索キーワードをブランド名で絞り込み
※シミラーウェブ「ウェブ業界分析 - 検索トレンド」 - カスタムカテゴリの検索キーワードをブランド名で絞り込み(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

上位の非ブランドキーワードの傾向や特徴

次に、非ブランドキーワードにはどのような傾向や特徴があるのかを、検索トラフィック上位60位までの非ブランドキーワードリストに基づいて確認してみます。下記がピックアップした60キーワードと獲得トラフィックのトラフィックシェアをまとめたものです。

これらワードを分類すると、

【分類1】口内トラブルや疾患に関するキーワード(合計トラフィックシェア:3.21%)
【分類2】審美・矯正に関するキーワード(同3.14%)
【分類3】う蝕治療と歯周病治療(インプラント含む)に関するキーワード(同2.49%)
【分類4】医療費控除を含むキーワード(同1.14%)
【分類5】歯科医を含むキーワード(同1.14%)

以上の5つに分けることができそうです。

カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランドで絞り込み
※シミラーウェブ「ウェブ業界分析 - 検索トレンド」 - カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランドで絞り込み(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

【分類1】口内トラブルや疾患に関するキーワード(合計トラフィックシェア:3.21%)

分類1は、う蝕(虫歯)の治療ではなく、口内トラブルや疾患に関連する検索キーワードで、上位60キーワードでの合計トラフィックシェアは3.21%です。「臭い玉」や「口内炎」「歯ぎしり」など具体的な症状や疾患名を指定するものと、「舌 白い」「口の中 血豆」など口内のトラブルを示唆するものに大きく分けられます。

以下の画像は「臭い玉」「口内炎」の2つの単語を含む検索キーワードのトップ10とトラフィックリーダーを示したものですが、検索トラフィックの多くは口腔外科に対応した歯科クリニックに着地しています

カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「臭い玉」「口内炎」で絞り込み

※シミラーウェブ「ウェブ業界分析 - 検索トレンド」 - カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「臭い玉」「口内炎」で絞り込み(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

【分類2】審美・矯正に関するキーワード(同3.14%)

分類2は、分類1と同じくう蝕(虫歯)の治療ではなく、ホワイトニングなどの審美や矯正に関連するキーワードで、合計トラフィックシェアは3.14%です。審美に属するキーワードが「ホワイトニング」「セラミック」、矯正に関連するものが「親知らず」「マウスピース」「インビザライン」などです。

う蝕や歯周病のない人でも審美や矯正の対象となることから、この分類のキーワードで検索するユーザーは、歯科クリニックにとっては重要なターゲットユーザーといえます

【分類3】う蝕治療と歯周病治療(インプラント含む)に関するキーワード(同2.49%)

分類3は、虫歯や歯周病などに関するキーワードで、トラフィックシェアは3番目の2.49%となっています。「インプラント」を含むキーワードが上位に並び、数の上でも多数を占めています。それ以外では「虫歯」「歯茎」「歯周病」を含むキーワードが主要なものです。この分類3のキーワードで検索するユーザーは、歯科クリニックにとってのコアなターゲットと思われますが、トラフィックシェアでは審美・矯正を下回っています。

5つのキーワードの検索ボリューム推移と関連指標
※シミラーウェブ「キーワード比較」 - 5つのキーワードの検索ボリューム推移と関連指標(2021年8月〜2022年7月、デスクトップ+モバイル)データソース

【分類4】う蝕治療と歯周病治療(インプラント含む)に関するキーワード(同2.49%医療費控除を含むキーワード(同1.14%)

分類4は医療費控除を含むキーワードで、合計トラフィックシェアは1.14%です。確定申告を含むキーワードのトップ10をピックアップしたのが下の画像ですが、検索回数のトレンドを見ていただければわかる通り、確定申告時の申請前の1月〜3月に検索回数が集中しています。そして、検索トラフィックの着地サイトの中には、歯科クリニックも含まれています。

カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「医療費控除」で絞り込み
※シミラーウェブ「ウェブ業界分析 - 検索トレンド」 - カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「医療費控除」で絞り込み(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

【分類5】歯医者を含むキーワード(同1.14%)

分類5は歯医者を含むキーワードで、「歯医者 セカンドオピニオン」などがランクインし、合計トラフィックシェアは1.14%です。「歯医者」を含むキーワードを61位以下も含めてピックアップしてみると、3つの検索意図に分類することができます。

  1. 歯科医をしっかり見きわめて選びたい
  2. 特定の診療メニューに対応した歯科医を見つけたい
  3. 特定の地域で開業している歯科医を探したい

この中で、特に1)は多くの消費者が強く思っていることではないでしょうか。歯科クリニックを正しく評価し、料金体系についても納得した上で歯科クリニックを選びたいという動機から、関連情報を探している状況がキーワードから想像できます。

カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「歯医者」で絞り込み
※シミラーウェブ「ウェブ業界分析 - 検索トレンド」 - カスタムカテゴリの検索キーワードを非ブランド、「歯医者」で絞り込み(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

成長サイトの検索キーワードの動向

このセクションでは、個別のサイトにおけるキーワード分析を通じて、キーワードの動向に対する示唆を探ります。カスタムカテゴリに登録したサイトの中で、2022年のランキング3位の2525.bizと4位のbubunkyousei.comをピックアップします。いずれのサイトも、昨年度から大きくトラフィックを伸ばしています。

ふかさわ歯科クリニック篠崎」(2525.biz)の場合

東京都江戸川区の「ふかさわ歯科クリニック篠崎」は、6名の歯科医を擁する歯科クリニックで、歯周病、虫歯、小児歯科、予防歯科、ホワイトニング、審美歯科、予防歯科、インプラント、矯正歯科、口腔外科、口腔がん検診などを幅広くカバーする総合歯科クリニックです。

「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較
※シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - 「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較(2020年8月〜2021年7月vs 2021年8月〜2022年7月、デスクトップ)データソース

どのキーワードでトラフィックが拡大しているのか見るために、直近の1年と昨年の上位15キーワードを比較してみると、「親知らず 抜かなきゃよかった」は4倍、「アデノイド」を含むキーワードは2倍以上の獲得トラフィックが拡大しています。また「歯茎」「舌苔」を含むキーワードは、昨年は上位15には含まれておらず、この1年で多くのキーワードがランクインしています。

「親知らず」は口腔外科関連キーワード、「アデノイド」は歯科矯正関連キーワード、「歯茎」は歯周病やホワイトニング関連、「舌苔」は口臭に関するキーワードと、幅広いキーワードの領域でトラフィックを拡大しているのも特徴的です。同サイトは、「伝えたい! 歯の疑問」(2525.biz/post/)というコンテンツを提供しており、トラフィックの拡大に寄与していると推測されます。postディレクトリへのトラフィックは、昨対比で20,07I =>55,858と大きく伸びています。

「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較

※シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - 「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較(2020年8月〜2021年7月vs 2021年8月〜2022年7月、デスクトップ)データソース

You矯正歯科」(bubunkyousei.com)の場合

東京と広島に9つの歯科医院を展開するYou矯正歯科は、インビザラインを中心とした矯正歯科を専門的に手がけるクリニックです

デスクトップトラフィックの昨年に対する成長率をマーケティングチャネル別に分析したものが下の画面です。このサイトでもやはりオーガニック検索が、トラフィックの成長ドライバーとなっています。デスクトップの検索トラフィックは32.3K=>102.9Kと3倍以上に拡大しています。

「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較

※シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - 「2525.biz」のチャネル別トラフィック比較(2020年8月〜2021年7月vs 2021年8月〜2022年7月、デスクトップ)データソース

どのキーワードでトラフィックが拡大しているのか見るために、直近の1年と昨年の上位15キーワードを比較してみると、「歯列矯正」を含むキーワードが1.948k=>10.227kと5倍超、「インビザライン」を含むキーワードは481=>1687と3,5倍と急拡大しています。また、昨年は上位15位に入っていなかった「顎が痛い 片方だけ」「噛み合わせがわからない」という質問形式のキーワードがランクインしています。そのほか、「インプラント 後悔」も新規にランクインしています。

「bubunkyousei.com」のチャネル別トラフィック比較

※シミラーウェブ「マーケティングチャネル」 - 「bubunkyousei.com」のチャネル別トラフィック比較(2020年8月〜2021年7月vs 2021年8月〜2022年7月、デスクトップ)データソース

インプラント以外のキーワードは矯正歯科に関するものですが、これらキーワードからの着地ページはいずれも「歯列矯正カフェ」(bubunkyousei.com/category/kyousei-cafe/)のコンテンツです。歯列矯正に関するコンテンツが中心ですが、インプラントなど幅広い歯の悩みに答える内容となっています。

成長サイトの検索キーワードの動向

審美・矯正関連コンテンツ

う蝕や歯周病のない人でも顧客となり得ることから、審美や矯正の領域に的を絞ってコンテンツ強化することで集客を強化する方向性が1つめのオプションです。審美や矯正には様々な対処方法がありますが、それらについて十分な知識をもつ消費者は多くありません。審美や矯正治療を受けた結果として、果たして自分が望んでいた結果が得られるのかと不安になるケースも多々あると思われます。

そうした心情に寄り添ったガイドとなる総合的なコンテンツを提供することで、トラフィックを拡大させる可能性は十分にあります。例えば、審美の中でも比較的手軽にできるように思われる「ホワイトニング」ですが、シミラーウェブのキーワードジェネレーターを使って、「ホワイトニング」を含むキーワードを洗い出すと、「ホワイトニング 後悔」が2番目に出てきます。また「ホワイトニング 自宅」や「セルフホワイトニング」など、自分でホワイトニングしようとしている消費者も多いようです。そこで不安解消やセルフホワイトニングの注意すべき点にフォーカスを当てたコンテンツを提供してはどうでしょうか。SEO的な効果が見込めるものと思われます。

「ホワイトニング」を含むキーワードを生成
※シミラーウェブ「キーワードジェネレーター」 - 「ホワイトニング」を含むキーワードを生成(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

医療費控除に関するコンテンツ

キーワード分析の分類4の医療費控除に関するコンテンツは、一定の検索ボリュームが必ず見込めることから、コンテンツを用意しておくと新たな集客が期待できます。上の分析でトラフィックリーダーサイトとされたアイデンタルクリニック(identalclinic.jp)のコンテンツでも、医療費控除金額の計算ツールも含めて10ページ程度ですので、作成上のハードルは決して高くありません。

キーワードジェネレーターを使って「医療費控除」を含むキーワードを洗い出すと、全体的にキーワード難易度(KD)は高いのですが、「医療費控除 いくら戻る」「医療費控除 いくらから」などは比較的KDポイントが低くなっています。例えば、FAQ形式にすればこうしたキーワードをコンテンツの中に組み込みやすくなります。
「医療費控除」を含むキーワードを生成
※シミラーウェブ「キーワードジェネレーター」 - 「医療費控除」を含むキーワードを生成(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース

歯医者の選び方に関連するコンテンツ

分類5の「歯医者」を含む検索キーワードの中でも、歯医者選びに関する情報を探しているユーザーにフォーカスしてSEO対策を行う方向性を3つ目のオプションとして提案します。検索ボリームは少ないかもしれませんが、歯科クリニックを選ぼうとしている段階で消費者と接点をもてることには、大きな意味があると思われます。

キーワードジェネレーターを使って「歯医者 選び方」に関連するキーワードを洗い出すと、一定のトラフィックは見込めることや、全体的にキーワード難易度(KD)が低いことがわかります。また、歯科医や歯科よりも歯医者のほうが検索回数が多いことから、歯医者という言い方を使ったほうがいいようです。
「歯医者」を含むキーワードを生成
※シミラーウェブ「キーワードジェネレーター」 - 「歯医者」を含むキーワードを生成(2021年8月〜2022年7月、デスクトップのみ)データソース7.まとめ

今回は、歯科クリニック業界の主要なプレーヤーのトラフィックを、マーケティングチャネルと検索キーワードを中心に多面的に分析しました。この業界は、一部の大手歯科クリニックグループを除けば、地域に密着して歯科サービスを提供している小規模事業者が大多数を占めています。インターネットを活用した集客という面では、他の業界の例にもれずオーガニック検索が鍵を握っています。ブランド指名の検索キーワードの割合は非常に少なく、非ブランドの検索キーワードからのパフォーマンスを高めることで、新規参入者あるいはトラフィック下位の事業者にも、検索トラフィックを大きく伸ばす余地が十分にあります。

リードプラス株式会社では、Webのトラフィック、キーワードなどのデータを様々なテクノロジーを活用し、広告運用代行のご提案を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

※本記事はマーケットインテリジェンスツール「SimilarWeb(シミラーウェブ)」のデータを多く引用しております。SimilarWebはパネルデータを基にした統計・推計のデータであることを理解しており、傾向やトレンドを探る目的で利用しています。本記事および記事内に含まれるデータ、見解は特定の第三者を評価するものではございません。

Web集客の種類5選と使い分けの原則