ABMとCRMの関係を簡単に解説

現代ビジネスにおいて、経営データの活用は非常に重要な課題です。特に、多様化かつ高度化する顧客ニーズに応えるためには、定量的な顧客分析による経営戦略の構築が求められます。そこで重要となるのが、「ABM」と「CRM」です。本記事では、顧客分析に不可欠なABMとCRMの関係性について解説していきます。

ABMの概要をおさらい

ABMの概要をおさらい

「ABM」とは「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の頭文字をとった略称で、自社にとって成約確度の高い「アカウント(企業)」を予測・分析し、戦略的アプローチを行う施策です。ポイントは“対個人”ではなく、“対企業”という点にあります。従来は個人単位のプロファイルを大量に集め、メルマガや広告などでアプローチするのが基本的な戦略でした。対象を優良顧客に絞り込むことでリソースの分散を防ぎ、資金や人材などの貴重な経営資源をコア事業に注力できるのが大きなメリットです。広義ではマーケティング手法を指しますが、現在はABMを最適化するITソリューションをABMと呼ぶ傾向にあります。

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ABMを取り入れる手順

企業が市場における競争優位性を確立するには、ニーズを的確に捉えた価値創造が不可欠です。自社の経営戦略にABMを取り入れることで、顧客の抱える課題や潜在需要が可視化され、ニーズに基づく市場価値の創出につながるでしょう。ここでは、AMBを取り入れるために必要となる、5つの手順を解説していきます。

手順1:自社とABMの相性を確認する

ABMは情報の収集から分析、そして営業戦略の立案と、導入から実施に至るまでに多くの工数が必要です。商談の単価が大きい企業でなければ、高い費用対効果は見込ません。新規顧客や商談単価が低い顧客が対象となるビジネスには不向きといえるでしょう。また、既存システムとの連携性や互換性といった相性の確認も欠かせません。ITソリューションを導入する際は、自社の企業規模や事業形態に合ったシステムの選択が何よりも大切です。

手順2:ターゲットを設定する

ターゲティングにおける重要なポイントは具体性です。対象を設定する際は漠然としたものではなく、具体的に企業名まで絞り込まなければなりません。新たな案件の創出や、他部門の紹介につながるポテンシャルなども考慮しながら、ターゲティングにつなげましょう。ターゲティングとは勝負する市場の選定でもあるため、ここでの選択が後の結果に大きく左右します。ターゲットが具体的かつ明確になれば、ニーズの把握につながり、潜在需要を捉えた価値創造の第一歩となるでしょう。

手順3:ターゲットについてのデータを収集する

データ分析では、情報の量よりも質が問われます。取引実績や商談履歴、自社製品の導入事例など、さまざまな顧客データをもとにした定量的な分析が必要です。社内で対象企業と接点のある人物を探し、情報を共有するといった地道なデータ収集も欠かせません。従来であれば、営業現場が属人的に所有していた顧客情報をデータ化することで、定量的な分析に基づく戦略の立案につながります。

手順4:提供するコンテンツとアプローチの方法を検討し、実施する

商談を成功に導くうえで大切なポイントは、顧客が抱えている経営課題をどのようにして解決できるのかを、明確に提示することです。定量的なデータ分析に基づき、顧客が抱えている課題や問題を解決するために役立つコンテンツの選定を行いましょう。顧客の属する業界や業種を踏まえたうえで、潜在需要を満たす有益なコンテンツが求められます。競合他社が模倣できない、自社ならではの強みや優位性を考慮することが大切です。

手順5:効果を測定し、改善点を探す

より高い市場価値を創出するためには、設定した目標やKPIとの乖離状況から改善点を探す、という継続的な改善が必須です。また、フィードバックは部門ごとではなく、部門間で連携を図りながら実施することが大切といえます。「計画→実行→評価→改善」というPDCAサイクルを回し続けることで、組織全体における業務効率の改善と、労働生産性の向上につながるでしょう。

CRMの概要をおさらい

「CRM」とは「Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」の頭文字をとった略称で、日本語では「顧客関係管理」と訳される用語です。企業にとって、顧客との関係は非常に重要な指標といえます。企業とは、製品やサービスという価値創造を通じてニーズを満たし、代価として利益を得ることで発展する組織です。したがって、顧客創造こそが企業の目的であり、顧客満足度の最大化が最も重要な経営課題といえるでしょう。

CRMは、社名や従業員数などの基本的データはもちろん、通話履歴やメール開封率、取引履歴や商談履歴など、さまざまな情報を集約して管理し、顧客満足度の最大化を目指すマネジメント手法です。膨大な情報を分析することで、顧客が本当に求めている製品やサービスの創出に寄与します。顧客ニーズが多様化かつ高度化し、製品ライフサイクルが短命化傾向にある昨今において、必須のマネジメント手法といえるでしょう。

CRMはABMの促進に有効

ABMは自社にとって、成約確度の高い顧客を選定する手法であり、CRMは膨大な顧客データを管理して、既存顧客との関係性を管理するマネジメント手法です。この2つは優劣を比較する性質のものではありません。それぞれの手法を組み合わせることで相乗効果を発揮し、より高い成果の創出へとつながります。特にCRMがもつ情報の管理機能は、顧客をセグメンテーションするABMの効率化に大きく貢献します。

つながりを強化すべき部署やキーパーソンの確認が可能

CRMの最大の特長は膨大な情報を管理し、定量データとして可視化できる点です。従来は部署や営業担当ごとに管理していた情報を一元管理し、顧客との関係性において生じたデータを定量的に把握できます。また、離脱客や見込客などの階層を分ける管理が可能であるため、ABMと連携することでつながりを強化したい部署やキーパーソンも把握できます。これにより、セグメンテーションを部署や役職単位にまで、深く掘り下げられます。

営業担当者との接点がない担当者へメッセージを送ることが可能

決済権をもつ人物へのアプローチは、営業戦略における重要な要素です。たとえば、プライオリティの高い企業を定義できたとしても、決済権をもつ経営層や上層部の人物へ提案できなれば、商談が成立する可能性は低いと言わざるを得ません。CRMは企業データに紐づけて個々のリード情報も管理できるため、自社の営業パーソンと接点がない担当者と、コンタクトを取ることができます。2つのソリューションの連携によって決済権をもつ人物を把握し、接触を図るといったアプローチも可能になるでしょう。

ABMの促進に必要なその他のツールを紹介

CRMの他にも、ABMの促進に寄与するソリューションが2つあります。それが「SFA」と「MA」です。ここでは、ABMの効率的運用に貢献する2つのツールについて解説します。

SFA

SFAとは「Sales Force Automation(セールスフォースオートメーション)」の頭文字をとった用語で、営業活動の可視化と効率化に貢献するソリューションです。商談の進捗状況や顧客情報の管理など、営業活動におけるさまざまな情報をデジタル管理します。企業の住所や電話番号はもちろん、営業活動の進捗や案件の成約確度、アポイント件数や訪問件数など、営業活動によって生じたあらゆる情報の管理が可能です。営業活動における情報やノウハウを部門全体で共有することで、属人化防止につながり、営業部門全体のパフォーマンス向上に貢献します。

MA

MAとは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略称で、新規顧客の獲得や教育などを支援するソリューションです。たとえば、見込客の購買フローや自社のWebサイトの閲覧履歴、メールマガジンの開封率などの行動データを把握できます。新規顧客を開拓するためには見込み客の興味や関心を分析し、それらに対する最適なコンテンツの提供が必要不可欠です。ABMで蓄積したデータとMAによる行動データを連携することで、最も適したコンテンツをしかるべきタイミングで提供できます。ニーズを的確に捉え、自社ならではの強みを顧客に提供するために、欠かせないソリューションといえるでしょう。

まとめ

マーケティング戦略では、新規顧客の獲得が重要視される傾向にありますが、既存顧客との良好な関係性の構築も等しく重要です。そして、蓄積された膨大な顧客情報を活用することで、新たな市場価値の創出へとつながります。そこでおすすめしたいのが、ABMやCRMなどの機能を備えたマーケティングプラットフォーム「HubSpot」の導入です。自社の経営戦略に顧客分析を取り入れたい企業は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

https://www.hubspot.jp/company-news/abm_20200520

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