リードスコアリングとは?基礎からわかりやすく解説
MA(Marketing Automation)を活用するにあたって理解しておかなくてはいけないのが“リードスコアリング”についてです。これは、Webサイト等を通じたリード(見込み客)の行動に評価を付けることで、営業活動を行うべきかを評価するための機能です。
しかし、MAを導入した企業の中でリードスコアリングを有効的に活用できているところはそう多くありません。資料をダウンロードしたら10ポイントなどという単純シナリオだと簡単に破綻しますし、本当に営業活動可能なホットリードは何なのかをリードスコアリングと連動させることは結構難しいものです。
ただし問題を把握してリードスコアリングを正しく運用する知識とスキルさえ身に付ければ、企業マーケティングにとって大きな武器になることは間違いありません。
本稿ではそんなリードスコアリングの基礎を解説していきます。
リードスコアリングはなぜ必要?
もしかすると「お客様に点数を付けて評価するなどおこがましい!」と考える方もいるかもしれません。リードスコアリングで評価するのはリード自身のビジネスや業績等ではなく、あくまで自社との関係性における行動を考慮して、リードとしてどれくらい成熟しているかを評価するものです。
従来のマーケティングやセールスは担当者の経験や勘を頼りに展開されてきましたが、現代ビジネスにおける企業ニーズやユーザーニーズは非常に多様化しており、もはや経験や勘だけでは対応しきれないレベルに達しています。これはマーケティングに限らずあらゆる分野に精通する話しであり、だからこそ至るところで「データをもとにした(データドリブンな)ビジネスを」と叫ばれています。
マーケティング分野ではそれを担うのがリードスコアリングということです。さらにリードスコアリングが必要とされている理由を具体的に説明します。
営業とマーケティングの連携を図る
組織の中には部門間対立が案外多く、営業とマーケティングはその代表格かもしれません。営業はマーケティングに対して「質の高いリードが創出できないコストセンター」だと考え、逆にマーケティングは営業に対して「確実に成約・購買へと至るリードじゃないと満足しない」と考えています。これは非常に残念なことですが事実そういう場面を幾度と目にしてきました。
しかし本来、営業とマーケティングの目的は同じはずです。にもかかわらず対立関係に立ちやすいのは、部門間をつなぐシステムやルールが構築されておらず、互いの業務を理解していないからです。
そこにリードスコアリングという機能、並びにMAがあるとどう変化するでしょうか?
マーケティングは営業に引き渡すリードに、その質を担保する根拠を同時に提供でき、営業はその情報を受けて適切なアプローチをかけられます。そうすることで営業とマーケティングの理解が深まり、互いに協力して1つの目標を達成していくための体制が整えられていきます。
例えばこういうスコアリング条件を設定して100点になったら、情報を渡すから宜しくね。という感じです。
リストを最大限活用する
リードスコアリングは高いニーズを持ったリードを確認するための機能と考えられがちですが、それだけではありません。「低いニーズを持ったリード」を可視化できることも大きな利点の1つです。
これはどういうことかというと、セミナーや展示会で獲得したリストのうち95%以上が購買意欲の低いコールドリードだとします。つまりイベント直後にすぐに案件化できるリードは全体の5%未満です。残りの95以上はどうなっているかというと、ほとんどの企業で「案件化できない」という理由から切り捨てられています。
しかしそれは将来的なビジネスチャンスをみすみす逃しているかもしれません。なぜなら、コールドリードのうち一定数は企業のアプローチによって案件化される可能性があるからです。
イベントを実施直後にユーザーの状況や立場も知らずに「買うの?買わないの?」と聞いても意味はないかもしれません。正直、このレベルで購入に至ったとしてもほぼ事故に近いのかもしれません。
つまり、スコアの低いコールドリードもしっかりとナーチャリング を重ねてスコアリングして現在のステージを確認しておくことで、コールドリードだからこそのアプローチをおこなえ、かつニーズを育成しつつ案件化へ向けて行動することができるのです。
以上の理由から現代ビジネスマーケティングにおいてリードスコアリングは欠かせない機能だと言えます。
一体何をスコアリングする?
では、リードスコアリングでは一体何を評価して、質の高いリードを創出すればよいのかその基本になるのが①アトリビュート、②インタレスト、③アクティビティの3要素です。
① アトリビュート:属性
アトリビュートとは、担当者の役職・企業規模・地域・部門などを指します。例えば担当者が課長クラスなら5点、部長クラスなら10点と権威が上がるほど高得点を付けたり、従業員数が100人未満なら5点、100人以上なら10点といったようにスコアリングしていきます。地域なら近隣地域であるほど、部門なら自社製品やサービスに関連した部門であるほど高得点を付けることができます。
とある企業では購入する意思はないとわかっているのに大企業の役職者は必ず営業がフォローすることとルール極めをしています。その場合には、大企業の役職者には高得点を設定します。
② インタレスト:興味
リードがどれくらい自社製品やサービスに対して興味を持っているかをスコアリングします。たとえばWebサイトの製品・サービスページを閲覧していれば5点、資料ダウンロードすれば10点など、コンバージョンに近い行動を取るほど高得点を付けられます。もしくは購買サイクルに連動しながらポイントを配布します。さらに、セミナーや展示会への参加など、オフラインでの行動も統合してスコアリングしてくとより効果的です。
③ アクティビティ:活動性
アクティビティでは「加点」ではなく「減点」していくのが基本です。まずは次のスコア例をご覧ください。
≪A社の企画担当≫
セミナー参加 :15点(45日前)
製品ページ閲覧 :5点(40日前)
資料ダウンロード:10点(30日前)
電話問い合わせ :20点(30日前)
総合スコア :50点
≪B社の企画担当者≫
WebサイトFAQ閲覧:5点(3日前)
資料ダウンロード :10点(3日前)
電話問い合わせ :20点(2日前)
総合得点 :35点
スコアだけを見ればA社の方が質の高いリードだと判断できますが、アクティビティに着目するとB社の方が直近での行動が多くなっています。マーケティングにおいてリードの購買意欲は直近のアクティビティから3日後には減少すると言われていますから、A社は角度がかなり低くなっていると判断できます。
このアクティビティを考慮して減点方式でスコアを調整していくと、A社よりもB社の方が質が高いリードだと判断できます。
これら3つの要素を基本軸としてスコア基準を作り、さらには企業ごとのビジネスに合わせて要素を盛り込んでいくことでより正確なスコアリングを可能にします。
リードスコアリングで重要な“PDCAサイクル”について
PDCAサイクルを知らないというビジネスパーソンはいないでしょうが、改めて説明すると「計画、実行、評価、改善」という4つのステージでサイクルを回し、継続的に物事を良くしていくという取り組みです。リードスコアリングではこのPDCAサイクルが何よりも重要になります。
リードスコアリング導入初期に設定した評価基準はまだまだ未熟であり、より正解へと近づけるためには定期的な見直しと改善、それと効果測定を含めた運用が必要です。これが無いと間違ったリードスコアリングを続けることになり、質の高いリードを創出するばかりか自社ビジネスに大きな悪影響を与えます。
そのため、リードスコアリングに取り組む際は常にPDCAサイクルを回しスコア基準を見直していきましょう。ビジネスを取り巻く環境は刻一刻と変化していくため、100%の正解はどこにもありません。できることは「常に100%に近い状態に近づけること」です。
リードスコアリング運用ではその点に注意して、正しい運用を目指していただきたいと思います。
また、HubSpotなどではPredictive Lead Scoringという人工知能/機械学習を取り入れたスコアリングを利用することが可能です。そのような機能を本当に有効に動作させるためには多くのでデータが必要になることは注意点として理解しておきましょう。