新時代にデジタルマーケティングがどうなるのかを14のキーワードから考える

「平成」から新しい時代「令和」へ変わりました。時代が変わってマーケティングも変わるのか?など弊社内も含めてさまざまな議論が活発化しています。そして、これに関する記事を書かねばと思い、おそらくこれから重要になってくるであろうデジタルマーケティング用語をご紹介したいと思います。

デジタルマーケティングに関わっていると実にさまざまな用語が生まれます。そして、その多くがバズワードとして時間の経過とともに忘れ去られたりします。そのようなキーワードを使っているとマーケティング活動自体がチープに受取られるようになるから恐ろしいものです。

それでは早速始めましょう。

AIと機械学習

AI、機械学習はやはりはずせませんし、第一にあげるべきでしょう。

この二つはセットで語られることが多いですが、AI(人工知能)という広い概念に含まれるのが、機械学習です。

機械学習はたとえばデータをもとにした予測、最適な施策の実行といったことをおこないます。AIはそういった高度な処理も含んだ概念です。

さてAIを概念と書きましたが、実はAIというのは明確な技術ではないですし、ハッキリした定義もありません。ですから現在もさまざまな場所やツールでAIという言葉が聞かれますが、内容的に「本当にAIなのか」と疑問なものもあります。しかし概念と考えれば、当てはまるとも言えるでしょう。

とはいえ単にデータを集計し統計的な回答を出す、セットした施策を自動で実行するといったものにAIとつける風潮は、やはりいいものではありません。

新しい時代もこうしたAIっぽいソリューションが次々と現れてくるでしょうが、きちんとしたものはより高度に進化して、二極化していくでしょう。

高度なものとして、たとえばGoogle広告はほとんどの場合で自動化した方が、熟練の運用者よりいい成果が今も出ています。出ない場合はデータの蓄積が悪い、データ取得ができていないといったケースがほとんどです。

それに人が運用していると、リアルタイムに入札額を調整して出し分ける、といったことは不可能です。AIがデータにもとづいた判断をすぐにおこない実行に移すことで、高い成果が出せるのです。

Googleはもちろん自然検索のロジックでもAIを使っています。基本の考え方は「ユーザーの満足度を上げる」です。そのためキーワードから検索意図を読み取り、最適な検索結果を表示する傾向がどんどん強くなっています。

また検索キーワードはもちろん、さまざまなソリューションによるデータを活用し、検索に反映させています。「metaタグを整備する」「コンテンツのキーワードの含有率はこの程度にする」「良い被リンクをつける」といった程度のSEOはこれからも、日々その効き目が薄れていくと考えておいた方がいいでしょう。

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LTV

LTV(顧客生涯価値)はかなり昔からある言葉ですが、これが経営指標の主流になる言葉として注目を高めているといいます。

現在の経営指標として使われる「KPI」は、ほとんどの企業で聞かれるようになりました。非常に小規模な事業であっても会議では必ずKPIの発表をする、という時間が取られているケースが目立ちます。

ただしKPIは、「今期の売上目標の達成」など半年や1年での評価、長くても数年に対するものです。また、ほとんどの場合、顧客を起点とした指標でもありません。

LTVとはその顧客が自社に対して、生涯にわたってどれだけ価値を生んでくれるかという指標です。顧客を軸にした考え方ともいえます。ただしKPIと対を成すわけではないので、KPIとLTVの両方を見ていくというのが実際の取り組みになるでしょう。

新規顧客を獲得するのは高いコストがかかる、また売上を分析すると少数の継続顧客が多くの利益をもたらしてくれている、というのがわかります。しかしそれをどう目標化して実現できるようすればいいかがわからない、というのがこれまででした。

しかし今はマーケティングオートメーションやCRMなどのツールも充実し、LTVをあげるための施策にも取組みやすくなっています。

デジタルマーケティングも広告を主に指すのではなく、こうしたCRMにシフトしていく流れです。

感覚的にはわかっていたLTVを、明確なビジネスの指標として取り入れていきましょう。

インバウンド(訪日旅行)

周囲を見渡してみても、外国からの旅行者が増えているのは明らかです。

また日本人だけのビジネスが縮小している、今後も大きく伸びる可能性はないというのも、さまざまなニュースから明らかでしょう。

あらゆる分野でインバウンド(訪日旅行)に目を向ける必要があります。交通や観光、お土産物といったもの以外でもです。

かつてはグローバル化ということで日本から海外に出ていく、というやり方が増えました。インターネットの場合だと海外通販のように、ネット上で海外への販路を広げるといった方法が主でした。

しかし今は日本に外国からやってくる、それをどうビジネスにつなげるかというのがポイントです。「ショールーミング」、つまり実店舗で商品を見てから購入や申込みはネットでおこなう、というユーザー行動の変化が広がりました。インバウンドはいわば日本という国そのものが、ショールーム化しているといえます。日本にやって来てから、帰国したあと日本の商品やサービスに対してネットを通じて購入するのです。実際に日本の商品をネットで購入するようになったのは旅行がきっかけという意見が多い、という調査結果もあります。

インバウンドを自分のビジネスにあてはめることができないか、検討してみる価値は大いにあるでしょう。

5G

5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、これまでより通信が高速化、大容量で扱えるようになります。

5Gでどんな未来になるかは、文字で説明するより総務省によるPR動画を見てもらった方がイメージしやすいと思います(私もそうでした)。

 

 

「凄いことがたくさんできる」というのは十分に伝わってきますね。

5Gは通信技術ですから、車の自動運転だったり遠隔治療であったりは、それ単独ではできません。しかしこうしたことを支えるための技術が、もうすぐ普及するのは確かです。

デジタルマーケティングと通信技術は切り離せません。

現在コンテンツとしての価値をぐんぐん高めているインターネット動画は、2000年代の初めには到底無理でした。しかしそれが通信速度の進歩で可能になり、同時にさまざまなマーケティング手法が生まれました。動画広告やパーソナライズ動画などは、その一例です。

5Gはこれまで平面だったデジタルマーケティングの世界を、立体的にしていくでしょう。平面とはパソコンやスマホのディスプレイ、一方の立体的とはVRはもちろん、店舗やイベントでもインターネットを駆使したさまざまなことが可能になるということの比喩です。

立体的になればあらゆる場所で、パソコンやスマホがなくても他の機器を使い、さまざまなことが実現できるようになるでしょう。それに伴いデジタルマーケティングも新しい手法、違った考え方が数多く出てくるはずです。

それに柔軟に対応し、情報をキャッチアップできるようにするのが大切です。

CDP

デジタルマーケティングの世界でいうCDPとは「Customer Data Platform」、つまり顧客の統合データプラットフォームです。

以前まではDMPという言い方をされていましたが、顧客をキーにしたデータという考え方を強く打ち出すようになったのと、DMPという言葉が広告寄りと認識されがちなため、CDPという表現が広く使われるようになってきました。

CDP内のデータは広告だけではなくMAツールを使ったCRM、コンテンツの出し分けやサイト内接客、データ分析など幅広く使われます(もっともDMPも実態はほぼ同じですが)。

本来であればCDPではなく「データ統合と蓄積」という表現の方が、新時代も変わらないという意味では無難です。なぜならCDPという言葉がバズワードで、同じようなデータプラットフォームが別の表現にとって代わられる可能性は十分にあるからです。

しかしここはCDPという表現の普及と、このへんで用語を統一してもらいたいという願望も込めてCDPと記載させてもらいました。

これから統合した顧客データはデジタルマーケティングに必須で、それを蓄積するプラットフォームも当然必要です。

またこのCDPは最初にあげたAIにとっても、無くてはならないものです。

データ統合とプラットフォームの構築ができていない企業もまだまだ多いと思いますが、重要度は高いので新しい時代の直近の目標として設定するといいでしょう。

サブスクリプションモデル

サブスクリプションモデルとはその商品を買うのではなく、契約をしてその期間に使用する権利を得るというビジネスモデルです。

Web業界だと、Adobeのソフトがサブスクリプションへ契約形態に変えたことをご存知のはずです。Adobeはこれにより過去最高益を出しました。

一般的には音楽や映像配信で、サブスクリプションモデルが多くなっています。

そのためソフトウェアやデジタルコンテンツに適用されるものという認識でしたが、最近は飲食店や美容サロンといった実店舗、あるいはメーカーがこのモデルを導入し始めています。

ユーザーがモノを所有する意識ではなく、体験に価値を見出すようになっているのが昨今の変化です。またこの記事で2番目にピックアップしたLTVは、サブスクリプションと関係が深い指標といえます。

アイデア次第でデジタル以外にも応用が進んできているので、収益をあげるモデルとして検討してみるといいでしょう。

またユーザーの意識の変化を理解するうえでも、チェックしておいた方がいいモデルです。

CX(カスタマーエクスペリエンス)

CX(カスタマーエクスペリエンス)はバズワードになりそうな雰囲気があるものの、これが広まって欲しい、あらゆるビジネスでこれを重視して欲しいという願望を込めてピックアップしました。

CXに似た言葉、概念として良く知られるのがUXです。

多くの場合でCXは、UXを含んだ大きな概念と説明されます。大雑把な言い方をするとUXがオンラインでの体験なのに対して、CXはオンラインとオフラインを問わずあらゆるチャネルでの体験を指す、とされます。

これまでUXも、オンライン以外を含めた体験と解説されるケースがありましたが、その意識はあまり広がりませんでした。またCXとは「カスタマー・エクスペリエンス」、つまり顧客を軸とした言葉なので、この呼び方に統合していくというのはいい方向性と思えます。

顧客はWebサイト、あるいはアプリだけで体験を完結しているわけではありません。インターネットで手続きがすべてできるサービスであっても、電話サポートを利用することもあるでしょう。時には関連したリアルイベントへの参加をするでしょう。こうした体験のすべてが、これからはますます大切になります。

またCXが説かれる理由は、生活者の意識がモノ重視から、その商品やサービスを使っての体験へとシフトしていることと大きな関係があります。

音声検索

これまでの検索は「キーワードを文字で入力する」という行為でしたが「音声で検索をする」という行動が増えています。

SiriやGoogleアシスタントを頻繫に使っている人は多いでしょうし、使ってみると便利で、利用回数が次第に増えてきているという人も多いでしょう。実際に私も使ってみてなかなか便利だと気づき、利用頻度があがっている一人です。

検索行動が変われば、デジタルマーケティングの手法も変わってきます。具体的にはSEOは大きな変化を見せる分野です。特にこれからは「最初から音声検索を使っていた」という生活者が増えてきます。ですから音声検索への対応は、より必要になってきます。

動画コンテンツ

動画は数年前から、コンテンツで多く見られるようになっています。

しかしコンテンツマーケティング≒記事コンテンツと認識されるように、テキスト情報の方が優先される傾向にあるのは未だ否めません。

その大きな理由は、Google検索で記事コンテンツの方が有利というのが大きいでしょう。動画コンテンツがいくらユーザーに好まれても、検索で表示されにくければなかなか力を入れることができません。

しかしGoogleも動画コンテンツが自然検索結果として正しくインデックスをされるよう、日々研究と実験を重ねています。海外では検索結果に動画が表示される割合と頻度が、増えてきているようです。

Google検索以外でも、動画は勢いを増しています。

Youtubeはもちろん、FacebookやTwitterでも動画の投稿が多くなっている、実際に見られたりシェアされているのは動画の投稿という話もありましたが、動画自体のSNSというのも増えています。ターゲット層やビジネスの内容によっては、今なら「TikTok」でのマーケティングという手法も身につけておく必要があるでしょう。

また、最近ではブログ記事のようにYouTubeに動画を定期的に掲載するユーチューバーが盛んなのはいうまでもありません。そのような界隈では「ブログ」ではなく「ビログ」というようです。「ビログしてます」「え?ブログでしょ」というようなことが無いようにする必要がありそうです。ちなみに「ビログ」という言葉を使い出したのは人気筋トレ YouTuberであるカネキンさんと言われています。

 

 

パーソナライズとリアルタイム

メールなどのプッシュ手法、サイトやアプリに訪問してのコンテンツの出し分けなど、ユーザーごとのパーソナライズの必要性は十分に認識されていると思います。サイト外での接点となる広告でも、ターゲティングしたものが効果的になっています。

パーソナライズするためには、もとになるデータが必要です。データをもとにしてMAや接客、レコメンドツールといったソリューションで実行していくわけですが、「パーソナライズをリアルタイムでおこなっていく」というのが最近の注目になっています。

つまりあらかじめパターン化された設定を出すのではなく、ユーザーを即座に判断して、内容を変えていくことが重視されてきているのです。これは当然、人力では対応できません。パーソナライズができるソリューションを導入する、あるいは開発するといった場合に、リアルタイム性は重要な基準となってきます。

オムニチャネル

「オンラインとオフラインの垣根をなくす」というのが、伝えたいことです。この内容を伝えるのにどういったキーワードで出すか判断に迷いましたが、結果的にちょっと古い感じもしましたが「オムニチャネル」という定番ワードを使うことにしました。

オムニチャネルはあらゆるチャネルを使っての施策、と解説されることが多いですが、ユーザー視点に立って「オンライン、オフラインの別を感じることなく、良い商品やサービスを提供される」というのが大切と思われます。もちろんこれを通して、ユーザーは良い顧客体験を得るのです。

インターネット利用が広がっているとはいえ、日本は実店舗の利用が多い国です。それもあってかまだオンラインとオフラインを別物として扱う事業者が多いですが、ユーザーにとっては「すべてそのブランドの商品、サービス」です。

そうした顧客目線を踏まえ、戦略を立てていきたいものです。

IoT

「モノのインターネット」と表現されるIoTは、あらゆる機器や技術がインターネットを介してつながり、制御されるものです。実際にはこれが膨大なデータをもとに動くので、データの基盤が必要、そこと連携していることもポイントです。

言葉上はテクノロジーとつくものの、IoTも具体的な技術ではなく概念です。

ですから「IoTとは自動車の自動運転だ」「家中の家電品がつながっていることだ」「工場の機械が人の操作や監視なしで動いてくれる」といった個々の事例にだけ捉われてしまうと、非常に狭い見方になってしまいます。

とはいえ具体的なことも提示しないと、イメージがしにくいでしょう。

Webの世界でいえば家電製品にモニターがついた場合、今のようにPCの横幅とスマートフォンの横幅だけで最適な画面を検討すると、とても追いつきません。家電製品は無数にあるからです。そこでレスポンシブという技術の方が推奨されるようになった、という経緯があります。レスポンシブはデバイスではなく、画面サイズで可変する方法だからです。

Webデザインだけでなく、マーケティングもIoTを意識したものが必要になるでしょう。Google広告がレスポンシブ広告を主にしているのは、そうしたあらゆる環境に合わせていけるようにという意図があるからでしょう。コンテンツマーケティングもたとえばキッチンにいる場合、リビングにいる場合での出し分けを考えていく必要があります。

デジタルマーケティングという枠組とともに、大きな視点でIoTにビジネスをどう合わせていくか、新しいものを生み出していくかというのが重要になってきます。

個人情報保護 vs パーソナライズ

パーソナライズなど個人個人に対するデジタルマーケティングが盛んになってくる一方で、逆風も強くなっています。

個人情報保護を目的にしたGDPR(EU一般データ保護規則)はヨーロッパの規定ですが、予想通り他の国でもこれに近しい規則が制定され始めています。日本もまた制定される可能性は、大いにあるでしょう。

国だけでなくテクノロジーでも、AppleがITPでcookieの実質的な無効化を強化しています。ユーザー側に立てば「自分の行動が筒抜けになっている」ということに不安をおぼえるのも、無理がありません。そのためこうした規定は、仕方がない動きともいえます。

このように個人情報保護の動きは加速し、一方のデジタルマーケティングはCDPを基盤にした、個人個人に対するマーケティングへと伸びています。これからはいっそう個人情報保護の動きを見定めながら、デジタルマーケティングに取組んでいく必要があります。

組織デザイン

キーワードの最後は、「組織デザイン」です。

これは素直に組織構築と表現すればいいところですが、今回の記事はキーワードにあてはめてみるといった形でまとめていますので、この言葉を採用させてもらいました。

データという資源も新しいビジネスモデルも、またオンラインとオフラインの融合も、それに適した組織になっていなければ十分な活用はできません。

たとえばデータ統合とそれを一つのプラットフォームに納めるということは、技術上は可能です。しかしそれが進まないのは、組織ごとでデータが分断されている、統合の話し合いが遅々として進まない、何より舵取りが不明瞭といった課題が多く出るというのが理由です。また店舗とWebのすみ分けがうまくいかない、SFAやMAが入っていても営業とマーケティング部門の連携が薄く思ったように成果が出せないという事例も、数多くあるはずです。もしかしたらデジタルは特にやっていなく、イベントやセミナー、カタログ制作ばかりという旧態依然の組織も存在するかもしれません。

テクノロジーの進歩をビジネスに生かすためには、組織整備が欠かせません。また新しい時代に向けて組織の再構築を進めなければ、今後、企業は大きなリスクになるでしょう。

まとめ ~すべては結びつく~

本日、ご紹介させていただいたキーワードは単独ではなく、全てが結びついているという内容でこの記事を締めたいと思います。

AIはCDPというデータ基盤がなければ動けませんし、LTVを指標にしないとこれまでと同じく、目の前の成果だけに一喜一憂する状況がつづくでしょう。そしてオムニチャネルを現実のものにしなければ、LTVという長い顧客との関係は維持できません。CXもまた、オンラインとオフラインの垣根を超えるからこそ可能になるものです。もちろんこれらは、最後に紹介した組織デザインがあってこそ機能します。

正直この記事で挙げたキーワードのいくつかは、バズワードとして無くなってしまうかもしれません。しかしその言葉が意味するところは、令和の時代となってもデジタルマーケティングに欠かせない考え方として残っていくはずです。

皆さんのマーケティング活動において、今回の記事が未来を予測し最適な活動を実践していただくのにお役立ていただければ嬉しいです。

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