経営者が知っておきたい営業の「新規開拓」

法人企業の経営を大きく左右する “新規開拓”。

企業は、営業活動を通じて収益に貢献しており、その収益は「既存顧客の維持」と「新規顧客の開拓」から得られます。

経営者や営業責任者などは、「新規に顧客を開拓しよう!」という指令はよく部下に発するかもしれません。しかし、その難易度は高く、具体的にどうすれば良いのかという疑問が常につきまとうものです。そして、多くの営業担当者は、今ひとつ新規に顧客が開拓できずに悩んでいるのです。 

例えば、あなたに電話営業がかかってきたときに無下に断った経験はありませんか?

電話で断られると意外と精神的なダメージを受けてしまうものです。そして、自社の営業担当者が同じような気持ちを抱えながら過ごしていることを忘れてはいけません。

新規開拓の仕方は、業種や販売する商品やサービス、ターゲットとする人物像によって、異なります。今回は、新規開拓の意味や方法論について論じた後に、法人企業で明日から実践可能な営業手段としておすすめのものをご紹介します。

新規開拓とは?

“既存の顧客ではなく、新規顧客に対して売上をあげること”を新規開拓といいます。

一般的に、新規顧客開拓は、まったく取引履歴が存在しない法人企業に対して、新たな販路として取引の窓口を開いてもらえるように、訪問営業やメール、電話などで、営業することを指す言葉として利用されています。

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新規顧客開拓の種類

この新規顧客開拓には、主に下記の2通りの方法があります。

  • プッシュ型
  • プル型

メールや電話、DMなどを利用した、リストなどを元に こちらから仕掛ける営業スタイルをプッシュ型の新規開拓営業といいます。今では数少なくなりましたが「飛び込み」と呼ばれるスタイルもプッシュ型営業の一つです。

プッシュ型は、企業(自社)のタイミングで見込み客に対するアクションが起こされます。そのため相手の意思や課題とは関係ないことも少なくないので、受注確率は一般的に低くなります。 

一方で、プル型の新規開拓営業とは、営業先の見込み客が主体となって能動的にアクションしてもらえるように仕組み作りをする営業スタイルです。主に、インターネットを活用して見つけてもらう仕組みを作るところから始めます。そのため相手の課題と合致したコンテンツを用意しておけば、受注確率は高くなります。

参考記事:プル型営業とプッシュ型営業の違いを正しく理解する

新規開拓が必要な理由

新規開拓への考え方は、会社によってさまざまです。企業の中には、“企業経営の命を左右するもの”と捉えているところもあるでしょう。企業の売上の最大化を目指すには、取引先を増加し、利益を右肩上がりにしていく必要があります。

新規開拓によって、取引相手が増えれば、利益も同様に増加するため、それが“新規開拓を行う正当な理由”となります。 

しかし、新規開拓は、利益を拡大するためだけに行うものではありません。それでは、新規開拓が必要な理由についてあらためてご紹介しておきます。 

利益の拡大

利益の拡大は、新規開拓が必要な理由としてもっとも意識されやすい点です。既存顧客の満足度を高めることで、企業全体の売上と利益額の向上が見込めますが、商材や自社の置かれている立場によっては限界があります。そのため、新規開拓によって新しい販路を拡大し、利益額の向上を図る必要があります。

既存顧客の離脱によるリスク低減

どれだけ親身になって既存顧客を大切にしていても、いつ起きてもおかしくないのが既存顧客の離脱です。もちろん、既存顧客の減った数に対して、新たな取引先を増やしていく努力をしなければ、いずれ売上が低下してしまいます。そのため、新規開拓営業をすることで、既存顧客の離脱によるリスクを低減していく必要があります。

市場変化やディスラプターの出現など環境要因によるリスクの低減

人口減少によるマーケットの縮小や競合の出現など市場に変化はつきものです。市場の変化によって生じるリスクに対して、何の対策も講じることをしなければ、どれだけ自社で開発した商品やサービスが魅力的でも、時間の経過とともに売上が低下していく可能性があります。売上の低下を防ぐため日頃から新規開拓を心がけ、取引先をたくさん抱えておけば、環境要因によって生じるリスクを低減できます。 

競争力の向上

市場ニーズに即した製品を市場に投入することなく、これまでと変わらない同様の製品を生産し続けていたのでは、いずれ新しく市場に参入してきた多様性のある企業に負けてしまう可能性が高くなります。なぜなら、市場ニーズは、常に変化しており、その時々によって求められるものが異なるからです。

新規顧客開拓をすれば、その時、その時の顧客の悩みやニーズを知ることになり、同業他社がどんな技術を開発しているのか、お客様が何を求めているのかを自然と意識するようになります。それにより競争力が向上し、市場で生き残る上で、必要な技術や知力が養われるようになります。

また、新規顧客開拓で得た利益は、新たな競争力強化への源泉として投資することで、さらなる競争力強化へと繋がります。

新規開拓の6つの方法

顧客を新規開拓をしていくにあたって、その方法は会社によってさまざまです。それでは、どんな方法があるのかご紹介します。 

1. Web問い合わせ

ここでいうWeb問い合わせとは、自社のWebサイトでお客様からの問い合わせを待つことではありません。ターゲットなる法人企業のウェブサイトのお問い合わせフォームから積極的に営業していくという新規開拓方法です。

自社の商品やサービスに興味を持つ見込み客をWeb上から探し、悩みやニーズを一つずつ聞き出したうえで、自社で解決可能なものであれば、具体的にサービスを紹介して、商談に持ち込み顧客化していきます。

2. メール

米国などでは、メールアドレスのリストを購入して一斉にメール配信する手法が一斉を風靡していました。この手法は、大量のメールアドレスに対して自社の宣伝を一気に送信する手法です。

その一方で、日本国内では個人情報保護法の観点から、リストを購入して営業メールを配信することは認められていません。

3. 電話

新規開拓の手段として、もっとも認知度の高いアプローチ手段として電話営業があります。この電話営業は、テレマーケティングやテレセールスなどと呼ばれることもあります。

会社によっては、社内に、営業専門のコールセンターを設置し、スーパーバイザー(SV)の指揮のもと、効率良く新たな取引先を増やしているところや営業担当者が率先して電話営業を行うなど、その導入形態は企業によってさまざまです。

ターゲット企業の電話番号は、Webサイトなどで公開されていることがほとんどですので、それらを元に電話をかけます。

4. 飛び込み営業

飛び込み営業は、営業先の情報をリストアップしておき、順番通りに営業活動を実施する方法と、おおまかに営業予定のエリアを決定し、手当たり次第に法人企業に飛び込み営業をかける方法があります。 

飛び込み営業によるアプローチは、メールや電話といった非対面的な営業手段と違って、対面形式でコミュニケーションが交わされるため上手くいけば信頼関係を築きやすいという特徴があります。しかし、近年ではコンプライアンスなどの観点から労力の割には受注確率の低い手法となっています。

5.DM

DM(ダイレクトメール)とは、販促を目的とした広告目的の郵送物または電子メールです。マンションなどのポストに、郵送物などがたくさん入っていることはありませんか?しかも後悔していないのに宛名までしっかりと書いてあるなんてことも。いわゆるこれがDMです。法人企業のDMは、「社長宛」や「部署宛て」などで送られてきます。 

6. インバウンドマーケティング

インバウンドマーケティングは、自社のWebサイトに、記事コンテンツや電子ブック、動画を公開して顧客に能動的に発見してもらい興味を抱かせる手法です。

 このインバウンドマーケティングは、上記で説明したプッシュ型ではなく唯一プル型の手法です。

プッシュ型は、顧客のニーズの有無に関わらず、企業が売りたいと思う商品を無理やり押し付け、販路を拡大する手法でした。一般的にはプッシュ型は、効率が悪いだけでなく顧客に嫌われる可能性を秘めています。

それに対して、インバウンドマーケティングは、顧客の行動様式に合わせて、自らの意思で自然な形で販路を広げていくプル型のマーケティングです。

近年、消費者は、スマートフォンなどを利用して、自分が知りたいと思う情報を自らの意思で取捨選択するようになりました。そのため、企業がウェブサイトにターゲットにとって役立つコンテンツや興味を持ってもらえるような情報を掲載していれば、見込み客が自然と企業に歩み寄ってくれるようになっています。見込み客が自ら私たち企業の内側へと向かうことからインバウンドマーケティングと呼ばれるようになりました。 

それぞれの手法のメリット・デメリット

次に、新規開拓における営業手法のメリットやデメリットについてご説明します。主要なポイントをいくつかピックアップしますので、それぞれの特徴を押さえていきましょう。

1. Web問い合わせ

メリット

Webを利用したお問い合わせ(相手先の問い合わせフォームに宣伝を入力)のメリットは、実践しようと思えば、明日から営業を開始できるということでしょう。基本的な営業テンプレートを作成しておけば、コピペで効率よく営業活動ができます。非対面式による営業であるため、対面形式の営業に慣れない社員でも、問題なく始めることができます。 

デメリット

誰でも気軽に効率よくできるものの、手当たり次第にアプローチすることになるため、反応率は決してよいとはいえません。また、問い合わせフォームの受け取り先はマーケティング担当者など、決められた人が多いため、自社のサービスや商品への問い合わせでない限りはすぐにゴミ箱行きになってしまいます。

2. メール

メリット

メールを利用した新規開拓のメリットは、個人情報保護法に則った優良リストさえ手元にあれば、すぐに営業が開始できることでしょう。

デメリット

新規開拓の手段としてメールを選択するデメリットは、やはり、法律面をクリアした良質なメールアドレスを獲得することが難しいということでしょう。たとえ、大量のメールアドレスを獲得できる仕組みがあったとしても、昨今のフィッシングメール詐欺の横行などにより、真っ先に怪しまれる手段の一つになっています。

3. 電話

メリット

電話を利用した新規開拓のメリットは、営業先の電話番号さえ手元にあれば、社内の電話を利用してすぐに営業を開始できるということでしょう。また、営業手段の性質上、業務を外部に委託しやすく、自社に電話営業のノウハウがなくても効率よく新規顧客を獲得できます。

最近は、法人専用の新規顧客の獲得を専門とするテレアポ代行業者も増えており、営業体制が整っていない企業でもすぐに利用できます。外部委託業者の外注コストが気になるのであれば、成果報酬型の委託方法もあるので、金銭的リスクを最小限に抑えることもできます。 

デメリット

電話営業を開始するためには、成約率の高いトークスクリプトが必要です。営業ノウハウのない企業にとって、成約率の高いトークスクリプトを作成することは、簡単なことではありません。

また、電話営業を外注することが予算的に厳しければ、社内の人間が電話営業をすることになり、時間的にも精神的にも社内負担が増大してしまいます。電話営業を専任された社員のメンタルケアも含めて一定のコストを覚悟して導入しなければ、テレアポに慣れない従業員が心身ともに異常をきたしてしまうこともあります。 

4. 飛び込み営業

メリット

飛び込み営業の最大のメリットは、新規開拓をするにあたって既存の営業リストがまったくない状態でも、話を聞いてもらえる可能性があることです。メールや電話であれば断りやすいですが、人による対面であれば断りずらいというのも人間心理です。

またパンフレットや資料を準備しておけば、たとえ話を聞いてもらうことができなかったとしても、去り際に手渡しできる可能性があります。

デメリット

飛び込み営業を始めるにあたって社内に営業担当者が必要なのは言うまでもありません。もし、結果が出なければ、一定のコストとなって、経営を圧迫することになるでしょう。また、多くの企業で飛び込み営業が導入されない理由として効率の悪さが挙げられます。1日100件回って、1件お問い合わせにつながるかどうかという程度というのが実情でしょうか。そして、近年、優良企業のセキュリティが厳重化しており、飛び込み営業を行うことが難しくなっています。 

5. DM

メリット

DMは、一度販促物の送付に必要な個人情報を入手してしまえば、多くの情報を一気に伝達できるメリットがあります。そして、DMの性質上、小冊子やカタログなど、比較的大きめな紙媒体でも送付できるため、必然的に開封率も高まります。

また、DMの送付の仕方次第では、地域や業種を簡単にセグメントできるため、ターゲットを絞った的確なエリアマーケティングが展開できます。

デメリット

DMを発送する場合、印刷コストや送付コスト以外にも、印刷会社に販促物の広告デザイン制作を依頼する必要があるため、想像以上にお金がかかります。また、一般的にはグ特定多数に送付するため開封率は低く効果が低くなりがちです。最近では、DMにQRコードを設置し、ウェブサイトへ誘導するといった施策を講じてその行動を計測することもあります。

6. インバウンドマーケティング

メリット

インバウンドマーケティングは、顧客が求めない情報を無理に押し売りすることがないため、営業に対して強い拒否反応を示される可能性が低いというメリットがあります。自社のウェブサイトを通して、コンテンツを公開し、安定した集客を実現することで、優良な見込み客の新規開拓が可能となります。

デメリット

インバウンドマーケティングで結果を出すためには、少し時間がかかります。検索エンジンから安定したアクセスを獲得するには、最低でも6ヵ月は、必要だと考えておいた方がよいでしょう。その間は、結果の有無に関わらず、継続的にコンテンツを作り続ける必要があります。しかし、一旦、軌道に乗ってしまえば全ては資産化されるため24時間365日働く営業担当者として大きな活躍が見込めます。

営業活動の60%はすでに営業担当者と会う前に終わっている

インターネット技術が発展した現在、顧客の89%は製品購入前にWebで情報を調べています。また、60%の営業活動はすでに営業担当者と会う前に終わっていると言われるほど自社のWebサイトの重要性は高まっています。

弊社のお客様の中には、売上の80%をWebサイトからの問い合わせで成り立っている企業もあります。その企業の商材は数百万円から数千万円するものです。

このような背景からも新規顧客開拓の最重要候補としてインバウンドマーケティングがあげられるのではにでしょうか?インバウンドマーケティングは、唯一お客様から嫌われない新規顧客開拓の手法と言えまし、成功すれば企業の資産になるのです。

まとめ

売上向上を目的とした新規開拓の手段は、世の中に、たくさんあります。優秀な営業担当者がいなければ、新規開拓は難しいと思われがちですが、インターネットによる集客が可能となった今、そのハードルは下がりつつあります。

新規開拓もオフラインによる方法か、オンラインによる方法を選ぶのかによって、得られる結果や発生するコストも大きく変わります。ぜひ自社に合った新規開拓方法を選定してみてはいかがでしょうか。