カスタマージャーニーマップの具体例10選!スタバや無印良品に学ぶマーケティング戦略

カスタマージャーニーマップの作成にあたり、自社の商材に合う具体例が見つからず、顧客の行動や感情の整理で手が止まってしまうケースは少なくありません。

この記事で分かること

  • 消費者向けおよび法人向け商材における10個の具体例
  • ペルソナ設定から施策立案までの5つの作成ステップ
  • データに基づき他部署と連携して運用するコツ

有効なカスタマージャーニーマップの例に共通するのは、企業側の願望を排除し、客観的なデータから顧客のタッチポイントと課題を特定している点です。業界別の実例から購買フェーズごとの心理変容とアプローチ手法を把握することで、自社のマーケティング施策の優先順位が明確になり、成約率やリピート率を高める具体的な道筋を描けるようになります。

カスタマージャーニーマップの基本と作成の目的

カスタマージャーニーマップの基本と作成の目的

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・契約し、さらに継続利用や再購入に至るまでの一連の体験を時系列で整理した図表です。企業が自社都合の押し売りから脱却し、顧客視点に立ったマーケティング施策を立案・実行するために作成されます。

個人の情報収集手段が多様化した現在では、単発の広告配信や画一的な営業アプローチだけで成果を上げることは困難です。顧客がどの段階で何を求め、どのような疑問を抱いているのかを把握することで、適切なタイミングでの情報提供が可能になります。

顧客の行動や感情・思考を可視化するフレームワーク

カスタマージャーニーマップの最大の特徴は、ターゲットとなる顧客像であるペルソナの行動だけでなく、その裏にある思考や感情の起伏までを1枚のシートに可視化する点にあります。顧客が購入に至るまでの心理的な障壁(ペインポイント)を特定できれば、離脱を防ぐための具体的な対策を打てるようになるからです。

マップを作成する際は、横軸に「認知」「情報収集」「比較検討」「購入・契約」「継続・共有」といった購買フェーズを置き、縦軸に顧客の行動や心理状態、企業との接点(タッチポイント)を配置してマトリクス形式で整理します。縦軸に設ける主な構成要素は、下表のとおりです。

構成要素 定義と記載する内容 記入例(比較検討フェーズの場合)
行動 顧客が各フェーズで実際にとる具体的なアクション 検索エンジンで他社製品との比較記事を読む、資料請求を行う
タッチポイント 顧客と企業・ブランドが接触する媒体や場所 比較サイト、自社のランディングページ(LP)、ホワイトペーパー
思考 行動の背景にある疑問、関心事、判断基準 「自社でも使いこなせるか」「初期費用と月額料金のバランスは妥当か」
感情 行動や思考に伴うポジティブ・ネガティブな心理状態 機能が多くて魅力的だが、導入作業が複雑そうで不安
課題・施策 顧客が抱える障壁と、それを解消するために企業が行うべきアプローチ 導入支援サポートの案内をLPに明記し、無料相談会へ誘導する

このように顧客の頭の中と行動の軌跡をセットで整理することで、Web解析ツールの数値データだけでは見えてこない「なぜそのページで離脱したのか」「なぜカートに入れたまま購入しなかったのか」という定性的な原因を推測しやすくなります。

マーケティング戦略において重要視される理由

マーケティング戦略においてカスタマージャーニーマップが重要視される理由は、複雑化した顧客接点を統合し、部署間で一貫性のある顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)を提供するための共通言語になるからです。BtoCやBtoBを問わず、現代の顧客は購入前に複数のチャネルを横断して情報を集めるため、部分最適の施策では競合他社に顧客を奪われてしまいます。

実際に顧客は、SNSの口コミ、検索エンジンでの比較記事、動画プラットフォーム、実店舗やオンラインセミナーなど、オンラインとオフラインを行き来しながら購買の意思決定を下します。企業側がマーケティング部門、インサイドセールス(内勤営業)部門、カスタマーサポート部門などで分断されていると、顧客に対して重複した案内を送ったり、フェーズに合わない強引な売り込みを行ったりする原因になります。カスタマージャーニーマップを導入することで、組織全体で以下のようなメリットを得られます。

  • 施策の目的と優先順位の明確化:顧客がつまずいているボトルネックが可視化されるため、SEO(検索エンジン最適化)記事の作成、Web広告の配信、LPの改善など、どの施策に予算と工数を投下すべきか判断しやすくなります。
  • チーム・他部署間での認識統一:顧客像と体験の全体像を共有することで、広告運用担当者から営業担当者、開発部門までが同じゴールに向かって連携できるようになります。
  • KPI(重要業績評価指標)の適切な設定:各フェーズにおける顧客のゴールが明確になるため、GA4(Google アナリティクス 4)などの解析ツールを用いた効果測定の指標を論理的に設計できます。

このように、カスタマージャーニーマップは単なる現状整理の図表ではなく、顧客のLTV(顧客生涯価値:1人の顧客が取引期間全体で企業にもたらす利益)を最大化するための戦略設計図として機能します。

【BtoC編】有名企業に学ぶカスタマージャーニーマップの例6選

【BtoC編】有名企業に学ぶカスタマージャーニーマップの例6選

BtoC(企業対個人)領域のカスタマージャーニーマップでは、オンラインと実店舗の接点を統合し、購入前後の離脱要因を先回りして解消する設計が重要です。消費者はスマートフォンの普及により、SNSや検索エンジン、店舗を行き来しながら購買行動をとるため、単一のチャネルだけでは顧客の心理変化を追いきれません。

国内の有名企業6社が展開しているマーケティング施策から逆算し、各社がどのような顧客体験を設計しているのかを具体例として解説します。

スターバックス|店舗体験とアプリ連携によるファン化の例

スターバックスの事例では、実店舗での快適な購買体験と公式アプリの機能を連動させ、日常的な来店習慣とファン化を促進する設計が特徴です。朝の通勤前や休憩時など、限られた時間で利用する顧客にとって「レジの待ち時間」は最大の離脱要因(ペインポイント)となります。

この課題を解決するため、モバイルオーダー&ペイ(事前注文・決済機能)やリワードプログラム(ポイント制度)をジャーニー上の重要なタッチポイント(顧客接点)として配置しています。都内で働く20代〜30代の会社員をペルソナ(象徴的な顧客像)とした場合のカスタマージャーニーマップは、下表のとおりです。

フェーズ 認知・興味 情報収集・比較 来店・購入 継続・ファン化
顧客の行動 SNSで季節限定メニューの投稿を見る 公式アプリで最寄り店舗の在庫と混雑状況を確認する 通勤途中にモバイルオーダーで注文し、店舗で商品を受け取る アプリでスター(ポイント)を貯め、カスタマイズを試す
タッチポイント SNS(Instagram・X)、店頭の看板 公式アプリ、Webサイト モバイルオーダー画面、店舗の受取カウンター 公式アプリ、メールマガジン、店舗スタッフの接客
思考・感情 「新作のフラペチーノが美味しそう。仕事帰りに飲みたい」 「朝の店舗は混んでいそう。レジに並ぶ時間はない」 「並ばずにすぐ受け取れて快適。朝から気分が上がる」 「ポイントが貯まったから、次は特典を使ってサイズアップしよう」
課題(ペイン) 新作の発売日や販売期間を忘れてしまう 店舗の混雑による購入の断念 受取時の商品の取り違えや待ち時間の発生 定番メニューに対する飽き、他社コンビニコーヒーへの流出
企業の施策 発売前のティザー告知、アプリでのプッシュ通知配信 モバイルオーダーの導入と受取予測時間のリアルタイム表示 専用受取レーンの設置とニックネーム呼び出しによる特別感の演出 購買履歴に応じたパーソナライズ通知、会員限定先行販売の実施

無印良品|O2O戦略でオンラインと実店舗を融合させた例

無印良品のカスタマージャーニーマップは、O2O(Online to Offline:オンラインから実店舗への送客)戦略を軸に、アプリを起点として店舗での購買率を高める構造となっています。生活雑貨や衣料品、食品まで幅広い商材を扱う同社では、「店舗に行ったが目当ての商品が売り切れていた」「店内が広くて探せない」という顧客の不満を解消することが購買転換のカギを握ります。

独自アプリの「MUJI passport」を活用し、来店前の在庫確認から来店時のチェックイン、購入後のレビュー投稿までを一貫してサポートする仕組みを構築しています。具体的なフェーズごとの設計は、下表のとおりです。

フェーズ 認知・興味 情報収集・検討 来店・購入 リピート・共有
顧客の行動 SNSやまとめサイトで収納用品の活用術を見る アプリで商品のサイズや口コミ、近隣店舗の在庫を調べる 店舗へ足を運び、実物の質感やサイズを確認して購入する 自宅で収納を整え、アプリ上で商品のレビューを投稿する
タッチポイント SNS、ブログ、Webメディア 公式アプリ(MUJI passport)、ECサイト 実店舗、アプリの会員証画面、セルフレジ 公式アプリのレビュー機能、SNS
思考・感情 「部屋の片付けに便利そう。自分の部屋にも合うか知りたい」 「買いに行って在庫がなかったら嫌だ。事前に調べておこう」 「在庫があってよかった。マイルも貯まるからアプリを見せよう」 「部屋がすっきりした。同じ悩みを持つ人に使い心地を教えたい」
課題(ペイン) 自宅のスペースに収まるかイメージしにくい 店舗ごとの在庫状況や店内の売り場位置が分からない まとめ買いした際の持ち帰りの負担、レジの混雑 次回購入までの期間が空くことによるアプリの休眠化
企業の施策 スタッフによるコーディネートや収納実例のコンテンツ配信 アプリ内でのリアルタイム在庫表示と店舗受け取りサービスの提供 来店チェックインによるマイル付与、一定金額以上の配送無料キャンペーン レビュー投稿によるマイル付与、定期的な無印良品週間の開催通知

ユニクロ|タッチポイントを最適化し購買ハードルを下げた例

ユニクロの事例では、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)を推進し、試着やサイズ選びに伴う購買ハードルを徹底的に排除する設計がとられています。アパレル商材の購入において、顧客が最も躊躇する要因は「自分に合うサイズが分からない」「店舗で試着した後に欲しい色が欠品している」という点です。

ユニクロは実店舗の在庫とECサイトの在庫をデータ上で連携させ、どのタッチポイントからでも希望のサイズや裾上げ加工を手配できるジャーニーを描いています。顧客の行動プロセスと施策の詳細は、下表のとおりです。

フェーズ 認知・興味 比較・検討 購入・決済 受け取り・利用
顧客の行動 Web広告やデジタルチラシで週末の限定価格商品を知る 店舗で試着するか、アプリの体型診断機能で適正サイズを測る 店舗のセルフレジ、またはECサイトで決済を完了する 自宅配送、または指定した最寄り店舗で商品を受け取る
タッチポイント LINE公式アカウント、折込チラシ、Web広告 実店舗の試着室、公式アプリ(MySize ASSIST) ICタグ(RFID)対応セルフレジ、オンラインストア 店舗の受取りカウンター、宅配便
思考・感情 「季節の変わり目で着る服がない。安くなっているなら見に行こう」 「店舗で試着したけれど、欲しい色のLサイズだけ棚にない」 「レジが混んでおらず、カゴを置くだけで一瞬で会計が終わって驚いた」 「送料をかけずに会社の近くの店舗で受け取れて便利」
課題(ペイン) チラシの情報が多すぎて、自分に必要な商品を見落とす 店頭でのサイズ欠品、EC購入時のサイズ不一致への不安 週末の店舗における会計待ちの長蛇の列 EC購入時の送料負担、不在時の再配達の手間
企業の施策 購買履歴に基づいたLINEのセグメント配信、ライブコマースの実施 店頭商品のバーコード読み取りによるEC在庫確認、AIサイズ推奨機能の提供 RFIDを活用した一括読み取りセルフレジの導入 1点からでも送料無料となる「ユニクロ店舗受取り」の拡充

ニトリ|新生活のペルソナに寄り添う課題解決型の例

ニトリのカスタマージャーニーマップは、進学や就職、転勤に伴う「新生活の準備」という明確なライフイベントの課題を解決するプロセスとして設計されています。引越しを控えたペルソナは、家具や家電、日用品を短期間で大量に揃える必要があり、「何から買えばいいか分からない」「予算内で部屋の統一感を出せるか不安」という特有の悩みを抱えています。

この複雑な検討プロセスを支援するため、ニトリは購買前のシミュレーション機能から購入後の配送・組立設置までを網羅したアプローチを行っています。

  • 認知・情報収集フェーズ:新生活に向けた「必要なものチェックリスト」や、部屋全体のトータルコーディネート事例をWebサイトおよびアプリで公開し、買い忘れの不安を払拭します。
  • 比較・検討フェーズ:「店内モード」を備えたアプリを提供し、顧客が実店舗で気になった家具のバーコードをスキャンすると、サイズ情報がアプリ内のメモに自動保存される機能を実装しています。帰宅後に自宅の採寸データと照らし合わせる際の利便性を高めています。
  • 購入・導入フェーズ:大型家具の持ち帰りや組立に対する負担を軽減するため、手ぶらで買い物ができるアプリ注文機能や、配送時の組立設置サービス、既存家具の引取サービスをタッチポイントに組み込んでいます。

星野リゾート|旅マエから旅アトまで顧客体験をデザインした例

星野リゾートのような旅行・宿泊業界のカスタマージャーニーマップでは、予約前の「旅マエ」から宿泊中の「旅ナカ」、帰宅後の「旅アト」に至る長期的な感情の起伏をデザインすることが不可欠です。宿泊施設は単なる寝食の場所ではなく、移動中や滞在中の体験価値そのものが商品の評価に直結するためです。

記念日や家族旅行で訪れる顧客の期待感を高め、滞在中の不満をゼロにし、帰宅後に次の予約や口コミ拡散へつなげる設計は、下表のとおりです。

フェーズ 旅マエ(認知・予約) 旅マエ(出発前準備) 旅ナカ(滞在・体験) 旅アト(共有・再訪)
顧客の行動 旅行メディアやSNSで宿泊施設のコンセプトや写真を見る 公式サイトで現地の気候、アクセス、アクティビティを調べ予約する 施設にチェックインし、食事や温泉、地域限定の催しを体験する 旅行の写真をSNSに投稿し、別地域の系列施設を検索する
タッチポイント Instagram、旅行比較サイト、公式Webサイト 予約確認メール、公式サイトの滞在モデルコース紹介ページ フロント、客室、レストラン、マルチタスク化したスタッフ サンクスメール、アンケート、SNS公式アカウント
思考・感情 「非日常の空間でゆっくり休みたい。特別な体験ができそう」 「当日は雨が降るかもしれない。施設内で過ごせる予定も組んでおこう」 「スタッフの対応が柔軟で心地よい。地域の文化に触れられて満足」 「最高の思い出になった。次は別の季節や他の地域の施設にも泊まりたい」
課題(ペイン) 宿泊料金に対する価値の妥当性が判断しにくい 現地の交通手段やタイムスケジュールの組み立てに迷う チェックイン時の待ち時間、天候不良による予定のキャンセル 日常に戻った後の記憶の風化、他社リゾートへの目移り
企業の施策 公式サイトでのベストレート保証(最安値保証)とブランド別の明確なコンセプト提示 季節や同行者(子連れ・カップル等)に合わせた滞在スケジュールのWeb提案 客室でのチェックイン対応、天候に左右されない館内アクティビティの充実 宿泊履歴に応じた季節の案内メール配信、系列施設巡りを促す会員施策

資生堂|パーソナライズ提案でLTV向上を実現した例

化粧品業界を牽引する資生堂の事例では、デジタル技術を用いた肌診断と美容部員によるカウンセリングを融合させ、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化する設計が行われています。スキンケアやメイクアップ商品は個人の肌質や季節によって合うものが異なるため、一度の購入で終わらせず、継続的な使用と買い替えを促す仕組みが必要です。

同社は、店舗へ足を運ぶハードルを感じる層にはオンラインでの非接触カウンセリングを提供し、じっくり相談したい層には店舗での精密な肌測定を提供することで、全方位の顧客を取り込んでいます。

  • 認知・興味フェーズ:季節の変わり目の肌トラブル(乾燥や紫外線ダメージなど)に悩む顧客に対し、SNS広告やオウンドメディアの記事を通じてスキンケアの基礎知識を提供します。
  • 情報収集・診断フェーズ:スマートフォンで顔写真を撮影するだけで水分量やハリを分析できるコンテンツを提供し、自分の肌状態を客観的に把握させます。「どの商品を選べばよいか分からない」という初期のペインポイントを解消します。
  • 購入・体験フェーズ:診断結果に基づき、オンラインチャットや実店舗の美容部員が最適な商品を提案します。サンプル配布やトライアルセットの案内を挟むことで、高価格帯商品への購買ハードルを下げます。
  • 継続・LTV向上フェーズ:購入後の使用期間を逆算し、商品がなくなるタイミングでLINEやアプリからリマインド通知を配信します。季節の変化に合わせた再測定を促すことで、他社ブランドへの乗り換えを防ぎます。

インバウンドマーケティング完全ガイド

【BtoB・無形商材編】業界別のカスタマージャーニーマップの例4選

【BtoB・無形商材編】業界別のカスタマージャーニーマップの例4選

BtoB領域や無形商材、高単価商材におけるカスタマージャーニーマップは、初回接触から最終的な成約・継続利用に至るまでの長期的な検討プロセスを可視化し、各フェーズで生じる懸念を解消する設計が不可欠です。一般消費者向けのBtoC商材と比較して、BtoBでは現場担当者や決裁者など複数の関係者が購買プロセスに関与するほか、無形商材では導入前の品質評価が難しく、検討期間が長期化する傾向があるためです。

ここでは、SaaS、人材紹介、不動産、ECサイトの4つの業界における具体的なカスタマージャーニーマップの例を下表のとおり整理して解説します。

SaaS企業|無料トライアルから本契約へ導くインサイドセールスの例

SaaS(クラウド経由で提供されるソフトウェア)企業では、無料トライアル期間中の利用状況を追跡し、インサイドセールス(内勤型営業)が適切なタイミングで介入して本契約へ引き上げるジャーニー設計が有効です。見込み顧客(リード)がトライアルを申し込んでも、初期設定や操作方法でつまずいて放置されると、有料プランへの転換率(コンバージョン率)が大きく低下するためです。

総務省が公表している令和6年版 情報通信白書(クラウドサービスの利用状況)によると、日本国内でクラウドサービスを利用している企業の割合は約8割に達していますが、導入時の初期設定や既存システムとの連携に課題を感じる企業も少なくありません。業務効率化ツールを探している中堅企業の情報システム部門担当者をペルソナとしたカスタマージャーニーマップは、下表のとおりです。

フェーズ 認知・情報収集 比較検討 無料トライアル 導入稟議・本契約
タッチポイント 検索エンジン(SEO記事)、Web広告、IT製品比較サイト サービス公式サイト、ホワイトペーパー(お役立ち資料)、オンラインセミナー トライアル環境、ステップメール、インサイドセールスからの架電・Web会議 フィールドセールス(外勤型営業)との商談、導入事例集、料金シミュレーター
顧客の行動 業務課題をキーワードに検索し、解決策となるツール群を把握する 複数社の機能一覧や料金表をダウンロードし、比較表を作成する アカウントを発行し、テストデータを入力して基本機能を試用する 費用対効果(ROI)を算出し、上長や経営陣へ稟議書を提出する
思考・感情 「手作業が多くて残業が減らない。自動化できるシステムはないか」 「機能が似ていて違いが分からない。自社の業務フローに合うのはどれか」 「初期設定が複雑で時間がかかる。通常業務が忙しく試す時間がない」 「現場は使えそうだが、導入コストについて決裁者の承認が下りるか不安」
課題(ペインポイント) 自社に適したツール選定の基準が分からない 競合他社との明確な差別化ポイントが見えない 操作方法の疑問が解消されず、ログイン頻度が低下する 社内説得用の定量的な根拠データが不足している
マーケティング・営業施策 課題解決型のSEO記事公開、比較サイトへの掲載強化 業種別活用事例の送付、機能比較表の提供 管理画面の操作ログに基づく架電フォロー、初期設定支援のオンライン面談実施 稟議用テンプレートや投資回収期間試算シートの提供、決裁者同席商談の打診

この事例では、MA(マーケティングオートメーション:マーケティング施策を自動化するツール)やSFA(営業支援システム)を連携させ、トライアル開始後3日以内に特定機能の利用がない担当者を自動検知します。インサイドセールスが画面共有を伴うオンボーディング(定着化支援)面談を打診することで、放置による離脱を防ぎ、商談化率を高めています。

人材紹介|求職者の不安を解消し応募率を高めた例

人材紹介サービスでは、求職者が会員登録してから実際に応募・面接に至るまでの心理的ハードルを段階的に取り除くカスタマージャーニーマップの構築が成果に直結します。転職活動はキャリアや収入に直結する重大な意思決定であり、求職者は「自分の市場価値が分からない」「希望条件に合う企業があるか不安」といった強い懸念を抱えているためです。

初めての転職を検討している20代後半の営業職をペルソナとしたカスタマージャーニーマップは、下表のとおりです。

フェーズ 潜在・興味関心 会員登録・面談予約 初回キャリア面談 求人応募・選考対策
タッチポイント SNS広告、転職ノウハウ系オウンドメディア、口コミサイト ランディングページ(LP)、登録フォーム、LINE公式アカウント Web会議システム、キャリアアドバイザー、マイページ 求人提案メール、専用アプリ、模擬面接サポート
顧客の行動 同世代の年収相場や転職成功体験記をスマートフォンで閲覧する 基本情報と職務経歴の概略を入力し、面談日程を予約する アドバイザーに現職の不満や今後のキャリアの希望を相談する 提案された求人票を確認し、履歴書・職務経歴書を添削してもらう
思考・感情 「今の会社に将来性を感じないが、転職できるほどのスキルがあるか不安」 「入力項目が多くて面倒。登録後にしつこく電話がかかってこないか心配」 「まだ転職すると決めたわけではないのに、無理に応募を迫られないだろうか」 「興味のある求人はあるが、書類選考に通るか、面接でうまく話せるか自信がない」
課題(ペインポイント) 自身の強みや市場価値が客観的に把握できていない フォーム入力の負担による途中離脱、面談前のキャンセル発生 アドバイザーに対する警戒心から本音の希望条件を引き出せない 応募書類の作成停滞による選考プロセスの長期化・離脱
マーケティング・営業施策 職種別スキル診断コンテンツの提供、SNSでのキャリア相談配信 チャットボット形式のEFO(入力フォーム最適化)導入、連絡手段のLINE選択制 事前アンケートによる課題把握、情報収集目的の面談も歓迎する旨の明記 職務経歴書の自動生成ツールの提供、企業別の面接質問集と個別対策の実施

求職者の離脱が最も発生しやすい「会員登録から初回面談の着席」および「面談後の書類作成」のフェーズにおいて、負担を軽減するシステム支援とアドバイザーによる伴走支援を組み合わせることで、応募完了までの歩留まりを改善できます。

不動産|長期検討商材における情報提供とナーチャリングの例

不動産の購入や注文住宅の建築といった高単価商材では、数か月から数年におよぶ検討期間中に継続的な接点を維持し、購買意欲を育成(ナーチャリング)するジャーニー設計が求められます。顧客は物件情報だけでなく、住宅ローン、税制、周辺環境など多岐にわたる知識を段階的に必要とし、情報収集の途中で検討を一時中断することも珍しくないためです。

第一子の誕生を機にマンション購入を検討し始めた30代夫婦をペルソナとしたカスタマージャーニーマップは、下表のとおりです。

フェーズ 初期検討・情報収集 資料請求・比較 モデルルーム来場 資金計画・購入意思決定
タッチポイント 不動産ポータルサイト、Instagram、住宅情報誌 物件公式サイト、郵送カタログ、メールマガジン モデルルーム(実店舗)、営業担当者、VR内覧システム 個別相談会、ファイナンシャルプランナー(FP)、契約書類
顧客の行動 希望エリアの相場や間取りのトレンドを検索する 気になる複数物件の資料を取り寄せ、立地や設備を見比べる 休日に家族でモデルルームを訪問し、実際の広さや動線を確認する 住宅ローンの事前審査を受け、月々の返済額と管理費を計算する
思考・感情 「賃貸が手狭になってきた。買うならどのエリアが子育てしやすいか」 「パンフレットだけでは日当たりや周辺の雰囲気が分からない」 「設備は魅力的だが、強引な営業をされたら断りにくい」 「35年ローンを無理なく返済し続けられるか、教育費と両立できるか不安」
課題(ペインポイント) 予算上限や購入時期が曖昧で具体的な物件を絞り込めない 資料請求後に検討が停滞し、来場予約へ進まない 来場への心理的ハードル、夫婦間での優先順位の不一致 将来的な家計収支に対する金銭的不安の増大
マーケティング・営業施策 エリア別住環境ガイドや購入スケジュール解説記事の配信 周辺環境の紹介動画やオンライン見学会の案内をステップメールで配信 接客不要のフリー見学デーの設定、キッズスペース完備の周知 外部FPによる無料ライフプランシミュレーションの実施、諸費用明細の提示

資料請求から来場までの期間が空く顧客に対しては、Webサイトの閲覧履歴(アクセスログ)をGA4(Google アナリティクス 4)やMAツールで解析します。資金計画のページを頻繁に閲覧している顧客には住宅ローンセミナーの案内を送付するなど、検討度合いに応じた情報提供を行うことで、再検討のタイミングを逃さず来場へとつなげます。

ECサイト|カゴ落ちを防ぎリピート購入を促進する例

ECサイト(ネット通販)の運営では、新規顧客が商品をカートに入れたまま離脱する「カゴ落ち」の防止と、初回購入後の2回目購入(F2転換)を促すLTV(顧客生涯価値)向上のジャーニー設計が重要です。EC市場では競合店舗への乗り換えが容易であり、広告費をかけて新規顧客を獲得しても、単発の購入で終わると利益を確保しにくいためです。

肌質の変化を感じ、新しい基礎化粧品を探している30代女性をペルソナとしたD2C(自社企画・製造商品の直販)スキンケアECサイトのカスタマージャーニーマップは、下表のとおりです。

フェーズ 認知・商品ページ訪問 カート投入・決済 商品到着・初回利用 継続検討・リピート購入
タッチポイント SNSのショート動画広告、インフルエンサーの投稿、検索エンジン 商品詳細ページ(LP)、ショッピングカート、決済画面 配送パッケージ、同梱物(パンフレット)、フォローメール LINE公式アカウント、マイページ、CRM(顧客関係管理)配信メール
顧客の行動 広告からLPへ遷移し、配合成分や利用者のレビューを確認する トライアルセットをカートに入れ、配送先や決済方法を選択する 商品を開封し、同封のガイドを見ながら実際に使用してみる 使い切るタイミングで本商品の定期コースまたは単品を再注文する
思考・感情 「口コミの評価は高いけれど、自分の肌に合うか試してみたい」 「送料が別途かかるのか。会員登録やクレジットカード番号の入力が面倒」 「いつ、どのくらいの量を使えば最も効果的なのか知りたい」 「使い心地は良かったが、定期縛りがあると解約しづらそうで迷う」
課題(ペインポイント) 使用感や肌トラブルへの懸念から購入に踏み切れない 追加費用(送料・手数料)の発覚や決済手順の煩雑さによるカゴ落ち 誤った使用方法による効果実感の低下、使用習慣の未定着 定期購入への心理的抵抗感、他社製品への目移り
マーケティング・営業施策 全額返金保証の明記、肌質別の購入者レビュー掲載 送料無料ラインの事前明示、Amazon Payやスマホ決済などのID決済導入、カゴ落ちリマインド配信 正しい使用量をわかりやすく図解した同梱チラシの封入、到着3日後の使い方動画メール配信 マイページからワンタップで周期変更・休止が可能な仕様の周知、期間限定の本商品割引クーポン付与

この事例のポイントは、決済完了をゴールとせず、商品到着後の「利用体験」から「再購入」までのフェーズを詳細に設計している点です。カゴ落ちに対しては離脱から数時間後にリマインド通知を送って回収率を高め、購入後は使い切り予測日の7日前にLINEでクーポンを届けるなど、顧客の行動タイミングに先回りしたアプローチを実行します。

成功例から紐解くカスタマージャーニーマップの作り方5ステップ

成功例から紐解くカスタマージャーニーマップの作り方5ステップ

実務で機能するカスタマージャーニーマップは、目的の明確化から施策・KPI設定までの5段階のプロセスに沿って作成します。事前の設定を曖昧にしたままフレームワークの枠埋めから始めると、各段階の整合性が崩れ、具体的なアクションに結びつかないためです。BtoCやBtoBの成功例に共通する作成手順は、下表のとおりです。

ステップ 実施内容 主なアウトプット
ステップ1 目的の明確化と精緻なペルソナ設定 マップのゴール、具体的な人物像シート
ステップ2 フェーズとタッチポイントの洗い出し マップの横軸(段階)と縦軸(接点)の枠組み
ステップ3 顧客の行動・思考・感情のマッピング 時系列の行動履歴と感情曲線
ステップ4 課題(ペインポイント)の抽出 離脱要因や不満が生じているボトルネックの特定
ステップ5 具体的なマーケティング施策の立案とKPI設定 改善アクションプランと効果測定指標

ステップ1 目的の明確化と精緻なペルソナ設定

最初のステップでは、カスタマージャーニーマップを作成する目的を定義し、対象となるペルソナ(商品やサービスを利用する典型的な顧客像)を1人の人物として具体的に設定します。目的とペルソナが曖昧な状態では顧客の行動予測にブレが生じ、実効性のある施策を導き出せないからです。

目的は「ECサイトの初回購入率の改善」や「無料トライアルから本契約への引き上げ」など、解決したい事業課題に直結させます。そのうえで、BtoCとBtoBの特性に合わせてペルソナの項目を定義します。設定すべき主な項目は、下表のとおりです。

対象領域 設定すべき主な項目 設定の具体例
BtoC 年齢、性別、居住地、職業、年収、家族構成、休日の過ごし方、情報収集ツール、価値観 都内在住の30代共働き女性。時短家電に関心があり、通勤中にInstagramの口コミで情報収集を行う。
BtoB 業種、従業員規模、部署、役職、決裁権の有無、日常業務の課題、評価指標(ミッション) 従業員100名規模のIT企業の人事部長。採用業務の工数削減がミッションで、システム導入の一次決裁権を持つ。

ステップ2 フェーズ(段階)とタッチポイントの洗い出し

ステップ2では、ペルソナが商品を認知してから購入・継続利用に至るまでのフェーズ(段階)を横軸に、顧客と企業が接するタッチポイント(顧客接点)を縦軸に配置してマップの骨格を作ります。商材の価格帯や検討期間の長短によって、顧客がたどる意思決定のプロセスや利用する情報チャネルが大きく異なるためです。

一般的なBtoC商材では「認知→興味・関心→情報収集→比較・検討→購入→継続・共有」といったフェーズを設定します。一方、検討期間が長期化するBtoB商材や高額な不動産などでは、「課題の発見→情報収集→社内稟議・比較→導入・契約→オンボーディング(定着支援)」のように、組織的な意思決定プロセスを組み込みます。

フェーズを決めたら、各段階でペルソナが接触するタッチポイントをオンライン・オフラインの両面から洗い出します。

  • オンラインのタッチポイント:検索エンジン(SEO・リスティング広告)、SNS(Instagram、X、YouTubeなど)、比較サイト、公式Webサイト、LP(ランディングページ:検索結果や広告から訪問者が最初に遷移する縦長のWebページ)、メールマガジン、公式アプリ
  • オフラインのタッチポイント:実店舗、展示会・セミナー、ダイレクトメール、カタログ、営業担当者との商談、コールセンター

ステップ3 顧客の行動・思考・感情のマッピング

ステップ3では、ステップ2で作成した各フェーズとタッチポイントの交差する枠内に、ペルソナの具体的な「行動」「思考」「感情」を時系列で記入します。行動の背景にある心理状態や感情の起伏を可視化することで、顧客が次の段階へ進む際の推進力や障壁が明確になるためです。

この作業では、Googleアナリティクス(GA4:Webサイトやアプリのアクセス状況を分析するツール)の行動データ、サーチコンソールの検索キーワード履歴、顧客アンケート、営業日報などの客観的データを参照します。記入する各要素の定義は、以下のとおりです。

  • 行動:ペルソナが実際に起こすアクション(例:「○○ 比較」と検索する、資料請求フォームに入力する、店舗で実物を手に取る)
  • 思考:行動の裏にある疑問や考え(例:「他社製品と何が違うのか」「自社の業務フローに組み込めるか」「送料はいくらかかるのか」)
  • 感情:思考に伴う気持ちの動き(例:「解決策が見つかりそうで期待が高まる」「入力項目が多くて面倒だ」「本当に効果があるのか不安になる」)

感情の項目には、ポジティブ・ネガティブの度合いを線の高低で表す「感情曲線」を併記すると、顧客体験の質が落ち込む箇所を一目で把握できます。

ステップ4 課題(ペインポイント)の抽出

ステップ4では、マッピングした思考や感情曲線をもとに、顧客がストレスや不安を抱えている課題(ペインポイント)を抽出します。感情曲線が大きく下がっている箇所は、顧客が検討を諦めて離脱するボトルネックになっている可能性が高いためです。

ペインポイントを抽出する際は、表面的な行動だけでなく「なぜその感情に至ったのか」という原因を掘り下げます。たとえば、ECサイトの購入フェーズで「決済画面で離脱する」という行動が見られた場合、「送料や手数料が最終確認画面まで分からず不信感を抱いた」「希望する決済手段がなかった」といった顧客視点の課題を特定します。

同様に、BtoBの比較・検討フェーズで「資料請求後に商談へ進まない」という事象があれば、「機能一覧だけでは自社の課題を解決できるイメージが湧かない」「社内稟議を通すための費用対効果の根拠が不足している」といったペインポイントを洗い出します。

ステップ5 具体的なマーケティング施策の立案とKPI設定

最終ステップでは、抽出したペインポイントを解消するための具体的なマーケティング施策を立案し、その達成度を測るKPI(重要業績評価指標:最終目標の達成度合いを計測するための中間指標)を設定します。課題に対する解決策と定量的な評価指標をセットで定義することで、施策の優先順位付けと実行後の改善サイクルが機能するようになります。

前段で特定した各フェーズの課題に対し、SEOコンテンツの拡充、LPの改修、MA(マーケティングオートメーション:顧客の属性や行動履歴に応じて情報配信などを自動化するツール)を用いたステップメール配信、インサイドセールス(電話やメールなど非対面で行う内勤営業)の架電など、具体的な手段を割り当てます。フェーズごとの課題に対する施策とKPIの設定例は、下表のとおりです。

フェーズ 抽出された課題(ペインポイント) 具体的なマーケティング施策 設定するKPIの例
情報収集 専門用語が多く、自分の課題に合う商品か判断できない 初心者向けの選び方ガイド記事(SEOコンテンツ)の作成、診断チャートの設置 記事の検索順位、オーガニック検索からの流入数、診断完了率
比較・検討 他社製品との違いや導入後の費用対効果が分からず、社内稟議を書けない 他社比較表の公開、同業種の導入事例ホワイトペーパーの配布、料金シミュレーターの設置 ホワイトペーパーのダウンロード数、シミュレーター利用後の商談化率
購入・契約 入力フォームの項目が多すぎて、途中で入力する気力がなくなる EFO(入力フォーム最適化:入力項目の削減やエラー表示の改善)、チャットボットによる離脱防止 フォーム到達から完了までの遷移率、カゴ落ち率の改善幅
継続・共有 購入後の初期設定や使い方が分からず、利用頻度が下がる アプリやLINEでのチュートリアル配信、カスタマーサクセスによるオンボーディング面談 メッセージ開封率、初期設定の完了率、継続率(チャーンレート)

施策とKPIまで一気通貫でマップに落とし込むことで、Webマーケティング部門、営業部門、カスタマーサポート部門など、関わるメンバー全員が「誰に・いつ・何をすべきか」を迷わず実行できるようになります。

カスタマージャーニーマップ作成時の注意点と運用のコツ

カスタマージャーニーマップ作成時の注意点と運用のコツ

カスタマージャーニーマップをマーケティングの成果に結びつけるためには、客観的な事実に基づいて設計し、部署横断のチームで継続的に改善する運用体制を構築することが不可欠です。主観的な推測で作られたマップや、一度作成しただけで放置されたマップは、実際の顧客行動と乖離してしまい、効果的な施策立案には役立ちません。実務で機能させるための具体的な注意点と運用のポイントを解説します。

企業の願望を排除し事実やデータに基づいて作成する

マップを作成する際は、「顧客にこう動いてほしい」という企業側の願望を排除し、実際の行動データや顧客の生の声に基づいてマッピングすることが最も重要です。担当者の思い込みで顧客の感情や行動を定義してしまうと、見当違いなタッチポイント(顧客接点)に予算や工数を投下する原因となります。

たとえば、企業側が「Web広告を見た顧客は、ランディングページ(LP:検索結果や広告から最初に遷移するWebページ)で商品の特徴をじっくり読んでから購入するはずだ」と想定していても、実際にはSNSの口コミや第三者の比較サイトを経由して、LPの価格表だけを見て判断しているケースは珍しくありません。こうした認識のズレを防ぐために、定性データ(数値化できない質的な情報)と定量データ(数値として計測・分析できる情報)の両面から事実を収集する必要があります。

各フェーズの行動や思考を裏付けるために活用すべき主な情報源は、下表のとおりです。

データの種類 具体的な収集手法・ツール カスタマージャーニーマップへの反映内容
定量データ GA4(Google アナリティクス 4:Webサイトやアプリのアクセス解析ツール)、ヒートマップツール(Webページ上でユーザーのマウス移動や熟読箇所を可視化するツール)、購買履歴データ 流入経路、離脱しやすいWebページ、よく閲覧されるコンテンツ、購入に至るまでの平均日数や接触回数
定性データ デプスインタビュー(1対1で深層心理を探る対話調査)、顧客アンケート、カスタマーサポートへの問い合わせ履歴、営業担当者の商談録画・日報 検討時の具体的な悩みや不安、比較検討した他社サービス名、購入の決め手となった言葉、利用後の不満点

既存顧客へのインタビューが難しい場合は、まずカスタマーサポートに寄せられた質問や、営業部門がSFA(営業支援システム:商談の進捗や顧客情報を記録・管理するツール)に蓄積している失注理由を洗い出すことから始めます。事実ベースの情報を取り入れることで、顧客が本当に解決したい課題が明確になり、SEO(検索エンジン最適化)における対策キーワードの選定や、広告クリエイティブの訴求軸の精度が向上します。

他部署を巻き込みチーム全体で共通認識を持つ

カスタマージャーニーマップの作成はマーケティング部門だけで完結させず、営業、インサイドセールス(内勤型営業)、カスタマーサポート、商品開発などの関連部署を巻き込んだワークショップ形式で進めることが成功の鍵となります。顧客は認知から購入、そして利用継続に至るまでの過程で、企業のさまざまな部署と接点を持つためです。

特定の部署だけでマップを作成すると、自部署が管轄するフェーズの解像度ばかりが高くなり、前後のフェーズとのつながりが分断されがちです。複数部署のメンバーが参加することで、各現場が把握している顧客のリアルな反応を持ち寄ることができ、一気通貫した顧客体験を設計できます。

他部署と連携してマップを作成・運用する具体的なメリットは以下の3点です。

  • 顧客理解の多角化:マーケティング部門が持つWeb上の行動データと、営業やサポート部門が持つ直接対話の知見が結合し、ペルソナの思考や感情の推移がより立体的になります。
  • 部門間連携のスムーズ化:たとえばBtoB領域において、「どの状態のリード(見込み客)をインサイドセールスからフィールドセールス(外勤型営業)へ引き継ぐか」といった基準が、顧客の心理状態ベースで合意できるようになります。
  • 施策への納得感と実行力の向上:作成プロセスに自ら関与することで、決定したマーケティング施策や業務改善に対する「やらされ感」がなくなり、現場レベルでの自発的な行動が促されます。

完成したマップは、社内の誰もがいつでも閲覧できるグループウェアやオンラインホワイトボードツール上に保管し、定例会議などで常に立ち返る共通言語として活用します。

作成して終わりにせず定期的にアップデートする

カスタマージャーニーマップは一度完成したら終わりではなく、市場環境の変化や施策の実行結果に合わせて定期的に見直し、アップデートし続けることが必要です。新しいSNSプラットフォームの台頭や競合他社の動向、自社のサービス改修などによって、顧客の情報収集ルートや比較検討の基準は常に変化するためです。

作成したマップが現場の実態と合わなくなったまま放置されると、次第に誰も参照しなくなり形骸化してしまいます。これを防ぐため、あらかじめ見直しのタイミングを業務ルールとして組み込んでおくことが有効です。

マップをアップデートすべき主なタイミングと確認事項は、下表のとおりです。

見直しのタイミング 主な確認事項と修正のポイント
四半期・半期などの定期レビュー時 設定したKPI(重要業績評価指標:目標達成度を測る中間指標)の達成状況を振り返り、想定通りに顧客が次のフェーズへ移行しているかを検証します。ボトルネック(成果を阻害している要因)が解消されていない場合は、感情や課題の仮説を修正します。
新商品の投入やサービス内容の大幅改定時 ターゲットとなるペルソナ像自体が変わっていないかを確認し、新たな訴求ポイントに合わせてタッチポイントや情報提供の順序を再設計します。
市場トレンドや競合環境の急変時 顧客の検索行動の変化(例:検索エンジンから生成AIや動画SNSでの情報収集への移行など)や、競合他社の新たなキャンペーンによる比較基準の変化をマップに反映します。

施策を実行した後は、GA4でのコンバージョン率(Webサイト訪問者のうち目標行動に至った割合)の変化や、MA(マーケティングオートメーション:見込み客の育成や配信を自動化するツール)のスコアリング状況などを確認します。「仮説に基づく施策の実行」「データによる効果検証」「マップの修正」というサイクルを回し続けることで、カスタマージャーニーマップは精度を増し、企業の持続的な売上成長を支える資産となります。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が認知から購入、継続利用に至るまでの行動・思考・感情・タッチポイントを可視化し、課題の優先順位を決めるための設計図です。「自社の商材に合う具体例が見つからず、整理で手が止まってしまう」という悩みの多くは、事例の見た目を真似ようとして、自社の顧客がどこでつまずいているのかをデータから特定できていないことに起因します。

BtoCではスターバックスや無印良品、ユニクロのようにアプリと店舗を連携させて離脱要因を解消する設計、BtoB・無形商材ではSaaSの無料トライアルから本契約への引き上げや、不動産のように長い検討期間をナーチャリングで支える設計が共通していました。自社で作る際は、目的とペルソナの明確化、フェーズとタッチポイントの洗い出し、行動・思考・感情のマッピング、ペインポイントの抽出、施策とKPIの設定という5ステップを踏みます。そのうえで、企業側の願望を排して事実とデータに基づくこと、他部署を巻き込むこと、作って終わりにせず定期的に更新することが運用の鍵です。

しかし、「ペインポイントは見えたが、各フェーズに合わせた記事やホワイトペーパーを継続的に制作する体制がない」「検索流入やLP改善まで手が回らない」「MAツールを導入したものの、検討段階に応じた配信シナリオを運用しきれていない」といった悩みを抱える企業様も少なくありません。

リードプラスでは、ホワイトペーパーや導入事例、SEO記事などのコンテンツ制作、検索エンジンだけでなくAI検索にも対応したSEO/AIO対策、そしてHubSpotをはじめとしたMAツールの導入・運用支援を通じて、マップで描いた顧客体験を実際の施策として形にし、運用改善まで一貫してご支援しています。自社に合ったマップの作り方や施策への落とし込みにお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1.カスタマージャーニーマップは無料で作成できますか?

 作成できます。ExcelやGoogleスプレッドシート、PowerPoint、オンラインホワイトボードツールの無料テンプレートを使えば、費用をかけずに始められます。まずは主要なペルソナ1人分の簡易なマップを作り、必要に応じて共同編集に強いツールへ移行するとよいでしょう。大切なのはツールの高機能さより、データに基づいて顧客の行動と感情を整理することです。 

Q2.BtoB企業でもカスタマージャーニーマップは活用できますか?

 活用できます。BtoBは検討期間が長く、現場担当者や決裁者など複数の関係者が関わるため、むしろ効果を発揮しやすい領域です。課題認識から情報収集、比較検討、社内稟議、導入までのフェーズごとに、担当者と決裁者それぞれの不安や判断材料を整理することで、コンテンツやインサイドセールスのアプローチを最適化できます。 

Q3.作成にはどのくらいの期間がかかりますか?

 データの収集状況や関わるメンバーの人数によりますが、既存データと社内ヒアリングをもとにした仮説ベースであれば、数日から1週間程度で作成できます。顧客インタビューやアンケートなどの調査を行う場合は、1ヶ月から数ヶ月程度かかるのが一般的です。まず暫定版を作り、施策の結果を見ながら精度を高めていく進め方が現実的です。 

Q4.ペルソナは複数設定してもよいですか?

 ターゲット層が明確に異なる場合は複数設定しても構いませんが、1つのマップに混在させないことが重要です。最初は売上への貢献度が最も高い1人のペルソナに絞ってマップを作成し、運用に慣れてから別のペルソナへ広げていく方法をおすすめします。ペルソナごとにマップを分けて管理すると、施策の優先順位も判断しやすくなります。 

Q5.作成したマップはどのくらいの頻度で見直すべきですか?

半年に1回から1年に1回程度を目安に見直します。加えて、新商品の投入やサービスの大幅な改定、ターゲットの変更、競合や市場環境の急な変化があった場合は、定期の時期を待たずに更新しましょう。施策実行後はGA4などでフェーズ間の遷移を確認し、仮説と実態が食い違う部分を中心に修正していくと、形骸化を防げます。

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