【フラり対談】積水ハウスイノベーション&
コミュニケーション株式会社

*本稿は、「宣伝会議」AdverTimes. (2025年9月29日) に掲載された原稿を一部修正したものです。

全体最適の提案から個別施策の精度向上まで、幅広いマーケティングサービスを提供するリードプラスは、生成AIを活用したマーケティング支援ツール「Leadplus One」のWebアプリ版を9月18日にリリースした。GA4(Google Analytics 4)やGoogleサーチコンソールなどと連携し、Webサイトのパフォーマンスデータの計測・分析、目標達成に向けた改善提案、記事作成やリライトまでを支援する。

デジタルツールの導入が後れている企業が特に不足しているのは、AIが分析・出力したデータを「実行に結び付ける力」であると見ている。同社は「デジタルマーケティングの民主化」を掲げ、同ツールをコミュニケーションハブとして、内製化やノウハウの言語化を支援する。

【フラり対談】積水ハウスイノベーション&コミュニケーション株式会社

AIが分析から一定水準のアウトプットまで担えるようになった今、デジタルマーケティングにおいて人間のマーケターはどのような役割を果たすべきか。データサイエンティストを経て事業会社のCMO(最高マーケティング責任者)を歴任してきた木田浩理氏(積水ハウスイノベーション&コミュニケーションCMO兼CDDO)と、リードプラスの堀裕社長、宮本裕志執行役員に聞いた。

「自走できる組織づくり」を支援する「Leadplus One」

――リードプラスの業務と「Leadplus One」についてお聞かせください。

:当社は広告運用やマーケティングのコンサルティングとして、これまでに4000社以上のお客さまから課題を伺ってきました。今回のツールをリリースする以前から、運用サービスの一環としてレポーティングやダッシュボードの提供を行っています。

「Leadplus One」で実現したいのは「デジタルマーケティングの民主化」です。単なる「ダッシュボード」や「レポーティングツール」ではなく、お客さまの自走を支援するための当社とのコミュニケーションを司るハブとしての役割も期待しています。

地域に根差した小規模な企業も恩恵を受けられるようにするため、昨年末から簡単に使えるモバイルアプリ版を展開しています。そして今回、より細かい状況を把握したいというニーズに応えるかたちで、Web版をリリースしました。

堀 裕 氏




リードプラス

代表取締役社長
堀 裕

 

東京都出身。中央大学卒業後、システムインテグレーターにて信託銀行を中心とした金融機関向け営業を担当。その後、日本マイクロソフト、日本IBM、SAPなどの外資系IT企業にて、セールスディレクター、ビジネスデベロップメント、カントリーマネージャーなどを歴任。2015年よりリードプラスに参画し、マーケティングオートメーションを中心としたコンサルティングや導入支援・運用に従事。2021年のローカルフォリオとの合併を経て、2022年より現職。

ツールの利用は、ジムやクリニックなど限られた商圏で活動する地域密着型のお客さまが圧倒的に多いです。こうした企業はデジタル化に踏み切れないケースが多いため、そこをターゲットに集客支援を行っています。一方で、大手企業においてもデジタルマーケティングの人材やノウハウが不足している場合があり、事業規模にかかわらず活用いただけるようになると期待しています。

宮本:ツールのコンセプトは「自走できる組織づくりのためのノウハウと機能を提供する」です。誰でも使いやすいように、UI(ユーザーインターフェース)などもさらに改善していきたいと考えています。当社の知見やノウハウを動画やスライドなどのコンテンツにして、「Leadplus One」の中で学べる環境を用意し、学んだ後に「Leadplus One」の機能で実践するというストーリーも提供していきます。

「自走できる組織づくり」を支援する「Leadplus One」

「Leadplus One」GA4のサマリー画面

利便性の高いツールの導入が進まない背景

――こうしたマーケティングツールの進化が進んでいますが、導入する側の企業にはどのような課題がありますか。

木田:大企業であっても、人材や体制を整えてデジタルマーケティングやWeb運営を適切に実行できている企業は、経験上そこまで多くはないのが現状です。その背景には、大企業特有の「関係部署が多く合意形成に時間がかかる」といった「意思決定の課題」があります。ツール導入では費用対効果が重視されますが、デジタルマーケティングはすぐに成果が出るものではなく、見込みが不透明な段階ではコストを試算することも難しいため、導入が進みにくいのが現実だからです。現在多くの企業で進められているAI活用についても同様のことがいえます。

木田浩理




積水ハウスイノベーション&コミュニケーション CMO(Chief Marketing Officer)

兼CDDO(Chief Data and Digital Officer) 
木田浩理 氏

大手通信キャリア、ITサービスベンダー、ECプラットフォーマー、老舗百貨店、通販企業などを経て、大手代理店系損害保険会社 CMO。2025年より現職。主な著書に『データ分析人材になる。目指すは「ビジネストランスレーター」』(日経BP)、『ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術』(日経BP)。

いま「Leadplus One」のデモを見せてもらいましたが、分析などのリテラシーが高くない人にもわかりやすい工夫がなされ、優しいツールだと思いました。こうした便利なツールをもっと活用すればいいのに、と思うことは少なくありません。

従来ノウハウの陳腐化で求められる知見とは

:旧来のコンテンツマーケティングの1つとして、SEOに関する一定の知識やノウハウを必要としてきましたが、これからは、ChatGPTなどの生成AIの出現によりコンテンツ制作のプロセスが大きく変化しています。また、検索行動やSEOの本質においても変革が起きており、従来のノウハウは陳腐化してしまいます。

これから求められるマーケターとは、複数のツールを使いこなすオールラウンドな知見を持ち、それらを戦略や戦術につなげられる人です。すべてを生成AIに任せるのではなく、人間が何を担うべきかを考える必要があります。

木田:私自身、若手にもよく伝えているのですが、AIでできることが増える中で、自ら判断することがますます重要になります。データ分析は誰でもできる時代になり、午前中に問題点を洗い出し、午後には実行に移すといった高速PDCAサイクルを回すことも可能です。だからこそ、失敗してもよいので「スピード感を持って取り組むことを許容する組織づくり」が必要だと思いますし、それこそが若手育成にも直結します。

:とはいえ、成功事例がなければ人は動きません。そのため、小さなことでも構わないので成功事例を積み重ねていくことが大切です。このツールをきっかけに、私たち自身も変わっていかなければならないと考えています。

課題解決に必要な「問いを定義する能力」

:「Leadplus One」を中核に内製化支援なども行う際、まずはデータを可視化し、それを見ながらコミュニケーションを図っています。重要なのは「顧客と一緒に課題を克服すること」であり、そのためにデータの可視化が必要なのです。

木田:顧客自身が本質的に解決すべき課題を理解できていないケースは非常に多いですよね。浅い部分のKPIばかりを追っていることが多く、特にデータやAIは表層的な部分に目が向きがちです。しかし、解決には本質を掘り下げることが欠かせません。

特に「問いを定義する力」が重要だと思います。現場で働く人は、課題を経営課題へと翻訳する能力が不足しています。そのため、現場視点だけにとどまり、レポーティングができず、本質的な解決につながらずに「ページビュー数やクリック率のような表層的なKPI」といった短絡的な話になりがちです。

正しい問いを立てる力が不足しているために、「そのツールで何をしたいのか」を明確に答えられず、「ツールを使いたいから使う」といった本末転倒のケースも見られます。データの見方といった基礎力に加えて、「マーケティングの視点」「経営戦略の視点」という3つの要素が欠かせません。

デジタルマーケティングといえども、結局は「人がどういうメカニズムで動くのか」を考慮しなければならないのです。

AI時代に必要なマーケターのスキル

――これからのマーケターはどのようなスキルを身に着けるべきでしょうか。

:クリエイティブやコピーを制作する際、AIは感覚的に82〜83点ほどの成果物を出してくれます。しかし、お客さまに提供するには95点ほどの完成度が必要で、そのギャップを埋める能力が広告代理店にも求められるでしょう。

木田:意外とAIだけで価値を生み出すのは難しいものです。AIは強力なツールですが、その価値はあくまで過去のデータを学習して導き出したものにとどまります。だからこそ、人間の創造性や戦略的な視点が加わって初めて本当の価値につながるのです。

:実務をオールラウンドに理解し、かつ「経営目線」を持っていることが最も重要です。そうした人材を育成していく必要があります。また、管理職に求められるスキルも変化しています。特にAIが出力する数値データを「意味変換」する力が重要です。「CPCが上がった・下がった」といった数字の動きを、「ナラティブな言葉」に置き換えられる力が今のマーケターには不足していると感じます。

「Leadplus One」では、こうした課題に対応していきたいです。生成AIが強力になり、自前で対応できることも増える中で、ノウハウを言語化するプラットフォームにしたいと考えています。

今後は課題をより具体化し、私たちの強みとマッチしたサービスを提供できるよう、すでに存在する様々なマーケティングツールとの連携も図ることで機能を強化していく予定です。全方位的に広げるのではなく、顧客の課題解決に必要な複合サービスの「コア」となる存在を目指しています。

AI時代に必要なマーケターのスキル

「Leadplus One」の自動アドバイス機能。目標を達成するためにどのチャネルやページへの流入を強化すればよいのか、など具体的な改善点を提案する。

データと現場のビジネスを有機的につなぐ

木田:当社のサイトもこれからリニューアルしていきたいと考えています。若い世代を中心に運営を任せようと計画していますが、個人的にはその際このツールの導入を検討したいですね。とてもシンプルにまとまっている点が魅力です。

:ぜひご活用いただき、ご意見をいただけるとありがたいです。

宮本:他社とのデータ比較や、施策の内容をメモし、比較したい期間を設定していただければ、その期間を過ぎたときに自動でレポートを生成する機能も自走支援として非常に役立つと思います。

宮本裕志




リードプラス

執行役員エンジニアリング部 部長
宮本裕志

 

Google広告・Yahoo!広告の運用、Googleアナリティクスによる分析、Looker Studioによるダッシュボード構築などを経験。現在は自社開発レポーティングツールや社内業務効率化ツールの開発部門のマネジメント職。WACA認定講師 ウェブ解析士マスター、Googleアナリティクス個人認定資格(GAIQ)。共著に『Googleデータポータルによるレポート作成の教科書』(マイナビ出版)。

木田:私自身、データと現場のビジネスをつなぐことをライフワークとしてきました。DXブームが起きた2018年当時、データサイエンティストとして分析の世界に閉じこもる人が多く、ビジネス価値につなげられるのか疑問に思っていました。

昨今のAIについても、同じ過ちを繰り返さないように「言語化し、本質的な意味を問う」ことの大切さを、今の会社でも発信し続けています。

:「Leadplus One」を様々な方に使っていただき、ご意見を伺いながら、トライアンドエラーを繰り返していきたいと思います。

<お問い合わせ>
リードプラス株式会社
URL:https://www.leadplus.co.jp/
E-mail:pr@leadplus.co.jp
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