ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?BtoBの売上を最大化する戦略と成功事例を徹底解説

BtoBビジネスにおいて、獲得したリードが商談に繋がらない、あるいは営業部門とマーケティング部門の連携が取れず売上が伸び悩む課題は少なくありません。ABMマーケティングは、自社にとって価値の高い特定の企業群を定義し、営業とマーケティングのリソースを集中投下してLTVを最大化する戦略です。

この記事で分かること

  • ABMマーケティングと従来の手法の違い
  • 導入によりROIを最大化する仕組みと注意点
  • ターゲット選定から施策実行までの5つの手順
  • 成果を高めるツールの種類と国内の成功事例

従来の個人単位のリード獲得とは異なり、企業単位で意思決定者を特定してアプローチを行うため、無駄な営業コストを削減できます。本記事を通じて、ターゲット企業の選定基準やシナリオ設計の手順、SFAやMAツールを用いたデータ連携の方法を把握でき、自社の営業効率と受注率を引き上げる具体的な実践手順が明確になります。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは何か

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、自社にとって価値の高い特定の企業(アカウント)を選定し、その企業に最適化されたマーケティングおよび営業リソースを集中投下するBtoB向けの戦略です。不特定多数の見込み客から商談機会を探すのではなく、あらかじめ売上貢献度が高いと見込まれる企業群を定義し、マーケティング部門と営業部門が一体となってアプローチを進める点に特徴があります。

ABMの基本概念と従来のBtoBマーケティングとの違い

ABMと従来のBtoBマーケティングの最大の違いは、アプローチの起点が「個人(リード)」か「企業(アカウント)」かという点にあります。

従来の手法では、展示会やWeb広告などを通じて個人の連絡先情報(リード)を幅広く獲得し、その中から購買意欲が高まった担当者を抽出して営業部門へ引き渡していました。しかし、BtoBの購買プロセスには複数の部署や役職者が関与するため、1人の担当者のみにアプローチしても、予算規模の不足や決裁権の不在によって成約に至らないケースが少なくありません。

これに対しABMでは、まず自社が狙うべきターゲット企業を明確に定義します。そのうえで、対象企業内の決裁者や推進者など複数の重要人物を特定し、それぞれの役職や課題に合わせた施策を展開することで、大口取引の成約率を引き上げます。

リードジェネレーションやインバウンドマーケティングとの比較

ABMは、標的とする企業を能動的に攻略するアウトバウンド型の性質を強く持ち、リードジェネレーション(見込み客の獲得活動)やインバウンドマーケティングとは起点と目的が異なります。

インバウンドマーケティングや一般的なリードジェネレーションは、オウンドメディアの記事やホワイトペーパー(お役立ち資料)などを公開し、検索エンジンやSNS経由で自発的に興味を持ったユーザーを集める手法です。幅広い層から接点を作れる反面、自社が理想とする規模や業種の企業が含まれるとは限りません。

一方、ABMは対象企業を最初に絞り込むため、獲得できるリードの総数は少なくなるものの、1社あたりの受注単価が高い商談を効率的に創出できます。各手法の具体的な違いは下表のとおりです。

比較項目 ABM リードジェネレーション・インバウンドマーケティング
アプローチの起点 特定のターゲット企業(アカウント) 不特定多数の個人(リード)
主なアプローチ方法 対象企業の課題に合わせた個別施策の展開 Webコンテンツや広告による広範な集客と育成
重視する指標 対象企業内の接点数・商談化率・1社あたりの受注額 獲得リード数・Webサイトのアクセス数・資料請求数
適している商材 単価が高く、対象市場やターゲット企業が明確な商材 対象業界が広く、導入の意思決定が比較的早い商材

日本国内でABMマーケティングが注目される背景

日本国内のBtoB市場でABMが注目されている背景には、労働力不足に伴う営業活動の効率化要請と、企業のデータ活用基盤の成熟という2つの要因が存在します。限られた人員で売上を拡大するため、成約見込みの高い企業へ経営資源を集中させる必要性が高まっています。

営業リソースの減少とデジタル化の加速

少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、多くの日本企業で営業担当者の確保が課題となっています。従来の訪問営業や手当たり次第の架電といった労働集約型の営業スタイルを維持することは困難であり、商談の質を重視する体制への転換が求められています。

さらに、オンライン商談やビジネスチャットなどデジタルツールの浸透により、BtoBの購買行動も変化しました。顧客は営業担当者と接触する前にWeb上で情報収集を進めるようになったため、企業側はターゲット企業の動向をデジタル上で把握し、適切なタイミングで的確な情報提供を行うABMのアプローチが必要となっています。

MAツールやSFAやCRMの普及によるデータ活用環境の成熟

マーケティングや営業を支援するITツールが国内企業に広く普及し、実践的なデータ分析環境が整ったこともABMの推進を後押ししています。

ABMを実行するには、自社が保有する顧客データと外部の企業属性データを統合し、高精度な分析を行う必要があります。近年は以下のツールの導入が進み、部門を横断したデータ連携が容易になりました。

  • MA(マーケティングオートメーション):見込み客の獲得から育成までのマーケティング施策を自動化するツール
  • SFA(営業支援システム):商談の進捗状況や営業担当者の行動履歴を記録・管理するツール
  • CRM(顧客関係管理):顧客の基本情報や購買履歴、問い合わせ履歴などを一元管理するツール

これらのシステムを連携させることで、ターゲット企業内の誰がどのWebページを閲覧し、現在どのような商談フェーズにあるのかをリアルタイムで可視化できるようになり、ABMの実行確度が飛躍的に向上しています。

インバウンドマーケティング完全ガイド

BtoB企業がABMマーケティングを導入するメリットとデメリット

BtoB企業がABMマーケティングを導入するメリットとデメリット

BtoB企業がABM(アカウントベースドマーケティング)を導入する最大のメリットは、売上貢献度の高い優良企業に経営資源を集中させることで、投資対効果と営業効率を飛躍的に高められる点にあります。一方で、対象企業の選定や社内体制の構築に多くの時間と労力を要し、短期的な成果が見えにくいというデメリットも存在します。

ABMは、不特定多数の見込み客を追う従来の手法とは異なり、自社の利益に直結する特定の企業群(アカウント)を起点にマーケティングと営業活動を統合する戦略です。導入の可否を判断する際は、自社の商材単価やターゲット市場の規模を踏まえ、下表のとおりメリットとデメリットの双方を客観的に比較検討する必要があります。

比較項目 ABMマーケティングのメリット ABMマーケティングのデメリット・注意点
収益性・投資対効果 大口取引や継続契約が見込める企業に絞るため、LTV(顧客生涯価値)とROI(投資対効果)が向上する 初期のデータ整備や専用ツールの導入に一定のコストが先行して発生する
組織連携 共通のターゲット企業を追うことで、マーケティング部門と営業部門の連携が強固になる 部門間の役割分担や評価指標(KPI)の再設計に社内調整の労力がかかる
業務効率・成果までの期間 確度の低い見込み客への対応が減り、限られた営業リソースを効率的に配分できる ターゲット企業の選定に高度な分析が必要であり、大型案件ゆえに成約までのリードタイムが長くなりやすい

LTV(顧客生涯価値)とROI(投資対効果)の最大化

ABMを導入することで、1社あたりのLTV(顧客生涯価値:取引開始から終了までに自社にもたらす利益の総額)と、マーケティング施策のROI(投資対効果)を同時に最大化できます。

最初から予算規模が大きく、自社の製品やサービスと親和性の高い企業のみをターゲットとして選定するため、受注時の契約単価が高くなりやすいためです。また、企業の課題に深く入り込んだ提案を行うことで導入後の解約率が下がり、他部署への展開(クロスセル)や上位プランへの移行(アップセル)による長期的な収益拡大が見込めます。

例えば、従業員数1,000人以上のエンタープライズ企業(大手企業)をターゲットに設定した場合を考えます。1つの事業部での導入に成功すれば、その実績をもとにグループ会社や他拠点へ横展開するアプローチが可能となり、新規顧客をゼロから開拓するよりも低いコストで売上を何倍にも伸ばすことができます。

マーケティング部門と営業部門やインサイドセールスの連携強化

ABMの実践は、マーケティング部門、インサイドセールス(内勤営業)、フィールドセールス(外勤営業)の3部門間における組織の壁を取り払い、連携を強化する効果をもたらします。

従来のリード(見込み客)獲得を中心とした手法では、マーケティング部門は「獲得した連絡先の件数」を追い、営業部門は「すぐ受注につながる案件」を求めるため、引き渡された見込み客の質を巡って部門間の対立が生じがちでした。ABMでは「どの企業を攻略するか」というターゲットリストを全社で事前に合意するため、部門間で追うべき目標が完全に一致します。

具体的には、以下のような一貫した連携プレーが機能するようになります。

  • マーケティング部門:ターゲット企業に特化したセミナー案内や業界別ホワイトペーパー(お役立ち資料)を配信し、企業内の複数人から関心を引き出す
  • インサイドセールス:資料をダウンロードした担当者だけでなく、同企業内の別部署や決裁権を持つキーマン(意思決定者)へ電話やメールでアプローチし、課題をヒアリングして商談機会を創出する
  • フィールドセールス:マーケティングとインサイドセールスが収集した企業全体の課題データを引き継ぎ、経営層や決裁者に向けた具体的な提案書を作成して商談に臨む

リソースの集中投下による営業効率の向上

ABMによってアプローチ対象を明確に絞り込むことは、限られた予算や人員といった社内リソースの浪費を防ぎ、営業活動全体の生産性を高めることに直結します。

成約の見込みが薄い企業や、自社のサービス規模と合わない企業への無差別なアプローチを停止し、受注確度と想定単価が高い優良企業群(上位のターゲット層)にのみ時間と予算を集中的に投下できるためです。

全ての見込み客に均一なメルマガ配信や営業架電を行うのではなく、選定した重要企業1社に対して、競合他社の導入状況や中期経営計画を読み込んだオーダーメイドの提案資料や専用Webページを用意します。無駄な商談や移動時間が削減される分、営業担当者は重要顧客の課題解決に向けた事前準備や提案の質を高める業務に専念できます。

ABM導入前に知っておくべきデメリットと注意点

ABMは高い収益性を期待できる反面、導入すればすぐに売上が上がる万能な手法ではなく、事前の準備負荷や成果が出るまでの時間軸において明確なデメリットが存在します。導入後に社内での挫折を防ぐためには、あらかじめ注意点を把握し、自社の体制や商材特性に適しているかを見極める必要があります。

ターゲット選定の難易度と準備期間の長さ

ABMの成否はターゲット企業の選定精度に大きく依存しますが、この選定作業とデータ整備には高度な分析力と長い準備期間が求められます。

自社にとって真に利益をもたらす優良顧客の条件を定義するには、過去の取引データや営業履歴、さらには市場の企業データベースを統合し、多角的に分析しなければならないためです。社内に散在する名刺データや商談履歴が整理されていない場合、まずはデータのクレンジング(重複や誤記の修正・統合)から着手する必要があります。

具体的には、業種、売上規模、従業員数といった基本属性だけでなく、利用中のシステム環境や組織体制、直近の投資意欲などの情報を組み合わせ、優先度別にランク分けを行います。この基盤構築だけで数か月単位の期間を要することも珍しくなく、マーケティングや営業の現場に一時的な業務負荷がかかる点に注意が必要です。

短期的な成果が出にくいことへの社内理解

ABMは施策を開始してから実際の売上として成果が表れるまでに時間がかかるため、経営層や現場部門からの十分な理解と中長期的な視点が不可欠です。

ABMの主な標的となる大手企業や優良企業は、購買の意思決定に関わる人物が複数部門にまたがっており、稟議や決裁のプロセスが複雑で長期間に及ぶ傾向があるためです。また、すでに他社製品を導入しているケースも多く、リプレイス(乗り換え)のタイミングを捉えるまで継続的な関係構築が求められます。

半年から1年以上の検討期間を要する大型案件を扱う場合、四半期ごとの短期的な受注件数や売上だけで評価を行うと、「コストをかけているのに成果が出ていない」と判断され、施策が途中で頓挫するリスクがあります。そのため、最終的な受注金額だけでなく、ターゲット企業内のキーマンとの接触数や、特定企業内でのWebサイト閲覧数の増加など、プロセスを評価する中間指標を設けて社内の合意形成を図ることが重要です。

売上を最大化するABMマーケティング戦略の実践ステップ

売上を最大化するABMマーケティング戦略の実践ステップ

ABM(アカウントベースドマーケティング)で売上を最大化するには、組織体制の構築からターゲット選定、アプローチの実行・改善までを5つの段階に分けて進める必要があります。事前のデータ分析や部門間の合意形成を省いて施策を始めると、ターゲットの優先順位が曖昧になり、リソースの分散を招くためです。具体的には、体制構築、対象企業の絞り込み、キーマンの特定、シナリオ設計、マルチチャネルでの実行とPDCAサイクルの運用という順序で進めます。

社内体制の構築とKGIやKPIの設定

最初のステップは、マーケティング部門、インサイドセールス(内勤営業)、フィールドセールス(外勤営業)の3部門が連携する専任体制を構築し、共通のKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定することです。部門ごとに異なる目標を追うと、マーケティング部門が獲得したリード(見込み客)を営業部門がフォローしないといった分断が生じるため、部門間で共通の目標を設定し、ターゲット企業からの売上最大化に向けて連携する体制が不可欠です。各部門の役割と設定すべき指標の具体例は、下表のとおりです。

担当部門 主な役割 設定すべきKGI・KPIの例
マーケティング部門 対象企業の抽出、接点創出、コンテンツ企画・配信 対象企業内の新規連絡先獲得数、コンテンツ閲覧率
インサイドセールス 対象企業内の部署開拓、課題のヒアリング、商談化 特定部署とのアポイント獲得数、有効商談化率
フィールドセールス 意思決定者への提案、クロージング、受注後の深耕 対象企業からの受注金額(KGI)、提案案件数、受注率

全員が最終的なKGIとして「対象企業群からの受注金額やLTV(顧客生涯価値)」を共有したうえで、各段階のKPIを追跡する仕組みを整えます。

優良顧客の分析とターゲットアカウント(企業)の選定

体制が整ったら、自社の既存顧客データを分析して理想的な顧客像であるICP(Ideal Customer Profile)を定義し、攻略対象となるターゲットアカウント(企業)を選定します。自社の製品やサービスと相性が良く、大きな売上や継続的な取引が見込める企業に経営資源を集中させることで、営業効率を高められるからです。具体的には、過去の取引データから以下のような属性や行動履歴を抽出し、対象企業を3つのティア(階層)に分類して優先順位をつけます。

  • 企業属性(業種、従業員数、売上規模、所在地、拠点展開の状況)
  • 利用環境(導入しているITシステム、競合製品の利用状況)
  • 取引実績(過去の平均受注単価、契約継続期間、解約率の低さ)
  • 市場動向(設備投資の計画、新規事業の立ち上げ、採用活動の活発度)

抽出した条件に最も合致する最重要企業群を「ティア1」、それに準ずる企業群を「ティア2」、条件の一部を満たす企業群を「ティア3」と定義し、階層ごとに投下する予算や営業工数の配分を決定します。

アカウント内のキーマン(意思決定者)の特定とデータ収集

ターゲット企業を選定した後は、その企業内で購買の意思決定権を持つキーマンや、社内稟議に影響を与える関係者を特定し、連絡先や業務課題のデータを収集します。BtoBの購買プロセスには複数の部署や役職者が関与するため、担当者1名との接点だけでは大型案件の受注に至らないケースが多いためです。攻略を確実にするには、対象企業の組織図を把握し、以下の4つの役割に該当する人物の情報を揃える必要があります。

  • 決裁者(予算の承認や最終的な導入可否を決定する役員・部門長)
  • 推進者(自社製品の導入メリットを理解し、社内調整を主導する現場責任者)
  • 評価者(製品の機能、セキュリティ、法務リスクなどを検証する情報システム部門や法務部門)
  • 利用者(導入後に現場で実際に製品やサービスを使用する実務担当者)

過去の名刺交換履歴、セミナー参加履歴、営業日報などの社内データに加え、企業の公式Webサイト、IR資料(投資家向け広報資料)、人事異動情報といった公開情報を組み合わせて、アプローチすべき人物のリストを完成させます。

各アカウントに最適化したアプローチシナリオの設計

キーマンの情報が揃ったら、対象企業のティアや事業課題に合わせて、個別最適化したアプローチシナリオを設計します。大企業や重要度の高い企業ほど独自の経営課題を抱えており、画一的な営業資料や一斉配信メールでは関心を惹くことができないためです。企業の階層や組織内の役職に応じたアプローチシナリオを事前に設計することで、商談化率を引き上げることができます。ティアごとのシナリオ設計の基準は、下表のとおりです。

階層区分 カスタマイズの水準 アプローチシナリオと提供コンテンツの具体例
ティア1(最重要企業) 1社ごとに完全個別化 対象企業のIR資料や中期経営計画を分析し、専用の提案書や経営層向けの手紙を作成してアプローチする
ティア2(準重要企業) 業種・課題別に最適化 同じ業界や類似の課題を持つ企業群ごとに、業界特化型の導入事例集やセミナー企画を用意して案内する
ティア3(対象候補企業) 属性に基づき自動化 企業規模や役職の条件に合わせ、汎用的なホワイトペーパー(お役立ち資料)やメールマガジンを配信する

誰に対して、どのタイミングで、どのような情報を提供すれば次の商談ステップへ進むのかを時系列で整理し、マーケティング部門と営業部門の間で合意しておきます。

マルチチャネルでの施策実行とPDCAサイクルの運用

シナリオの設計が完了したら、オンラインとオフラインを組み合わせたマルチチャネル(複数の経路)でアプローチを実行し、反応データをもとにPDCAサイクルを回します。ターゲットとなる決裁者やキーマンは多忙であり、メールや電話といった単一の手段だけでは接触できる確率が限られるためです。具体的には、以下のような施策を連動させて対象企業との接点を多角的に構築します。

  • 対象企業のIPアドレス(ネットワーク上の識別番号)を特定して配信するターゲティング広告
  • 経営層や部門長宛てに特別な招待状や資料を送付するダイレクトメール(郵送DM)
  • インサイドセールスによる架電と、個別課題を盛り込んだメールの送付
  • 特定企業の関係者のみを招待する少人数制のクローズドセミナーや勉強会の開催

施策の実行後は、アカウント単位での広告クリック数、Webサイトの閲覧ページ、商談化の進捗状況を週次や月次で振り返ります。反応が停滞している企業に対しては、アプローチする部署の変更や提供するコンテンツの見直しを行い、継続的にシナリオの精度を高めていきます。

ABMマーケティングを加速させるおすすめツール

ABMマーケティングを加速させるおすすめツール

ABM(アカウントベースドマーケティング)の実践では、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)、MA(マーケティングオートメーション)、企業データベースの3領域のツールを連携させて活用することが不可欠です。複数の部署に散在する顧客データを企業単位で統合し、部門間でリアルタイムに共有する環境を整えることで、狙ったターゲット企業に対する継続的かつ精緻なアプローチが可能になります。

ABMで活用する主なツールの役割と代表的な製品、および選定時の観点は下表のとおりです。

ツール種別 ABMにおける主な役割 代表的な製品 選定時のチェックポイント
SFA・CRMツール 企業単位での組織図・キーマン情報・商談履歴の一元管理 Sales Cloud(Salesforce)
HubSpot CRM
親会社・子会社の階層管理や、複数部署にまたがる商談の紐付けが可能か
MAツール 企業および所属担当者ごとのオンライン行動計測とパーソナライズ配信 Adobe Marketo Engage
Account Engagement
個人のスコアだけでなく、同一企業内の複数人の行動を合算して評価できるか
企業データベース・ABM専用ツール 保有データの名寄せ・属性付与、および未開拓のターゲット企業の抽出 FORCAS
ユーソナー(uSonar)
自社が狙う業界・規模の企業網羅率が高く、既存のSFAやMAと自動連携できるか

SFAやCRMツール(SalesforceやHubSpotなど)

SFAやCRMツールは、ターゲット企業内の組織構造やキーマンとの関係性、進行中の商談履歴を企業単位で一元管理する基盤として機能します。個人の連絡先(リード)単位ではなく、企業(アカウント)という箱の中に複数の担当者や部署別の商談を紐付けて管理できるため、大企業特有の複雑な意思決定プロセスや社内政治を可視化できます。

代表的なツールであるSalesforceの「Sales Cloud」は、親会社と子会社の資本関係や、同一企業内の複数部署に対する別々の商談を階層化して管理する機能を備えています。たとえば、ある企業の情報システム部門と人事部門に対して自社の別担当者がアプローチしている場合でも、アカウント画面上で双方の接触履歴や提案状況を即座に把握できます。

また、「HubSpot CRM」は、マーケティング部門が獲得した見込み客のWeb閲覧履歴と、インサイドセールスやフィールドセールスが記録した架電・商談履歴を同一のタイムライン上で確認できる設計が特徴です。企業内の誰といつ接触しどのような課題が挙がっているかを営業とマーケティングの双方がリアルタイムで把握できる状態を作ることが、SFAやCRMをABMで活用する最大の目的です。

MAツール(MarketoやAccount Engagementなど)

MAツールは、ターゲット企業に所属する複数の担当者のWeb行動やコンテンツの閲覧状況を追跡し、企業全体の検討度合い(エンゲージメント)を可視化するために活用します。従来のリード単位のマーケティングでは個人ごとの行動スコアのみを評価していましたが、ABMでは同一企業に属する複数人の行動データを合算して「企業単位でどれだけ自社に関心を持っているか」を判定する必要があります。

この要件を満たす代表的な製品として、アドビの「Adobe Marketo Engage」や、Salesforce環境と直接連携する「Account Engagement(旧Pardot)」が挙げられます。これらのツールをABMで運用する際は、主に次の機能を組み合わせてアプローチの優先順位を決定します。

  • アカウントスコアリング:同一企業の複数担当者が料金ページを閲覧したり、ホワイトペーパーをダウンロードしたりした際、それらの行動スコアを企業単位で合算して受注確度を算出する機能
  • IPアドレス判定による行動解析:会員登録やフォーム送信を行う前の匿名状態であっても、アクセス元のIPアドレスから企業名を特定し、ターゲット企業のWebサイト来訪を検知する機能
  • マルチチャネルのシナリオ配信:特定企業の意思決定者には経営課題に関するウェビナー案内を送り、実務担当者には具体的な機能比較資料を送るなど、役職や役割に応じた情報提供を自動化する機能

たとえば、ターゲット企業の購買部門と利用部門の双方から自社の導入事例ページへのアクセスが急増したことをMAツールで検知した場合、企業全体での比較検討が本格化したと判断してインサイドセールスへ即座に架電タスクを通知する仕組みを構築できます。

企業データベースやABM専用ツール(FORCASやuSonarなど)

企業データベースやABM専用ツールは、自社が保有する顧客データの表記ゆれを整えて正確な企業属性を付与し、優先的に攻略すべきターゲットリストを精緻に抽出する役割を担います。SFAやMAに蓄積されたデータは、「(株)」の有無や旧社名、部署名の違いなどによって同一企業の情報が別々に登録されているケースが多く、そのままでは企業単位での正確な分析ができません。

ランドスケイプが提供する「ユーソナー(uSonar)」は、日本国内の拠点情報を網羅した独自の企業データベース(LBC)を基盤としており、SFAやMA内の不完全なデータを自動で名寄せ(クレンジング)します。売上高や従業員数、業種などの詳細な属性情報を付与するだけでなく、資本系列や工場・支社などの拠点単位でのデータ統合を実現します。

また、ユーザベースの「FORCAS」は、既存の優良顧客リストをシステムに読み込ませることで、受注単価が高い企業に共通する業界分類や事業キーワード、導入しているITシステムなどの特徴を自動で分析します。自社と相性の良い企業の条件をデータに基づいて特定し、その条件に合致する未開拓の企業群を外部データベースから漏れなくリストアップできる点が、ABM専用ツールを導入する大きな利点です。

これらのツールをSFAやMAとAPI連携させることで、新規の名刺情報が登録された瞬間に企業の規模やターゲットランクが自動判別され、営業担当者が手作業で企業情報を調べる工数を削減しながら、狙うべき企業への迅速なアプローチを実現できます。

日本国内におけるABMマーケティングの成功事例

日本国内におけるABMマーケティングの成功事例

日本国内のBtoB企業におけるABM(アカウントベースドマーケティング)の成功事例は、自社の業界構造や商材の特性に合わせて、ターゲット企業の選定基準とアプローチ手法を最適化している点に共通点があります。単なる見込み客(リード)の獲得数ではなく、対象企業全体での売上拡大や部署をまたいだ取引深耕を最終ゴールとして設計することが、成果につながる鍵となります。

国内の代表的な3つの業界におけるABMの活用パターンは下表のとおりです。

業界 主な課題 ターゲットアカウントの条件 主なアプローチ施策と変化
IT・SaaS企業 中小企業中心の開拓から大手企業(エンタープライズ)へのシフトに伴う商談長期化 従業員規模が大きく、DX推進部門や情報システム部門の予算規模が大きい企業 経営層向けの CXOレター送付と部門別のホワイトペーパー提供により、大型商談の創出と受注単価が向上
製造業 既存顧客の特定工場・特定部門との取引に留まり、他部門への横展開が進まない すでに一部門で導入実績があり、全国に複数の製造拠点や研究開発部門を持つ大手メーカー 名刺データとSFA(営業支援システム)の統合による未開拓部署の可視化と、既存実績を活用した別拠点へのセミナー誘導によりクロスセルが実現
人材サービス業界 マーケティング部門が獲得したリードに対する営業部門のフォロー優先順位の不一致 事業拡大フェーズにあり、複数職種での継続的な採用ニーズが見込まれる成長企業 求人媒体への出稿状況やWebサイト上の行動履歴に基づくスコアリングと、インサイドセールスによる即時架電体制の構築により商談化率が改善

ITやSaaS企業におけるエンタープライズ開拓の成功事例

ITやSaaS企業におけるABMは、受注単価が高く解約率が低いエンタープライズ(大手企業)の新規開拓において、意思決定に関わる複数の関係者へ多角的にアプローチすることで導入合意を形成できる点が最大の成功要因です。

大手企業へのシステム導入では、現場の利用部門だけでなく、情報システム部門によるセキュリティ審査、経営企画部門や役員による投資対効果の判断など、複数の決済ルートを通過する必要があります。従来のインバウンドマーケティングによるリード獲得だけでは、現場担当者1名の接点にとどまり、社内稟議の段階で案件が停滞するケースが少なくありませんでした。

エンタープライズ開拓に成功したクラウドサービス提供企業では、既存の優良顧客の属性を分析し、特定の業界かつ一定以上の従業員規模を持つ企業群をターゲットアカウントとして定義しました。その上で、対象企業に対して以下のような段階的かつ役割別の施策を実行しています。

  • 経営層(CXO)へのアプローチ:対象企業の有価証券報告書や中期経営計画を読み解き、経営課題に即した活用提案書を役員宛ての個別書簡(CXOレター)として送付する。
  • 情報システム部門へのアプローチ:セキュリティ基準や既存システムとの連携仕様をまとめた技術資料を、ターゲティング広告や専用LP(ランディングページ)を通じて提供する。
  • 現場部門へのアプローチ:業務効率化の具体的な操作画面や導入効果を体験できる少人数制のウェビナーへ招待し、実務面での推進者を育成する。

このように、インサイドセールスがアカウント内の組織図を把握しながら各階層に必要な情報を届けることで、対象企業内での合意形成がスムーズに進み、全社導入を前提とした大型案件の受注につながっています。

製造業における既存顧客の深耕とクロスセル成功事例

製造業におけるABMの成功は、すでに取引口座が開設されている大手メーカーの別事業部や別工場へアプローチを広げ、1社あたりの取引総額を引き上げるクロスセル(他商材の追加販売)やアップセルの仕組み化によってもたらされます。

BtoBの製造業では、新規取引を開始する際に厳格な品質審査や購買登録の手続きが必要となるため、全く取引のない企業をゼロから開拓するよりも、すでに口座がある大企業の未開拓部署を深耕する方が営業効率に優れています。しかし、歴史のある製造業ほど事業部制や拠点別の縦割り管理が強く、A工場の担当営業がB工場のニーズやキーマンを把握できていないというデータの分断が課題となっていました。

この課題を解決した産業用機械・部品メーカーでは、社内に散在していた過去の名刺データや展示会の来場履歴、基幹システムの取引データを企業単位で名寄せ(データ統合)しました。その結果、売上の大部分を特定の企業グループが占めている一方で、それらの企業内でもアプローチできている部署は全体のわずか一部であることが判明しました。

そこでマーケティング部門と営業部門が連携し、以下のような深耕プロセスを構築しました。

  • ホワイトスペース(未開拓領域)の特定:企業データベースを活用し、既存の取引先企業の中で、まだ接点のない研究開発部門や別地域の生産拠点をリストアップする。
  • 導入実績を活かした専用コンテンツの展開:すでに導入されているA工場での歩留まり改善やコスト削減の実績をケーススタディとしてまとめ、同社のB工場やC事業部の責任者向けに限定公開のオンライン技術相談会を案内する。
  • 営業担当者の同行と横展開:既存部署を担当するフィールドセールスから別部署のキーマンを紹介してもらうリファラル営業と、MA(マーケティングオートメーション)によるメール配信を組み合わせ、複数拠点での同時採用を促進する。

社内の購買登録がすでに完了している強みを活かし、別部門での稼働実績を根拠として提示することで、競合他社との比較検討を最小限に抑えながら他商材のクロスセルを実現しています。

人材サービス業界における営業とマーケ連携の成功事例

人材サービス業界におけるABMは、採用ニーズが高まるタイミング(シグナル)を企業単位で捉え、マーケティング部門とインサイドセールス、フィールドセールスが共通の優先順位で迅速に連携することで高い成果を上げています。

人材紹介や求人広告、採用管理システムなどを扱う業界では、顧客企業の組織拡大や新規事業立ち上げの時期によって発注ニーズが大きく変動します。マーケティング部門が獲得した資料請求リードを単純に発生順で営業部門へ引き渡す従来の運用では、今すぐ大量採用を行いたい大企業のシグナルが埋もれ、単発の採用ニーズしかない小規模案件への対応に営業リソースが奪われるという不一致が生じていました。

ABMを導入してこの問題を解消した人材サービス企業では、年間を通じて継続的な採用が見込める成長企業や、専門職の中途採用を強化している大手企業をターゲットアカウントに設定しました。その上で、企業全体の採用意欲を測るための独自のスコアリング基準を設けています。

  • 外部シグナルの検知:ターゲット企業が自社の採用サイトをリニューアルした、あるいは複数の求人媒体に募集を掲載し始めたといった外部の動向を営業リストに反映する。
  • アカウント単位の行動集約:対象企業の複数の人事担当者が、自社のWebサイトで「エンジニア採用の単価相場」や「導入事例ページ」を閲覧した際、個人単位ではなく企業単位でスコアを加算する。
  • 即時連携と役割分担:企業スコアが基準値を超えた時点でSFAを通じてインサイドセールスへ自動通知し、対象企業の採用課題に絞った架電を実施する。アポイント獲得後は、フィールドセールスが複数職種をパッケージ化した年間採用プランを提案する。

マーケティング部門が「どの企業の採用熱量が高まっているか」を可視化して営業部門へパスすることで、営業担当者は成約確度と見込み単価の高いアカウントへ集中的に時間を割けるようになり、商談化率と1社あたりの年間契約額の双方が向上しています。

まとめ

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、自社にとって価値の高い企業を先に定義し、マーケティング部門・インサイドセールス・フィールドセールスが同じターゲットに向けてリソースを集中させる戦略です。「獲得したリードが商談につながらない」「営業部門とマーケティング部門の連携が取れていない」という課題の多くは、個人単位のリード獲得を追い続け、狙うべき企業と追うべき指標が部門間で揃っていないことに起因します。

ABMを機能させるには、共通のKGI・KPIを設定したうえで、既存の優良顧客を分析してターゲット企業を選定し、決裁者・推進者・評価者・利用者といったキーマンを特定することが出発点です。そのうえで、企業の階層に応じたシナリオを設計し、メール、広告、DM、セミナーなどを組み合わせて実行し、反応を見ながら改善を重ねます。SFA・CRMやMAツールで企業単位の行動データを統合する仕組みも欠かせません。ターゲット選定とデータ整備に時間がかかり、成果が出るまでに半年から1年ほど要する点は、社内で事前に合意しておくことが重要です。

しかし、「ターゲット企業に向けた業界別のホワイトペーパーや導入事例を継続的に制作する体制がない」「MAツールを導入したものの、企業単位のスコアリングやシナリオ設計まで運用しきれていない」「ターゲット企業に届く検索・広告施策まで手が回らない」といった悩みを抱える企業様も少なくありません。

リードプラスでは、ホワイトペーパーや導入事例などのコンテンツ制作、HubSpotをはじめとしたMAツールの導入・運用支援、ターゲットに的確にアプローチするWeb広告の運用を通じて、ABMの実行に必要な施策を一貫してご支援しています。自社のABMの進め方にお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1.ABMは中小企業でも導入できますか?

 導入できます。ABMはターゲット企業を絞り込んで経営資源を集中させる考え方のため、人員や予算が限られる中小企業にも向いています。最初から対象を広げず、自社の既存顧客のうち受注単価や継続率が高い企業の共通点を整理し、少数のターゲット企業から始めると進めやすくなります。 

Q2.ABMの成果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?

 ターゲット企業の選定、データ整備、キーマンとの関係構築が必要なため、一般的には6ヶ月から1年程度かかります。対象となる大手企業は決裁プロセスも長くなりがちです。最終的な受注額だけで評価せず、ターゲット企業内の接点数や商談化の進捗といった中間指標も設定して、社内の理解を得ながら進めることが重要です。 

Q3.ABMは専用ツールがなくても実践できますか?

 実践できます。対象企業数が少ない段階では、既存の顧客管理システムや表計算ソフトでも、ターゲットリストやキーマン情報、接触履歴を管理できます。ただし、対象が増えて企業単位の行動データやスコアリングが必要になってきたら、SFA・CRMやMAツールの導入を検討するのが現実的です。 

Q4.ABMと従来のマーケティングは併用できますか?

 併用できます。大手企業や優良企業の開拓にはABMを使い、中堅・中小企業にはインバウンドマーケティングなど従来の手法でリードを獲得するといったように、対象に応じて使い分けるのが一般的です。ABMで狙う企業群と、通常のリード獲得の対象を整理しておくと、リソース配分に迷いにくくなります。 

Q5.ABMにおけるターゲット企業はどのように選定しますか?

自社の既存顧客のうち、受注単価が高く、契約が継続しているなど、売上貢献度の高い企業の共通点を分析します。業種、従業員数、売上規模といった企業属性に加え、利用中のシステムや投資の動向なども確認し、理想の顧客像(ICP)を定義します。その条件に近い未開拓企業を、優先度に応じて階層に分けてリスト化するのが基本です。

 
 
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