カスタマージャーニーマップとは?作成の目的・メリットから国内企業の成功事例、おすすめツールまで網羅

マーケティング施策の成果が出ず、チーム間で顧客像の認識がずれる課題は多くの現場で発生しています。この問題を解決する手法が顧客の購買行動や感情を時系列で可視化するカスタマージャーニーマップです。

この記事で分かること

  • 顧客の行動と感情を可視化するマップの目的と利点
  • ペルソナ設定から改善策抽出までの作成6ステップ
  • 国内の成功事例と作成に役立つツールの選定基準

本記事では、基本概念や作成の6ステップ、ツール選びの基準を整理しました。この記事を読むことで、自社のタッチポイントごとの課題発見とKPIの明確化ができ、顧客目線に立った施策の最適化が可能になります。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入、さらには購入後の利用や再購入に至るまでの一連のプロセス(カスタマージャーニー=顧客の旅)を時系列で図表化したフレームワークです。顧客の行動だけでなく、各段階での思考や感情の起伏、企業との接点(タッチポイント)を俯瞰して整理することで、顧客視点に立ったマーケティング施策の立案や顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の向上を実現できます。

顧客の購買行動や感情を可視化するフレームワーク

カスタマージャーニーマップは、設定した顧客像が購入前後にたどる「行動」「思考・感情」「タッチポイント」を時系列のマトリクスにまとめ、購買プロセスの全体像を可視化する手法です。Googleアナリティクス4(GA4)などのアクセス解析ツールや広告管理画面の数値データだけでは、「なぜ顧客がそのページで離脱したのか」「なぜカートに商品を入れたまま購入しなかったのか」という心理的な背景までは把握できません。行動の裏にある感情や疑問を時系列で整理することで、顧客が抱える本質的な課題を発見できます。

マップは一般的に、横軸に「認知」「情報収集」「比較検討」「購入」「購入後(共有・継続)」といった購買フェーズを置き、縦軸に顧客の行動や感情などの分析項目を配置して作成します。縦軸に設定する主な要素は、以下のとおりです。

  • 行動:検索エンジンでキーワード検索する、SNSの口コミを見る、実店舗で試着する、資料請求フォームに入力するなどの具体的なアクション
  • タッチポイント(接点):自然検索(SEO)、Web広告、SNSアカウント、比較サイト、店舗スタッフ、営業担当者など、顧客と企業・ブランドが接触する場所やチャネル
  • 思考・感情:各行動をとった際に顧客が感じる期待、疑問、不安、不満などの心理状態や、感情の盛り上がり・落ち込みを示す曲線
  • 課題・施策:顧客の不安を解消し、次のフェーズへスムーズに移行してもらうために企業側が解決すべき問題点とアプローチ

BtoCのECサイトであれば「SNS広告で商品を知り、口コミサイトで評判を調べ、公式サイトのLP(ランディングページ)から購入する」といった流れを描きます。一方、BtoBのシステム導入などでは「業界メディアの記事で課題を認識し、ホワイトペーパーをダウンロードして比較検討し、ウェビナー参加や営業担当者との商談を経て稟議にかける」といった複数人が関わる長期的なプロセスを可視化します。

マーケティングでカスタマージャーニーマップが重要視される背景

近年のマーケティングにおいてカスタマージャーニーマップが重要視されている理由は、デジタル化の進展によって顧客の情報収集チャネルが多様化し、購買行動が複雑化しているためです。かつてのようにマスメディアの広告を見てそのまま店舗で購入するといった直線的な行動ではなく、現代の顧客はスマートフォンやPCを使い分け、オンラインとオフラインを自由に行き来しながら購入を決定します。

総務省が公表している情報通信白書などでも示されているとおり、インターネット利用環境やソーシャルメディアの普及により、消費者は企業の公式情報だけでなく、第三者のレビューやSNS上の口コミ、動画コンテンツなど多角的な情報源を比較検討するようになりました。その結果、顧客が商品を知ってから購入に至るまでのタッチポイントが無数に分散し、単一の施策やチャネルの部分最適化だけでは成果を上げることが困難になっています。

たとえば、Web広告のクリック率やLPのコンバージョン率を個別に改善しても、顧客がその前後に見ているSNSの評価や、問い合わせ対応の質に問題があれば、最終的な購買や継続利用にはつながりません。また、企業側でも広告運用、SEO、SNS運用、インサイドセールス、カスタマーサポートなど担当部署が細分化されているケースが多く、部門間で顧客像やアプローチ方針のズレが生じやすくなっています。複雑化したタッチポイントを横断的に捉え、すべての接点で一貫性のある顧客体験を提供するために、顧客の行動全体を俯瞰できるカスタマージャーニーマップが不可欠となっています。

ペルソナやマーケティングファネルとの違い

カスタマージャーニーマップと混同されやすい概念に「ペルソナ」と「マーケティングファネル」がありますが、これらは分析の視点や役割が異なるため、それぞれの違いを理解して使い分ける必要があります。3つのフレームワークの違いは、下表のとおりです。

フレームワーク名 主な役割と定義 視点 時間軸の有無 把握できる主な内容
カスタマージャーニーマップ 顧客が認知から購入後に至るまでの行動・感情・接点を可視化する 顧客視点 あり(時系列のプロセス) 各フェーズでの具体的な行動、心理変化、チャネル間の移動、離脱要因
ペルソナ 商品やサービスを利用する象徴的な顧客像を詳細に設定する 顧客視点 なし(特定時点の人物像) 年齢、職業、居住地、価値観、ライフスタイル、抱えている潜在的な悩み
マーケティングファネル 認知から購入に至るまでの顧客数の推移と歩留まりを段階別に把握する 企業視点 あり(段階的な絞り込み) 各ステップの到達人数、遷移率、離脱率などの定量的な数値

ペルソナは「どのような人物が顧客なのか」という静的なターゲット像を定義するものであり、カスタマージャーニーマップにおける「主人公」に該当します。ペルソナが明確に設定されていなければ、マップ上で描く行動や感情に具体性が欠けてしまうため、両者はセットで活用されるのが一般的です。

一方、マーケティングファネルは、認知・興味・検討・購入といった段階ごとに顧客数が逆三角形(漏斗型)で減少していく様子を企業側の視点で数値管理するフレームワークです。ファネル分析では「検討から購入への遷移率が低い」といった定量的な課題は分かりますが、「なぜ購入をためらったのか」という顧客の心理までは読み取れません。ファネルで歩留まりの悪化している箇所を特定し、カスタマージャーニーマップでその背後にある顧客の感情や行動の障壁を掘り下げることで、精度の高い改善策を導き出せます。

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カスタマージャーニーマップを作成する目的とメリット

カスタマージャーニーマップを作成する目的とメリット

カスタマージャーニーマップを作成する最大の目的は、顧客の購買プロセスにおける行動や心理を体系的に整理し、マーケティング施策の精度と組織の連携を高めることです。企業視点の思い込みを排除して顧客体験(CX:商品やサービスを通じて顧客が得る体験全体)を設計できるため、リソースの無駄を省きながら成果を最大化できます。

マップの導入によって得られる主なメリットは、下表のとおりです。

主なメリット 解決できる従来の課題 実務における具体的な変化
顧客目線での課題発見と施策の最適化 企業側の都合による一方的な情報発信や、部分最適の施策に陥る 離脱原因を特定し、SEOやLP(ランディングページ)改善などの優先順位が明確になる
社内やチーム間での共通認識の形成 部署ごとにターゲット像や顧客理解が異なり、施策に一貫性がなくなる マーケティング・営業・カスタマーサポート間で連携したアプローチが可能になる
タッチポイントごとのKPI明確化 最終的な売上やコンバージョン数しか追えず、中間プロセスの評価ができない GA4(Google アナリティクス 4)などの解析ツールと連動し、フェーズ別の歩留まりを定点観測できる

顧客目線での課題発見と施策の最適化ができる

カスタマージャーニーマップを活用すると、顧客がどの段階でどのような疑問や不満を抱えているかが可視化され、打つべき施策の優先順位が明確になります。企業側が「自社の強み」を一方的にアピールするプロダクトアウトの発想から脱却し、顧客が本当に必要としている情報や体験を適切なタイミングで提供できるようになるためです。

例えば、BtoBのクラウドサービスにおいて、広告からの流入は多いものの資料請求に至らないケースを想定します。マップ上で比較検討フェーズの顧客心理を深掘りすると、「自社システムと連携できるか不安」「導入後のサポート体制がわからない」といったボトルネック(成果を阻害する要因)が浮かび上がります。この課題に対し、以下のような具体的な改善策を講じることが可能です。

  • LPに他社ツールとの連携実績やセキュリティ基準の項目を追加する
  • 導入事例のホワイトペーパー(課題解決のノウハウや事例をまとめた資料)を用意し、ダウンロード導線を設置する
  • 比較検討層の検索意図に合わせたSEO記事を作成し、疑問を解消する

このように、単発の施策を闇雲に実行するのではなく、顧客の感情の起伏に合わせてWeb広告、SEO、LP改善などを有機的に結びつけられる点が大きな利点です。

社内やチーム間でペルソナの共通認識を持てる

複数の部署や外部パートナーが関わるプロジェクトにおいて、ターゲットとなるペルソナ(商品やサービスの典型的なユーザー像)の行動と心理を1枚の図で共有できる点も重要なメリットです。マーケティング部門、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、役割が異なるメンバー間でも、顧客の全体像を共通言語として把握できるようになり、一貫性のある顧客体験を提供できます。

組織が拡大するほど、各部署は自部門の目標達成に注力し、施策が分断される「サイロ化」が起きやすくなります。例えば、広告運用チームが獲得単価を下げるために煽り文句の強いバナーで集客した結果、営業担当者が商談した際に顧客の期待値と実際のサービス内容にズレが生じ、失注につながるといった事態は少なくありません。

カスタマージャーニーマップを軸に議論を行えば、「認知段階でどのような期待を抱かせ、商談段階でどう課題を引き出し、導入後にどう定着させるか」という一連のストーリーを全社で共有できます。結果として、部署間の引き継ぎがスムーズになり、手戻りや認識の齟齬による機会損失を防げます。

タッチポイントごとのKPIが明確になり効果測定しやすくなる

購買フェーズとタッチポイント(顧客との接点)を整理することで、各段階におけるKPI(重要業績評価指標:目標達成度を測る中間指標)を論理的に設定できるようになります。最終的な成約数や売上(KGI:重要目標達成指標)だけでなく、そこに至るまでのプロセスを定量的に計測できるため、施策の振り返りと改善のサイクルを迅速に回せます。

顧客が商品を認知してから購入・継続利用に至るまでには複数のステップが存在し、それぞれで評価すべき指標は異なります。BtoCのECサイトやBtoBのリード獲得におけるフェーズ別のKPI設計例は、下表のとおりです。

購買フェーズ 主なタッチポイント 顧客の行動例 設定すべきKPIの例
認知・興味 SNS広告、検索エンジン、Webメディア 広告の閲覧、課題に関するキーワード検索 インプレッション数、CTR(クリック率)、オーガニック検索流入数
情報収集・比較検討 オウンドメディア、LP、比較サイト、ウェビナー 記事の閲覧、他社製品との機能・価格比較、資料請求 直帰率、平均エンゲージメント時間、ホワイトペーパーDL数
購入・導入決定 EC決済画面、商談、無料トライアル カートへの追加、見積もり依頼、デモ体験 カゴ落ち率、商談化率、CVR(コンバージョン率)
継続・推奨 メルマガ、公式アプリ、カスタマーサポート リピート購入、使い方の問い合わせ、口コミ投稿 継続率(チャーンレート)、LTV(顧客生涯価値)、NPS(顧客推奨度)

これらのKPIをマップ上に配置することで、GA4やMA(マーケティングオートメーション:マーケティング活動を自動化するツール)、SFA(営業支援システム)などのデータと顧客行動を紐づけて分析できます。「比較検討フェーズのLPまでは誘導できているが、フォーム到達率が低い」といった数値上の課題が、マップ上のどの体験の欠如に起因しているのかを特定しやすくなり、データに基づいた精度の高いPDCAを回すことが可能です。

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カスタマージャーニーマップの基本的な作り方6ステップ

カスタマージャーニーマップの基本的な作り方6ステップ

カスタマージャーニーマップは、目的の明確化から定期的な見直しまでの6つのステップに沿って段階的に作成します。手順を踏まずに作業を始めると、情報の粒度が揃わず実務で活用できない図表になるため、まずは全体像と各工程の役割を把握することが重要です。6つのステップの概要と主な作業内容は、下表のとおりです。

ステップ 工程名 主な作業内容 活用するデータ・手法の例
ステップ1 目的とゴールの明確化 解決したいマーケティング課題と到達点の定義 事業計画書、KGI・KPIツリー
ステップ2 ペルソナの設定 対象とする具体的な顧客像の設計 CRMデータ、顧客アンケート、インタビュー
ステップ3 フェーズとタッチポイントの整理 マップの横軸(段階)と縦軸(接点)の決定 GA4(Google アナリティクス 4)の経路データ、営業履歴
ステップ4 行動・思考・感情の洗い出し 各段階における顧客の行動と心理変化の記入 ワークショップ、検索キーワード分析、コールセンター記録
ステップ5 課題と改善策の抽出 離脱要因の特定と具体的なマーケティング施策の立案 LP(ランディングページ)のヒートマップ、広告運用レポート
ステップ6 定期的な見直しと更新 施策実行後の効果測定に基づくマップの修正 効果測定レポート、最新の市場動向調査

ステップ1 目的とゴールを明確にする

最初のステップでは、カスタマージャーニーマップを作成する目的と、最終的に達成したいビジネス上のゴールを定義します。目的が曖昧なまま作業を進めると、分析対象とする顧客の範囲や行動の粒度が定まらず、具体的な施策への落とし込みが困難になるためです。

たとえば、BtoCのECサイトにおいて「新規顧客の初回購入率(CVR)の改善」を目的とする場合と、「既存顧客のリピート購入の促進」を目的とする場合では、描くべきマップの期間や注目すべき接点が異なります。BtoBの事業であれば、「資料請求から商談化までの引き上げ率向上」のように、営業DXやインサイドセールスの領域を含めるかどうかを最初に決定します。

  • 新規顧客獲得の効率化(認知から初回購入・契約までの行動分析)
  • LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が取引期間全体でもたらす利益)の最大化(購入後のオンボーディングから継続利用までの分析)
  • 休眠顧客の掘り起こし(離脱が発生したポイントの特定と再アプローチの検討)

このように、自社の現状の課題に合わせて「どの領域の数値を改善するためにマップを作るのか」を言語化し、プロジェクトメンバー間で合意を形成します。

ステップ2 ペルソナを設定する

目的が定まったら、マップの主人公となる「ペルソナ(商品やサービスを利用する典型的な顧客像)」を1人に絞って設定します。複数の顧客層を1つのマップに混在させると、段階ごとの行動や感情に矛盾が生じ、誰の課題も解決できない中途半端な分析結果になるからです。

ペルソナを設定する際は、担当者の想像だけで人物像を作らず、既存の顧客管理システム(CRM)の購買履歴や、実際の顧客へのインタビュー、Webサイトのアクセス解析データなどを根拠にします。BtoC向けとBtoB向けで設定すべき主な項目は、下表のとおりです。

事業形態 設定する主な属性項目 深掘りすべき行動・価値観の項目
BtoC 年齢、性別、居住地、職業、年収、家族構成 休日の過ごし方、普段利用するSNS、情報収集の手段、購買時に重視する基準(価格・品質・口コミなど)、抱えている日常の悩み
BtoB 業種、従業員規模、所属部署、役職、担当業務 業務上のミッションとKPI、決裁権限の有無(担当者か決裁者か)、情報収集に使うビジネスメディア、導入検討時の社内稟議のハードル

特にBtoBにおいては、実際にツールを探して比較検討する「現場担当者」と、予算を承認する「決裁者」のどちらをペルソナにするかによって行動プロセスが大きく変わるため、両者を明確に区別して設定します。

ステップ3 フェーズとタッチポイントを整理する

次に、設定したペルソナが商品を認知してから購入・利用に至るまでの時間を区切る「フェーズ(横軸)」と、その過程で企業と接触する「タッチポイント(縦軸の項目)」を整理します。あらかじめマップの骨格となる縦軸と横軸を定義しておくことで、次のステップで行う顧客行動の洗い出しを漏れなく進められます。

横軸のフェーズは、扱う商材の検討期間や性質に合わせて設定します。一般的なBtoC商材とBtoB商材におけるフェーズ設定の例は、以下のとおりです。

  • BtoC商材のフェーズ例:認知 → 興味・関心 → 情報収集・比較検討 → 購入 → 利用・共有(リピート)
  • BtoB商材のフェーズ例:課題認知 → 情報収集 → 比較検討(資料請求・セミナー参加) → 商談・社内稟議 → 契約・導入 → 活用・契約更新

縦軸に配置するタッチポイント(顧客との接点)には、オンラインとオフラインの双方のチャネルを列挙します。具体的には、検索エンジン(SEO・リスティング広告)、SNS広告、口コミサイト、自社WebサイトやLP、メルマガ、ウェビナー、実店舗、営業担当者との対面商談、カスタマーサポートなどが該当します。

ステップ4 顧客の行動や思考・感情を洗い出す

マップの枠組みが完成したら、各フェーズにおけるペルソナの「行動」「思考」「感情」を時系列に沿って洗い出し、フレームワークの該当箇所に記入します。行動の背景にある心理状態や感情の起伏までセットで可視化することが、顧客が次のステップへ進む際の障壁(ボトルネック)を発見する鍵となります。

この工程はマーケティング担当者単独で行うのではなく、顧客と直接対話している営業部門やカスタマーサポート部門、店舗スタッフなどを交えたワークショップ形式で進めるのが効果的です。付箋やオンラインホワイトボードツールを使い、以下のような視点で事実や仮説を書き出します。

  • 行動(Doing):そのフェーズで具体的に何をするか(例:「〇〇 比較」とGoogleで検索する、LPの料金表を見る、他社に相見積もりを取る)
  • 思考(Thinking):行動の最中に何を考え、どんな疑問を持つか(例:「自社と同じ業界の導入事例はあるか」「初期費用が予算内に収まるか知りたい」)
  • 感情(Feeling):思考に伴って気分がどう変化するか(例:「専門用語が多くて理解しづらく、調べるのが面倒になってきた」「導入後のサポートが手厚そうで安心した」)

感情の変化については、ポジティブな状態からネガティブな状態への推移を曲線グラフ(感情曲線)で表現すると、顧客の体験価値が低下している箇所を視覚的に特定しやすくなります。

ステップ5 現状の課題と改善策を抽出する

顧客の行動と感情が出揃ったら、感情曲線が落ち込んでいる箇所や、次のフェーズへの移行が滞っている箇所に着目し、現状のマーケティング課題を抽出して具体的な改善策を立案します。カスタマージャーニーマップは現状を可視化することがゴールではなく、具体的なアクションプランを導き出して実行するために作成するものだからです。

たとえば、「情報収集・比較検討」のフェーズで、ペルソナが「料金体系が複雑で自社に合うプランがわからない(感情の低下)」という課題を抱えているとします。この場合、以下のような改善策をマップの最下段に記入します。

  • LP改善:料金ページに「30秒でわかる料金シミュレーション機能」を追加し、離脱を防ぐ
  • コンテンツSEO・ホワイトペーパー:業界別の導入事例と費用対効果をまとめた比較資料を作成し、ダウンロード導線を設置する
  • 営業・インサイドセールス連携:料金ページを複数回閲覧したリードに対し、自動で見積もり相談の案内メールを配信する(MAツールの活用)

立案した施策が多数にのぼる場合は、「施策実行による売上・CVへのインパクト」と「実装にかかるコスト・工数」の2軸で評価を行い、優先順位を決定して担当部署へ割り振ります。

ステップ6 定期的に見直しブラッシュアップする

最後のステップとして、施策を実行した後の効果測定データや市場環境の変化に基づき、カスタマージャーニーマップを定期的に見直して更新します。作成当初のマップには仮説が多く含まれているうえ、競合他社の動向や新しいプラットフォームの台頭によって、顧客の購買行動は常に変化し続けるためです。

具体的には、ステップ5で実行したLP改修や広告運用の結果をGA4などの解析ツールで検証し、「想定どおりに次のフェーズへ遷移するようになったか」「新たな離脱ポイントが発生していないか」を確認します。また、四半期に1回や半年に1回といったサイクルを決め、直近の成約顧客へのインタビュー結果や失注理由のデータを反映させてマップを最新の状態に保ちます。

一度作って終わりの資料にするのではなく、施策の実行と検証の結果を反映し続ける「生きた運用管理表」としてアップデートを重ねることで、マーケティング施策全体の精度が継続的に向上します。

国内企業におけるカスタマージャーニーマップの成功事例

国内企業におけるカスタマージャーニーマップの成功事例

国内企業の成功事例では、カスタマージャーニーマップを用いてオンラインとオフラインの行動データや検討プロセスを統合し、顧客体験(CX:商品・サービスを通じた顧客の体験価値)の最適化と売上向上を実現しています。業種やビジネスモデル(BtoC・BtoB)によって顧客の検討期間は異なるものの、タッチポイント(顧客との接点)ごとの感情の揺れ動きや離脱要因を特定し、適切な情報提供へとつなげるアプローチが共通しています。

紹介する国内企業3社の業界、抱えていた課題、主な施策、および得られた成果の比較は、下表のとおりです。

企業名(ブランド名) ビジネスモデル 直面していた課題 マップ活用による主な施策 実現した成果
株式会社良品計画(無印良品) BtoC(小売・EC) Webサイトと実店舗の顧客データが分断され、購買前後の行動が把握できない 独自アプリを軸にしたオンライン・オフラインの行動履歴統合と情報配信の最適化 実店舗への来店促進と顧客のLTV(顧客生涯価値)の向上
株式会社クラシコム(北欧、暮らしの道具店) BtoC(EC・メディア) 画一的な販促メルマガや広告では顧客の共感を得にくく、価格競争に陥りやすい 顧客の日常の感情やライフスタイルに寄り添った記事・動画コンテンツの企画と配信 広告依存からの脱却、高いリピート率と指名検索数の増加によるファン化
サイボウズ株式会社 BtoB(IT・SaaS) 導入検討期間が長く複数の関与者が存在するため、商談化のタイミングを測りにくい 検討フェーズごとの情報ニーズの可視化と、MA(マーケティングオートメーション)を用いた段階的な育成 休眠リード(見込み客)の掘り起こしとインサイドセールス(内勤営業)の商談化率向上

良品計画(無印良品)の事例

株式会社良品計画は、カスタマージャーニーマップを通じてデジタルと実店舗の接点を統合し、実店舗への送客と継続的な購買の促進に成功しています。小売業において顧客は実店舗とECサイトを行き来するため、単一のチャネル(経路)のデータだけでは顧客の全体像を捉えきれません。

アプリ活用によるオンラインとオフラインの購買体験の統合

同社は独自アプリ「MUJI passport」を起点として、顧客が商品を認知してから店舗へ足を運び、購入後にレビューを投稿するまでの一連の行動を可視化しました。従来はWebサイトの閲覧履歴と実店舗でのPOS(販売時点情報管理)データが切り離されており、店舗を訪れた顧客が事前にどの商品を調べていたのかを把握できない課題がありました。

そこで、アプリ内の検索履歴、お気に入り登録、店舗でのチェックイン機能、購買データを一元管理し、顧客がオンラインとオフラインを横断する購買行動を単一のIDで追跡できる仕組みを構築したのです。具体的には、下表のとおりフェーズごとの行動に応じたアプローチを実施しました。

購買フェーズ 顧客の行動と心理 アプリを活用したアプローチ
情報収集・比較検討 アプリで商品のサイズや在庫状況を確認し、実物を見るか迷っている よく利用する店舗の在庫情報をリアルタイムで表示し、来店動機を高める
来店・購買 店舗に到着し、目的の商品を探している、または関連商品に興味がある 店舗チェックイン時にマイルを付与し、お気に入り登録商品の周辺売場やクーポンを通知する
購買後・再購入 購入した商品を自宅で使用し、使い心地を評価している 購買履歴に基づいた関連商品の提案や、愛用者のレビュー投稿を促して次の購買へつなげる

このように、実店舗へ行く前の情報収集段階から購入後のフォローまでを途切れなく設計したことで、単なるポイントカードの枠を超えたコミュニケーションが可能になり、来店頻度の向上とロイヤリティ(愛着・信頼)の強化を達成しています。

北欧、暮らしの道具店(クラシコム)の事例

ECメディア「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコムは、顧客の日常的な感情の機微を捉えたカスタマージャーニーを描き、売り込み感を排除したコンテンツ提供によって熱狂的なファンベースを築いています。日用雑貨やアパレルのEC領域では、機能や価格の訴求だけでは他社との差別化が難しく、短期的な刈り取り型広告に依存すると獲得単価が高騰するためです。

顧客の感情に寄り添ったコンテンツ提供によるファン化

同社は「商品を売るためのプロセス」ではなく、「顧客が日々の暮らしの中でどのような気分になり、何に共感するか」という感情のジャーニーを重視しています。たとえば、日曜日の夜に翌週の仕事に向けて少し憂鬱な気分になっている状態や、季節の変わり目に部屋の模様替えをしたくなる心理など、購買のずっと手前にある生活文脈を整理しました。

そのうえで、顧客が求めているタイミングに合わせて以下のような施策を展開しています。

  • スタッフの実際の暮らしや商品の使用風景を切り取った読み物記事の配信
  • 朝の支度や夜のストレッチなど、日常のルーティンに焦点を当てたオリジナル動画やドラマの公開
  • スマートフォンのアプリやSNSを通じた、雑誌をめくるような感覚で楽しめるUI(ユーザーインターフェース:操作画面)の設計

商品の機能や割引情報を一方的に押し付けるのではなく、顧客が自身のライフスタイルを肯定できるような体験を提供し続けた結果、購入目的ではない状態でも日常的にアプリやWebサイトを訪れる習慣が生まれました。これにより、指名検索(企業名やサイト名を直接入力する検索)やアプリ経由の直接流入が大半を占めるようになり、高いリピート購入率を維持しています。

サイボウズの事例

業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」などを提供するサイボウズ株式会社は、BtoBマーケティングにおける長期的かつ複雑な意思決定プロセスをカスタマージャーニーマップで可視化し、効率的なリードナーチャリング(見込み客の育成)を実現しています。BtoBのITツール導入では、現場の担当者だけでなく情報システム部門や決裁者など複数の人物が関与するため、一度の資料請求や展示会での名刺交換だけでは即座に契約へ至らないためです。

BtoBマーケティングにおける検討プロセスの可視化とナーチャリング

同社は、見込み客が自社の業務課題を認識してから、情報収集、社内稟議、トライアル(試用)を経て正式導入に至るまでの長い道のりをフェーズごとに細分化しました。各フェーズにおいて「現場担当者が抱える不安」と「決裁者が重視する投資対効果」の双方の視点をマップに落とし込み、不足しているコンテンツを洗い出しました。

具体的には、Webサイトのアクセス解析データやMAツール、CRM(顧客関係管理システム)の履歴を組み合わせ、見込み客の検討度合いに応じて以下の施策を出し分けています。

  • 潜在・課題認識フェーズ:業務の属人化やExcel管理の限界をテーマにしたWeb記事、漫画コンテンツ、基礎セミナーの案内
  • 比較検討フェーズ:同業他社や同じ部門(総務・営業など)の導入事例集、他社システムとの比較資料の提供
  • 導入推進・稟議フェーズ:30日間の無料お試し環境の提供、社内説得用の企画書テンプレートの配布、導入相談カフェ(個別相談会)への誘導

このように、見込み客の検討段階や社内の立場に合わせて最適な情報を自動的に出し分ける仕組みを整えたことで、過去に接点を持ったものの商談に至らなかった休眠リードの再活性化に成功しました。また、インサイドセールスが架電する際にも「どのページを閲覧し、何に関心があるか」を事前に把握できるため、顧客の課題に直結した提案が可能となり、営業部門への案件引き渡し率と成約率の双方を引き上げています。

カスタマージャーニーマップ作成におすすめのツール・テンプレート

カスタマージャーニーマップ作成におすすめのツール・テンプレート

カスタマージャーニーマップを作成するためのツールは、社内の利用環境や作成メンバーの人数、共有のしやすさを基準に選定することが重要です。多機能な専用ツールを導入しても、メンバーが操作に慣れていなければ更新が滞り、実務で活用されなくなるためです。

まずは既存のオフィスソフトや無料テンプレートから着手し、複数部署でのワークショップやオンラインでの共同作業が必要になった段階で、クラウド型のデザインツールやホワイトボードツールへ移行するとスムーズに運用できます。代表的なツールの特徴や向いている用途は、下表のとおりです。

ツール分類 代表的なツール 主な特徴 向いている用途・組織
オフィス系定番ツール Excel、PowerPoint、Googleスプレッドシート 表計算やスライド作成の既存スキルで扱え、導入コストがかからない まずはコストをかけずに作成したい企業、テキストベースで情報を整理したい場合
デザインツール Canva 視覚的に優れたテンプレートが豊富で、直感的な操作でレイアウトできる プレゼン資料や社内共有向けに、視認性の高いマップを短時間で作成したい場合
オンラインホワイトボード Miro、FigJam(Figma) 付箋を使ったブレインストーミングからマップ化までをリアルタイムで共同編集できる リモートワーク環境で複数部署のメンバーとワークショップ形式で作成する場合

無料で使える定番ツール(Excel・PowerPoint・Googleスプレッドシート)

初期費用を抑えてすぐにカスタマージャーニーマップの作成を始めるには、Excel、PowerPoint、Googleスプレッドシートといった定番のオフィス系ツールが適しています。多くのビジネスパーソンが日常業務で使い慣れているため、ツールの操作方法を学ぶ時間を省き、顧客の行動や感情の分析に集中できるからです。

縦軸に「行動」「思考」「感情」「課題」、横軸に「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」などのフェーズを設定したマトリクス表(行と列で要素を整理する表)を作るだけで、実用的なマップの土台が完成します。各ツールの具体的な活用方法は以下のとおりです。

  • Excel:セルを使った緻密な項目整理に向いており、タッチポイントごとのKPI(重要業績評価指標)や、GA4(Googleアナリティクス4)などの解析ツールから抽出したデータと紐づけて管理しやすいのが特徴です。
  • PowerPoint:図形や矢印、アイコンを自由に配置できるため、顧客の感情の起伏を折れ線グラフのように表現したり、企画書や経営層への提案資料にそのまま組み込んだりする際に便利です。
  • Googleスプレッドシート:クラウド上でリアルタイムに複数人で同時編集ができ、変更履歴も自動で残るため、マーケティングチーム内での継続的なテキスト修正や情報更新に適しています。

デザイン性に優れたテンプレートが豊富なツール(Canva)

視覚的にわかりやすいカスタマージャーニーマップを短時間で作成したい場合は、オンラインデザインツールのCanvaが有効です。あらかじめ配色やレイアウトが整えられたテンプレートが多数用意されており、デザインの専門知識がなくても見栄えの良いマップに仕上げられるためです。

テキスト主体の無機質な表よりも、ペルソナの顔写真や感情を表すイラスト、カラーリングが施されたマップのほうが、他部署のメンバーやクライアントの直感的な理解を促し、プロジェクトへの協力を得やすくなります。

Canvaの検索窓で「カスタマージャーニーマップ」と入力すると、BtoCのECサイト向けからBtoBの営業プロセス向けまで、多様なテンプレートが表示されます。自社の検討フェーズに合わせて枠組みを選び、テキストの打ち替えやアイコンのドラッグ&ドロップを行うだけで作成が完了します。作成したデータはPDFや画像ファイルとして出力できるほか、閲覧・編集用の共有リンクを発行して社内のチャットツール等で手軽に展開できます。

オンラインでの共同編集に強いホワイトボードツール(Miro・Figma)

複数部署のメンバーと意見を出し合いながらカスタマージャーニーマップを作り上げるには、MiroやFigma(オンラインホワイトボード機能のFigJam)が適しています。広大なキャンバス上にデジタル付箋を貼り付け、リアルタイムで参加者のカーソルの動きを確認しながら議論を進められるためです。

マーケティング担当だけでなく、インサイドセールスやカスタマーサポートなど顧客接点の異なるメンバーが参加する場合、最初から整った表に書き込むよりも、まずは自由な形式で顧客の行動や課題を洗い出すほうが多角的な視点を取り入れられます。

  • Miro:カスタマージャーニーマップ専用のフレームワークが標準搭載されており、付箋でのブレインストーミングからフェーズごとの分類、感情曲線の描画までを1つのボード上で完結できます。
  • Figma(FigJam):WebサイトやLP(ランディングページ)のUIデザインで広く使われているツールであり、抽出した課題をもとにそのまま画面構成案(ワイヤーフレーム)の作成やデザイン改修の議論へ移行しやすい点が強みです。

どちらのツールもコメント機能やスタンプによる投票機能を備えており、リモートワーク環境下でのワークショップや、作成後の定期的な見直し作業を効率化できます。

カスタマージャーニーマップ作成で失敗しないための注意点

カスタマージャーニーマップ作成で失敗しないための注意点

カスタマージャーニーマップを成果につなげるためには、顧客データの客観性を担保し、迅速な仮説検証と具体的なマーケティング施策への展開を徹底することが重要です。どれほど見栄えの良いマップを作成しても、社内メンバーの主観だけで描かれていたり、作成自体がゴールになったりすると、実際の顧客行動と乖離して機能しなくなります。

マップ作成時によくある失敗パターンと、それを防ぐための対策は下表のとおりです。

よくある失敗パターン 発生する問題 具体的な対策
企業の都合や願望を反映してしまう 実際の顧客行動とズレが生じ、施策が空振りする 定量データと定性データの双方を根拠として配置する
最初から完璧なマップを作ろうとする 情報収集に時間がかかり、施策の実行が遅れる まずは仮説ベースで作成し、後から検証・修正する
マップを完成させて満足してしまう 現場の業務や KPI(重要業績評価指標)に結びつかず、形骸化する 各フェーズの課題に対する具体的なアクションプランと担当者を決める

これらの失敗を防ぎ、実務で機能するカスタマージャーニーマップを作成するための3つの注意点を解説します。

企業の願望を詰め込まず事実やデータに基づいた内容にする

カスタマージャーニーマップを作成する際は、企業側の「こう動いてほしい」という願望を排除し、客観的な事実やデータに基づいて顧客の行動・感情を記述する必要があります。マーケティング担当者や企画部門の主観だけでマップを作成すると、自社にとって都合の良いシナリオになりやすく、顧客が実際に抱えている不満や離脱の原因を見落とすためです。

たとえば、BtoBのシステム導入において「Web広告をクリックした後にすぐ資料請求を行う」という直線的な行動を想定したとします。しかし実際には、検索エンジンで他社製品との比較記事を読み、口コミサイトで評判を確認し、社内の稟議を通すために導入事例ページを複数回閲覧するといった複雑なプロセスを経ることが一般的です。このような現実の行動を正確に捉えるには、次に挙げる定量データと定性データを組み合わせて根拠を固めるアプローチが有効です。

  • 定量データ:GA4(Google アナリティクス 4)などのアクセス解析ツールによるページ遷移や離脱率、Google サーチコンソールの検索クエリ、広告運用データ、CRM(顧客関係管理システム)やSFA(営業支援システム)の商談履歴
  • 定性データ:既存顧客へのデプスインタビュー(1対1の深掘り調査)、カスタマーサポートへの問い合わせ履歴、営業担当者へのヒアリング、購入後アンケートの自由記述欄

マーケティング部門だけで閉じて作成するのではなく、日常的に顧客と直接対話している営業部門やカスタマーサポート部門のメンバーを巻き込むことで、現場の一次情報を反映した精度の高いマップになります。

最初から完璧を目指さず仮説ベースで作成を始める

初回からすべての顧客行動を網羅した完璧なマップを作ろうとせず、まずは社内に蓄積された既存データと仮説をベースに短期間で作成を始めることが重要です。精緻なマップを作るための市場調査やデータ収集に数か月を費やしてしまうと、その間に市場環境や競合他社の動向、顧客のニーズが変化し、完成した時点で情報が陳腐化するリスクがあるためです。

手元に十分な顧客インタビューのデータがない場合でも、まずは社内の営業担当者やカスタマーサポート担当者へのヒアリングと、GA4のアクセス解析データをもとに暫定的なマップを組み上げます。その際、データで裏付けが取れている「事実」と、推測に基づく「仮説」を区別して記録しておくと、後の検証作業がスムーズに進みます。

  • 事実として記録する項目の例:資料請求フォームでの離脱率が高いこと、特定の比較キーワードからの自然検索流入が多いこと
  • 仮説として記録する項目の例:フォームの入力項目が多すぎて面倒に感じているのではないか、競合製品との機能差が分からず迷っているのではないか

このように仮説を明示したうえで、小規模なWeb広告の配信やLP(ランディングページ)の改修といったテスト施策を走らせます。施策の結果から得られた新たな数値や顧客の反応をもとにマップを更新していくアプローチが、結果として最短で成果につながります。

マップを作って終わりにせず実際のマーケティング施策に落とし込む

カスタマージャーニーマップは完成させることが目的ではなく、可視化した顧客の課題から具体的なマーケティング施策を立案し、実行に移して初めて価値を生みます。どれほど正確に顧客の心理や行動を描き出しても、それが現場のアクションプランや業務プロセスに紐づいていなければ、単なる資料として形骸化してしまうためです。

マップを作成した後は、フェーズごとに抽出した課題に対して「誰が・いつまでに・どのチャネルで・何を行うか」を明確に定義します。具体的な課題から施策、および効果測定の指標へと落とし込む流れは以下のとおりです。

  • 情報収集フェーズの課題と施策:検索エンジンで課題解決の方法を探しているが自社サイトに到達していない場合、SEO(検索エンジン最適化)記事の制作をコンテンツマーケティング担当者に割り当て、検索順位とオーガニック検索流入数を指標として設定する
  • 比較検討フェーズの課題と施策:製品ページを閲覧したものの導入後のイメージが湧かず離脱している場合、LP改善担当者と同業種の導入事例や料金シミュレーションの追加を行い、CVR(コンバージョン率:成果達成率)の改善幅を測定する
  • 導入決定・継続フェーズの課題と施策:BtoB商談後の検討が停滞している場合、MA(マーケティングオートメーション)ツールを用いたステップメールの配信や、インサイドセールス(内勤営業)によるフォロー架電のルールを営業DX推進チームと策定し、商談化率や成約率を追跡する

設定した施策を実行した後は、最低でも四半期に1回などのサイクルで効果測定のレビューを実施します。想定どおりの成果が出ていない箇所があれば、施策の内容を見直すとともに、「そもそもカスタマージャーニーマップ上の仮説が間違っていなかったか」という視点でマップ自体もアップデートし続ける体制を構築してください。

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が認知から購入、継続利用に至るまでの行動・思考・感情・タッチポイントを時系列で可視化し、チーム全体が同じ顧客像を共有して施策を最適化するためのフレームワークです。「マーケティング施策の成果が出ない」「チーム間で顧客像の認識がずれる」という課題の多くは、顧客がどの段階で何に迷い、なぜ離脱しているのかが整理されておらず、部門ごとの部分最適な施策に陥っていることに起因します。

作成にあたっては、目的とゴールの明確化、ペルソナの設定、フェーズとタッチポイントの整理、行動・思考・感情の洗い出し、課題と改善策の抽出、定期的な見直しという6つのステップを順に進めることが基本です。その際、企業側の願望を排して定量データと定性データに基づいて描くこと、最初から完璧を目指さず仮説ベースで始めること、作って終わりにせず具体的な施策とKPIに落とし込むことが重要です。マップで見えた課題は、コンテンツ制作、LP改善、MAツールによるリード育成など、実際の施策を実行して初めて成果につながります。

しかし、「マップで課題は見えたが、各フェーズに合ったホワイトペーパーや記事を継続的に制作する体制がない」「検索意図に合ったSEO施策やLP改善まで手が回らない」「MAツールを導入したものの、検討段階に応じた配信シナリオを運用しきれていない」といった悩みを抱える企業様も少なくありません。

リードプラスでは、検索エンジンだけでなくAI検索にも対応したSEO/AIO対策・コンテンツ制作、そしてHubSpotをはじめとしたMAツールの導入・運用支援を通じて、カスタマージャーニーマップで描いた顧客体験を実際の施策として形にし、運用改善まで一貫してご支援しています。自社のマップ作成や施策への落とし込みにお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

 

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よくある質問(FAQ)

Q1.カスタマージャーニーマップは個人事業主でも活用できますか?

 活用できます。顧客の行動や思考を整理することで、限られた予算や時間をどの集客施策に優先して投下すべきかが明確になります。大がかりなものを作る必要はなく、ExcelやGoogleスプレッドシートで主要なペルソナ1人分の簡易なマップを作るだけでも、離脱しやすいポイントや不足している情報が見えてきます。 

Q2.マップの作成にはどのくらいの期間がかかりますか?

 仮説ベースで作成する場合は、1日から数日程度で完了します。顧客へのインタビューやデータ収集を行う場合は、1ヶ月から数ヶ月程度かかるのが一般的です。まずは社内の営業やサポート担当へのヒアリングとGA4のデータで暫定版を作り、施策を実行しながら検証して精度を高めていく進め方がおすすめです。 

Q3.BtoBとBtoCで作成方法に違いはありますか?

 基本的な手順は同じですが、BtoBでは意思決定に複数の担当者が関わるため、個人の感情に加えて、組織内の承認プロセスや検討フェーズを組み込む必要があります。現場担当者と決裁者では不安や重視する点が異なるため、どちらをペルソナにするかを明確にしたうえで、必要に応じて立場ごとにマップを分けると実務で活用しやすくなります。 

Q4.複数の顧客層がいる場合はどうすればよいですか?

 顧客層ごとに購買行動が異なるため、1つのマップに混在させず、主要なペルソナを1つに絞って作成するか、ペルソナごとに別のマップを作成して管理します。まずは売上への貢献度が高い顧客層から着手し、運用に慣れてきた段階で他の顧客層へ広げていくと、負担を抑えながら進められます。 

Q5.作成したマップはどのくらいの頻度で見直すべきですか?

 市場環境の変化や新サービスの導入時、または半年に1回から1年に1回程度の定期的なタイミングで、実際の顧客データと照らし合わせて見直します。LP改修や広告運用などの施策を実行した後は、GA4などで想定どおりにフェーズ間の遷移が起きているかを確認し、新たな離脱ポイントが生まれていないかも合わせて点検しましょう。 

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