インバウンドマーケティングの手法として、オウンドメディアを運用する企業は多いでしょう。メインコンテンツである記事本文には、かなり力を入れるはずです。
しかしメインコンテンツ以外はどうでしょうか。メインコンテンツ以外とは各ページ内で共通になる部分です。具体的にはページ全体の構成やソーシャルボタン、各種誘導のパーツなど、CMSの機能やサイト制作の際に「テンプレート」と呼ばれる箇所です。
実際の成果となるコンバージョンへの誘導、ソーシャルメディアでの拡散といった意味でも、オウンドメディアにはさまざまな工夫がされています。
そして、それらは意外と見落とされがちなことも事実でしょう。今回はそうした見落とされがちなコンテンツ以外の箇所に目を向けて、検証していきます。
過去からのオーソドックスなもの、そして最近公開されたオウンドメディアでの傾向などもあり、過去との違いなど興味深い発見がありましたので事例を交えながらご紹介します。
くらし良品研究所
くらし良品研究所
株式会社良品計画の運営する「くらし良品研究所」は、オウンドメディアという言葉が一般化する前からある、老舗のメディアサイトです。
https://www.muji.net/lab/living/170517.html
その記事ページは、今の視点で見るとかなりオーソドックスな作りです。PCサイトでは両側に各種情報を掲載した、3カラムレイアウトを取り入れています。サイドカラムには広告が入っているメディアが多いですが、このサイトにはそれはありません。
基本的には別カテゴリや、関連テーマの記事へのナビゲーションになっています。
ソーシャルメディアのボタンについては、記事の最後にTwitterとFacebookのいいねボタンのみが配置されています。
ソーシャルメディアのボタンを記事の上部、タイトル付近のみに設置した記事ページも見られますが、ユーザーが記事を読み終わってから、再び上に戻ってシェアするという行動は考えにくいです。記事の最後に置いた方が、利用されやすいでしょう。
またコメントについては自サイト内での記入ですが、Facebookのコメントプラグインを入れています。ですから投稿の際には、Facebookにも投稿するかどうかのチェックボックスが出ます。
こうした機能も、ソーシャルメディアでの拡散を考えれば非常に重要でしょう。
Beauty & Co. (ビューティー・アンド・コー)
Beauty & Co. (ビューティー・アンド・コー)
「アラサー女子のキレイを応援します」をコンセプトにして、幅広い美の情報を発信する資生堂のオウンドメディア、「Beauty & Co.」。
2014年にサイトリニューアルを行い、翌年には月間の総ページビュー数が300万を突破したという発表もあった、有名なオウンドメディアの一つです。
https://www.beauty-co.jp/news/dbn/healthcare/DB007576/
記事ページは2カラムで、サイドに広告バナーと共に人気記事ランキングやピックアップした記事、話題のキーワードなどのナビゲーションが配置されています。
このページで目立つのが、ソーシャルメディアのボタンです。
記事の上部にはFacebookとTwitterに加え、はてなブックマークなど5種類のボタンが用意されています。
また記事の終わりにも、同じボタンが設置されています。
最近のオウンドメディアの記事ページを見ていると、上下に同じソーシャルメディアのボタンが設置されているケースが目立ちます。
ユーザーがページを見てからシェアするという行動を考え、最初と最後に設置をしているのでしょう。
またこの記事ページでは、FacebookのシェアとTwitterは記事最後には大きく別枠で設置しています。
二大メジャーSNSの訴求はより強めにおこなうという、ソーシャルでの拡散に対する力の入れ具合が伝わります。
この記事ページには独自のコメント欄はなく、「自分の意見は自分のSNSで」という考えも見て取れます。
また、モバイルでは、FacebookとTwitterのボタンは一番下にフロートで表示されてきます。
ランキングやトップページといったサイト内のナビゲーションメニューと併載ですが、スマホではこうした形で常にSNSのボタンを上か下の位置に目立つように出す、というのも一般化しています。
またこのサイトのコンバージョンとしてどれぐらいの重要度か、ビジネス的な事情は分かりませんが、PCではサイドカラムにあったバナー広告が、スマホの場合だと下部に大きめに表示されます。
このようにサイドカラムに掲載していた広告を、スマホでは下位置に持ってくるというのは定番のやり方です。しかしあまり下過ぎると、インプレッションが発生する前にユーザーはこのページを離れてしまいます。
成果につながるパーツをどこに設置するかは、サイドカラムが置けないスマホページでの重要なポイントになります。
もう一点このサイトで紹介しておきたいのが、記事の上部に割と大き目に華やかなイラストが配置されている点です。
画面サイズによっては、ファーストビューの大部分を占めます。
メディアサイトは求める情報に素早くアクセスできるのが良い、といった考えがありますが、ターゲット層やブランディングによっては、こうした美しいビジュアルをテンプレートデザインとして常に見せるのも効果的です。
経営ハッカー
経営ハッカー
続いては、BtoBのオウンドメディアです。
クラウド会計ソフトなど、バックオフィス業務効率化のためのソリューションを提供するfreee株式会社が運営する「経営ハッカー」です。
経営者や個人事業主のために、会計や経理など事業に役立つ情報を日々発信しています。
https://keiei.freee.co.jp/2017/07/13/is-your-companies-personnel-evaluation-system-ok/
記事ページは2カラムの構成。3カラムだとどうしてもメインコンテンツ箇所が小さくなってしまうからでしょうか、最近の記事ページは、2カラム構成が多い印象を受けています。
ソーシャルメディアのボタンは、記事の最後に設置しています。ボタンの中には、「Pocket」も含まれています。これはちょっとした保存に便利なサービスなので、設置しているオウンドメディアも目立ちます。
さてこのサイトの記事ページですが、サイドカラムは自社製品への誘導リンクとなっています。また製品への広告リンクだけでなく、複数種類の無料ガイドダウンロードページへの誘導もあります。
いずれもコンバージョンに結びつくメニューになりますが、資料ダウンロードでは個人情報登録後のメール配信やコンテンツの出し分けなど、マーケティングオートメーションと連携させるとかなり効果が出せそうです。
スクロールしていきサイドカラムが終了する位置では、記事コンテンツの終わりまで誘導バナーが固定で出るというのも面白い作りです。
最近のコンテンツマーケティングは効果測定が十分にできていないケースが多く、PVがそれなりにあればOKといった雰囲気もあります。しかしこうしたコンバージョンへの導線をきちんと工夫することで、成果に直結する施策は可能です。
またせっかくマーケティングオートメーションというツールがあるのですから、すぐのコンバージョンでなくても、ここからのナーチャリングも考えた戦略を組み立て、それに基づくページづくりで効果が出せます。
このサイトもスマホページになると、サイドカラムにあった製品誘導のバナーが揃って下側にいきます。
誘導バナーを下にさげた時の効果はどれぐらいになるのか。ヒートマップやアクセス解析の変数設定を使って、インプレッションと共に効果を測り、より効果的な配置方法がないかも探っていくようにしましょう。
VISIONARY(ビジョナリー)
VISIONARY(ビジョナリー)
トヨタ自動車の高級車ブランド、Lexus(レクサス)による「VISIONARY」。2017年5月にオープンしたオウンドメディアです。
ブランディングを重視したライフスタイルマガジンというコンセプトもあるでしょうが、PCでも大胆な1カラムの記事ページとなっています。
http://lexus.jp/magazine/20170726/61/cra_nakamura_04.html
スマホの普及でPCサイトも1カラムのレイアウトが多くなってきましたが、記事ページだとテキストが横に広がりすぎてしまうのではないか・・・という考えを個人的に持っていました。しかしこの記事ページを見ると、マージンがしっかりと取られており違和感はなく画面もすっきりとしています。
スマホの画面でもほとんど同じ見え方になりますので、デバイスが異なっても同じ体験、印象を与えるという意味では良い作り方と言えそうです。
ソーシャルメディアのボタンは上下二か所、ブランドに合わせたスタイリッシュなデザインにしての配置という一工夫もあります。
また下段には関連テーマの記事などが掲載され、PCの画面では3つ並んでいるのが、スマホだとカルーセル形式で横にスライドさせての表示になります。おそらくスマホのレイアウトから考えたのでしょう。
モバイルファーストでのサイト構築もすっかり定着しました。
RECOLIFE(リコライフ)
RECOLIFE(リコライフ)
http://www.2ndstreet.jp/RECOLIFE
コンバージョンを取るタイプのオウンドメディアにも、1カラムですっきりしたデザインが出てきました。
リユースショップを全国展開するゲオの「RECOLIFE(リコライフ)」は、1カラムの記事ページで、画面を広々と使っています。
サイドカラムがない分、メインの記事に集中することができます。ソーシャルメディアのボタンだけがサイドについてくる形で、こちらもFacebookとTwitterだけです。
SNSの種類は増える一方ですが、主要なものだけにするという割り切りも必要かもしれません。
なおこうしたサイドにSNSのボタンがついてくるページの作り方も、最近のメディアサイトでは多くなっています。またRECOLIFEのスマホページでは、上に固定されています。
PCでは左右のどちらかに固定、スマホでは上か下に固定というのが、最近の記事ページでのSNSボタンの配置方法のトレンドです。
RECOLIFE記事下部にはコメント欄はなく、ただクリック(タップ)して支持の数をカウントする、Goodボタンのみが設置されています。
このように余計な情報がほとんど入っていないため、コンバージョンに結びつく店舗検索への誘導ボタンへと自然と目が行きます。
ただし広告のような強い主張はないので、ネイティブ広告のようにページ内で自然な形での見え方になっています。
まとめ
オウンドメディアの共通テンプレート部分も、時代と共にレイアウトや各種機能の配置や役割が変わってきました。
ポイントを整理しておきましょう。
- ソーシャルメディアでの拡散は必須なので、ボタンの配置には多くの工夫がされている。
Facebook、Twitterという主要な2つに絞り込んでいるサイトも目立つ。
- サイドカラムにコンバージョンへの導線を設置するケースも目立つ。
スマホページではサイドがなく下への配置になるので、ユーザーが離脱する前に目に入れてもらうような位置や見せ方を考えるのがポイント。
- 1カラムの記事ページも増えてきている。
- コメントはページ内に機能を持たせずSNSで、といったやり方も多くなっている。
- コンバージョンを取るためのボタンは広告色の強いものではなく、ページのティストに合わせたネイティブ広告のような形もあり。
今回いくつかのサイトを見ただけでも、オウンドメディアはいろんな形があるのが分かります。
また最近公開されたオウンドメディアは、過去からのイメージを覆すようなレイアウトやデザインが取られているようです。
これからオウンドメディアを立ち上げる際には、まずは目的を整理して必要な要素のピックアップをおこない、今のユーザーに求められるトレンドを意識して作っていきましょう。
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