コンテンツマーケティングの一つ「ブランドジャーナリズム」とは何か。具体例も交えて解説

コンテンツマーケティングを実践していくと「ブランドジャーナリズム」という言葉に出くわすことがあります。実はこの「ブランドジャーナリズム」はコンテンツマーケティングの一つの手法になりますが、一般的なコンテンツマーケティングの概念とは異なる点も多くあります。

そこで今回は、ブランドジャーナリズムについて解説いたします。なかなか定義が難しいブランドジャーナリズムですが、皆様が実際の施策として取り組めるように具体例なども織り交ぜながらご紹介いたします。

ブランドジャーナリズム概要

最初にブランドジャーナリズムとは何かについて理解していきましょう。その概念と特徴をご紹介します。

ブランドジャーナリズムとは何か?

ブランドジャーナリズムとは自社を取材し、そこから得た情報を広く世間にアピールしていくコンテンツです。

そのためマーケティングというよりは従来の枠組みでは広報に近い領域といえます。

 以前では取材してそれを外部にPRするためには第三者であるメディアの介在が必要不可欠でした。テレビや新聞、雑誌など広く世間にアピールするための媒体は外部にしかなかったからです。中には企業がグループ内で出版やテレビ番組といったメディアを持つという方法もありはしましたが、莫大な予算や流通ルートを考えればとても効率が良い手法とはいえませんでした。

ところが現在は言わずもがなインターネットが一般化しています。これを使って発信すればコストは抑えられますし、流通ルートを考える必要もありません。閉じられた広報ではなく外に広く自社をアピールする方法が現実的になった産物として、ブランドジャーナリズムはあるのです。

一般的なコンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムの違い

わかりやすいように、一般的なコンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムを比較してみましょう。

■目的の違い

  • 一般的なコンテンツマーケティングは商品やサービスの売上、見込み客獲得を目的とする
  • ブランドジャーナリズムは企業の認知度向上、ブランド力向上を目的とする 

売上や見込み客の獲得は、明確に定量評価ができるものです。これに比べて認知度やブランド力向上は定量評価がしにくいものと言えるでしょう。認知度やブランド力向上を目的とした際の効果測定をどうするのかもブランドジャーナリズムでの大きなポイントです。また、それぞれは目的が異なるためコンテンツの構成や内容も大きく違ってきます。

■担当

  • 一般的なコンテンツマーケティングはマーケティング担当者
  • ブランドジャーナリズムは広報担当者

職域として似て非なるものの代表といえばマーケティングと広報です。

マーケティングは自社の商品やサービスの売上へ貢献するという立場ですが、ブランドジャーナリズムはジャーナリズムの視点も必要になってきます。ここを混同してしまうと、ブランドジャーナリズムは機能しません。

■ターゲットの範囲

  • 一般的なコンテンツマーケティングは見込み客を中心に、コンバージョンに向かい絞られていく
  • ブランドジャーナリズム:幅広い層へのアピール

一般的なコンテンツマーケティングでも入口は広いものですが、見込み客からさらにコンバージョンへと進んでいく過程では、かなり絞り込まれたターゲットとなります。しかしブランドジャーナリズムは認知やファン化が目的なので、とにかく広い層にアピールすることが必要です。たとえば不動産売買のコンテンツマーケティングではターゲットを広げても社会人のみが対象ですが、ブランドジャーナリズムでは「いつか家を買うであろう中学生、高校生」も対象になります。

 一般的なコンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムの違いがわかるよう、よりイメージしやすく書くと一般的なコンテンツマーケティングの記事下には「資料請求ボタン」や「関連する〇〇サービスへのリンク」といったコンバージョンポイントが必須です。しかしブランドジャーナリズムの記事コンテンツにこれらは必要なく「面白い内容だなあ」「素晴らしい会社だな〜」と思ってもらえれば成功です。

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ブランドジャーナリズム事例 

前章でブランドジャーナリズムについて解説しましたが、実のところブランドジャーナリズムに明確な定義はありません。扱う人によってかなり解釈が異なります。 

これからいくつか事例を紹介していきますが「これこそがブランドジャーナリズム」と明確な基準をもって選んだわけではありません。「自社について取材した、客観的なコンテンツ」という視点での幅広く選んだものです。 

 

クリタグループ

クリタグループ(栗田工業):技術トピックス

メーカーサイトはさまざまな研究開発のコンテンツを多く持っています。これはかなり以前からあったコンテンツの種類ですが、ブランドジャーナリズムの標準的な例ともいえます。

クリタグループ(栗田工業)の技術開発部カテゴリは内容が充実し、トピックスも年に数回程度出されています。ブランドジャーナリズムでは毎日のようにコンテンツを追加していく、という説明がされることもあります。しかし実際のところその頻度で自社の情報を発信していくのは、かなり困難です。現実的な選択として自社の商品やサービスに対し、それを裏付ける研究や開発をきちんとアピールするのは、基本かつ効果が高いブランドジャーナリズムの一形態と呼べるでしょう。

 

キリン株式会社 

キリン株式会社:研究・技術開発レポート

研究開発、技術といった内容をよりコンテンツマーケティングに近づけたブランドジャーナリズムの事例としては、キリン株式会社の研究・技術開発レポートを紹介したいところです。 ページの紹介文に「キリングループのさまざまな研究・技術開発成果を、レポート形式で読みやすくご紹介します」と書いてありますが、これこそがネットでブランドジャーナリズムを手掛けるうえで欠かせないポイントといえます。つまりユーザー視点でコンテンツの構成、内容、デザインといったところを考えていくのです。インデックスページも美しく見やすいカードレイアウトになっていて、馴染み深い現代的なコンテンツとなっています。 

 

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記事コンテンツそのものも、読みやすい形で編集やレイアウトがされてあります。研究開発という専門的で難解になりがちな内容を、わかりやすい見出しや図表等を使いなるべく平易に伝えようとしてくれているのも好感が持てます。

なお記事の中には特定の商品、イベントやキャンペーンへの誘導、つまりコンバージョンポイントが見当たりません。認知やブランド力アップが目的なので、コンバージョンポイントは不要なのです。なお掲載量からいっても、まずまずの頻度で更新されてあるのだと思われます。従来の研究開発コンテンツより多く更新されるというのも、ブランドジャーナリズムに取組むうえでは必要です。

 

ミツカン水の文化センター

ミツカン水の文化センター(ミツカングループウェブサイト)

ブランドジャーナリズムを少し拡大する形になりますが、自社に関するオウンドメディアを設置することも良いアピール方法になります。

ミツカンは「ミツカン水の文化センター」を設立、専用サイトを設けています。発信しているのは同社と関わりの深い水の情報です。水に関する各種情報の他に、センターの活動や調査なども随時発信しています。ミツカンという企業、ブランドの認知からその価値をいっそう高めることができる、非常に良質なオウンドメディアです。

注意すべきこと 

ブランドジャーナリズムは一般的なコンテンツマーケティングと違い「第三者的な目線」が強く要求されます。一般のメディアは特定の企業、商品やサービスに対して偏った報道がNGとされますが、ブランドジャーナリズムに取組むうえでこの姿勢を企業が持つ必要があります。

客観的な情報を淡々と並べるだけではユーザーの関心はひきませんし、理解もしたいと思いません。そのために面白い視点や切り口で編集するといったことは必要ですが、内容について妙な手心を加えてしまうとユーザーはしらけてしまい、逆の感情さえ持ってしまうでしょう。

また自社に取材、発信するということで内輪ネタ、イベントの報告などを大きく出すケースがあります。これは有効な場合もあるのですが、そうした情報ばかりを発信しているだけではブランドジャーナリズムとはなり得ません。こうした情報を交えていく前に、あくまでも企業の本質となる姿勢やビジョン、ふだんの業務や取組み方、研究や技術などについてもきちんと掲載していきましょう。逆にいうとこうした本質的な情報が発信できないならば、ブランドジャーナリズムに取組むことは難しいといえます。 

まとめ

実際のところ、日本ではコンテンツマーケティングというと「認知、ブランド力の向上が目的」という声が多くあがります。しかしコンテンツを見てみると「商品紹介ページへの誘導」「購入」「資料請求」といったボタンが大きく掲載され、コンバージョンを狙う意図が出ています。「コンテンツマーケティングで申込みや売上を見込みたいけれども、どうすれば良いかわからないので認知、ブランド力の向上と言っている」という現実が見えます。

とはいえブランドジャーナリズムに取り組める体力がある企業はそう多くはないのかと思っています。前述したようにブランドジャーナリズムに明確な定義はありません。しかしこうした手法があるのを知ることで、コンバージョンを取るためのコンテンツマーケティングについても、より深く理解できるようになるはずです。 

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